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『ガダマー 地平の融合』「地平の融合」を現在の民族対立へ思想的に展開した解説が欲しい(人間学)

 H.G.ガマダーの「地平の融合」は以下の井筒俊彦の「イスラーム文化」の一節で知った。

 二つのまったく違った伝統的文化価値体系の激突によって惹き起こされる文化的危機。そのダイナミックな緊張感の中で、対立する二つの文化(あるいはその一方)は初めて己を他の枠組の目で批判的に見ることを学ぶのです。そこに思いもかけなかったような視座が生れ、新しい知的地平の展望が開け、それによって自己を超え、相手を超え、さらには自己と相手との対立をも超えて、より高い次元に跳出することも可能になってくる。H・G・ガダマーの語る『地平融合』の現成です。(イスラーム文化ーその根底にあるもの 井筒俊彦より)

 ウクライナとロシアの戦争が続く2022年のH.G.ガマダーは、その次なる世界。つまり、これでもしパックス・アメリカーナが完全に終焉し、中国を中心とした別の世界が成立するようになったとしたら、私たちはその相手を学ぶ必要性がでてくる。そして、社会学者であるアンソニー・ギデンズの以下の「地平の融合」についての解説は、未来を示唆していると直感した。

 他者との差異を理解することは、自己の理解の拡大となり、さらに自己理解の拡大は、他者との意志の疎通をより向上させる。

 井筒俊彦やアンソニー・ギデンズの「地平の融合」の解説は非常に分かりやすいのに、このガダマーの「地平の融合」を解説した本は分かりにくい。おそらく哲学的解釈学から解説を試みていることと、「地平」や「視界」を「解釈的状況」としているからだろう。また過去と現在の「地平」の理解から解説されいるが故に、現在の民族対立へ思想的に展開した解説がない。「地平の融合」について、もっと分かりやすく、現在の世界のニードに準じた解説本の出現を切に望む。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。