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『井筒俊彦 言語の根源と哲学の発生』ユングと井筒俊彦はエラノス会議で会っていない(人間学)

 井筒俊彦氏が参加してたエラノス会議でユングは1934年から数回に渡って元型論を発表しているが、井筒俊彦氏がエラノス会議に出席していたのは1967年から1982年なのでユングとは被っていない。井筒俊彦氏が研究していたイスラームのスーフィズムにおける人間の意識を表す5つの層のどこにユングの元型がハマるかを研究した研究者がいるかどうかを確認するために本書を読んでみたが、残念ながらいなかった。
 おそらく以下の第4層にユングの元型によるイマージュは位置し、元型そのものの存在は第5層ということなるだろう。

【第1層:ナフス・アンマーラ】
 やたら命令を下したがり、人間にああしろ、こうしろと命令し、人間を悪に引きずりこむことが多い欲望と欲情の層。意識の感覚的知覚的領域。意識の表層。

【第2層:ナフス・ラウワーマ】
 やたら非難する。ああだ、こうだと文句をつけまわる層。批判の対象は他人だけでなく自らも対象にするため、第1層の悪を批判する理性の層でもある。意識の理性的領域。

【第3層:ナフス・ムトマインナ】
 安定した安静な層。第1層の欲望や情念のざわめきもなく、第2層の理性からの批判もなく、意識及び存在の神的次元の境目の層。

【第4層:ルーフ】
 意識の深層。精神の黎明の層。修行者であるスーフィーにとり、主観的にいまや自分は神からもっとも近いところにいると感じる層。預言者の啓示が発出する層。元型(archetype)から生起する根源的イマージュの層。

【第5層:シッル】
 絶対的な実存の中に消滅した無我の層(存在のゼロ・ポイント)。意識を超えた無意識の層。目に見えない元型(archetype)の存在する層(存在元型の層)。この層に意識が到達すると修行者スーフィーは「神的われ」を自覚し、「われあり」と宣言する。

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