見出し画像

『ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔』ダーチャはリダンダンシーリスクマネジメント(世界の歴史)

 ロシアとウクライナの戦争が次のフェーズに入ったので、ロシアをさらに理解するための小泉悠さんの著書。(理解することと賛同することは違う)
 ロシア人は特にロシア人を信用しないという特性がある。しかし、血縁とか実利とは連動しないが、身内扱いされると、必要以上に親切になるという。理由は、厳しい気候と先生的な政治体制で、助け合わないと生きていけなかったという歴史からだ。

 彼らの特徴を列挙すると、賄賂は常識化していて、公務員の仕事である救急車も有料で呼ぶこともできる。ロシアの男性は浮気性なので離婚率は高い。男性60歳に対し、女性55歳で年金受給が可能(2018年まで)なため、娘がシングルマザーになっても子供の面倒をみれるシステムになっている。性格的に面白い特徴は、ロシア人は「これはルールだ」と言われると、それを破りたくなるという。その一例が、徴兵逃れで、医者に賄賂を払い偽りの診断書を書いてもらうこと。今回の徴兵でこれが可能かどうか分からないが、素直に従わないというロシア人の性質は、国防大臣が「我が国の若者は、徴兵年齢になると、どういうわけか具合が悪くなる」と皮肉っているそうだ。ロシア人は、自らを統治しにくい民だということに自負心があり、建国神話も「部族同士が争っていてどうにもならないので、ノルマン人のリューリクに頼んで統治(リューリク朝)してもらった」という強がる。
 多民族国家のロシアの宗教は、ロシア正教だけでなく、イスラム教、ユダヤ教、仏教、シャーマニズムと多様だが、2020年7月の憲法改正で、「ロシアは千年の信仰に基づく国家である」という文言が挿入され、ロシア正教を国教化した。

 ロシア人にとり「森」は、心を惹きつける重要な場所で、郊外の不便な「森」にあるダーチャは癒やしになる。日本人でいうと都会から失せてしまった田園風景や、海辺の環境のようなものがダーチャなのだろう。トルストイが晩年軟禁されていた家も森の中にあった。週末をダーチャで過ごすことと、ダーチャ−を核攻撃のリダンダンシーとして考えることは、東京に住むものにとっては、首都直下型地震などのリスクマネジメントとして参考になる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。