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『たった1人からはじめるイノベーション入門 何をどうすればいいのか、どうすれば動き出すのか』断片的にヒントがある(技術の歴史)

 著者がオムロンのイノベーション推進本部インキュベーションセンター長であるため、イノベーションの例がオムロンの商品になっているが、書かれている内容にはイノベーションの方法としての普遍性がある。
 また、筆者が関西から新しいものが生まれるとして、関西の特徴として次に2つをあげていることから、本書はグルーバルに販売することを前提に書かれていないことがわかる。

1)関西にはぶらぶらしている人が多い
 ぶらぶらしている人は雄しべの花粉を雌しべに受粉する働きをする。この機能が関西には根づいているという。昔のSONYには事件屋と称される人がいて、何か面白いことがあるとなんだかんだと集まってくる人たちがいたそうだ。好奇心旺盛な人が多いことを指すのだろう。

2)関西は視座視点が違う
 ある関西の会社に商談に訪問した際、受付で「この名前は伸ばすのですか?」と質問を受けたそうだ。名刺には「竹林一」と書いてあったので、受付嬢は「たけばやし〜」と読むと思ったらしい。筆者はこれを視座視点が違うだというが、単なる天然なのか、メールアドレスや英語表記を確認しなかっただけだろう。

 「自分の意志に従い、信念をもってやり遂げる人がいる。それに賛同した人が集まって、新しい価値が生まれる。最後にその価値に『イノベーション』というレッテルを貼る」と教えられたことを引き合いに、自分がイノベーションを起こしているんだと意識している人はいないという。確かにそのとおりだ。

 断片的だが、参考になった点を列挙する。

  • 戦略には7つの階層がある
     世界観(Vision)⇒政策(Policy)⇒大戦略(Grand Strategy)⇒軍事戦略(Military Strategy)⇒作戦(Operation)⇒戦術(Tactics)⇒技術(Technology)の7階層で、世界観をあまり意識していないのが通常だ。これは言い方を変えると、「そもそもの存在価値とは何か」になる。まず第一に、世界観を新しくデザインするところからイノベーションは生まれる。
     私はこのことを「引いて考える」ことで、そもそもの使命を明らかにする、と表現しているが、同じことを意味する。

  • 構想設計(グランドデザイン)はイノベーションの成否を握る。

  • こうしたいというバックキャストから社会課題を考える。

  • 何十枚の戦略資料よりもわかりやすいひと言(メタファー)の方が糸を理解してもらいやす。

 イノベーションを生み出すための方法論が体系だったものではないが、筆者の経験から導かれた断片的な言葉が経験者には伝わるのではないだろうか。まったくイノベーションの経験のない人には体系がある程度明示され、順に解説されないとイメージしにくいかも知れない。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。