ミュージカル「ファンタスティックス」感想

ついったのログをまとめて書き足しただけです。個人の感想以上のものではないためあしからず。なおとってもほめてません。

「ファンタスティックス」観てきた。う、うーん待ってね言葉探す……。とりあえずあれっすね……ルイーザパパと壁の人が引っ張って回してるからかろうじて停止してないような印象の演目ですね……。少年少女役が下手な訳じゃないし、ホンの言葉は本来仕込み細かくてすごく好きな匂いがするんだけど……。

最初に言っとくと初っ端の「客が積極的に拍手して盛り上げてやらなきゃ感」と1幕中盤の「ぐだぐだなのを笑ってよしと流さななきゃやってらんないテンポの悪さ」に全くノレず醒めちゃったので結構な冷たい目で見てると思います。役者人気の都合なんだろうけどクリエじゃなくてDDDくらいのサイズが向いてたと思う。クリエじゃでかすぎるよ。あの世界観に客を呑めない。

2幕最後の15分で読後感さっぱりに収めてたけど、2幕の半ば以上まで「しんどい」以外の感情が出てこないのしんどかったんですよ……。いや文字通りしんどかったんですよ……。
ホンの言葉がちょっと聞いただけで拾えるほど丁寧に仕掛けあるだけ余計にしんどかった、1幕の最初の一場でお客を掴んで引き込めるかに全てがかかってる作品だよこれ。そして私がくだまいてるというのはつまり、うん……。
たぶん物語の主演ポジにあたるだろう、少年少女(役)が悪いわけではないんですけどね……。

マットの子、純真善良夢見がちでちょっと情けない感じとかわいーお顔がベストマッチな感じ。悪党に打ちのめされて自信を失ってふさぎ込んじゃうのが場にそぐうてなさコミで可愛らしい。ドが付くシリアスかつ声量抑えての表現少ない演目にキャスティングされたらものすごく見応えありそうだなって思った。それこそ血の婚姻の婚約者くんとか。
しっかり声張る歌のところ(黒ピエロとのデュエット)だと歌声の下にじーっ、て低いじりじりした音も入るのにおや、と思ったんだけど、これ役者さんの歌の問題じゃなくてマイク→スピーカー間の問題かもしれないな。
1幕の父2人子2人の曲では聞こえなかったんだよね、このじーって音。彼のお歌そのものはわかりやすくて好き。

ルイーザの人は思春期のアイタタな自意識(そういう話です)や、マットのこと好きは好きだけどロマンチックな設定に流されての好きだよねな上っ面感(そういう話です)が絶妙だなーと思った。動きと台詞の表現がなんかべらぼうにうまい。ちょっとオーバーなのも(音楽劇なの考えたらそこまでオーバーではない)ルイーザという少女の自意識にぴったり。
「2人で月を作れたのに!」が最高。みんな抜いて。歌ではマットの子が、再会のシーンからはこの役者さんが少年少女の場面の空気を引っ張ってた印象。
お歌にやんちゃさ?おてんばさ?があまりないのと、歌声そのものが、お歌のなかだけでもある高さから全く声色変わっちゃうので、ルイーザの台詞としては聞こえないのが残念。お歌そのものは上手なんだと思う、ディズニー吹き替えのヒロインやサウンドオブミュージックみたいな声の作り方でキラキラ伸びてく。演技してるときのルイーザの声とまるで違うってだけ。

座席による音響バランスな感じもするんだけど、黒ピエロの人の歌もうちょっとリバーブかけてあげてって思った。伸びるかなってところで余韻なしで切れるのとピアノの音に完全に負けてるので、あの地に足ついてない世界観(そういう話)に巻き込まなきゃいけないところで引っ張れないで浮いちゃってる。

彼女だけじゃなくて、箱の物理的サイズと演目の雰囲気に対して全体的に歌声の増幅率足りてないよ音響とは……まあ……。そう感じなかったの正直なところルイーザパパだけだったよ……。エリザに慣れすぎと言われたら返す言葉もないけど、でも(私は好みじゃないんですが)あのスラムドッグでももうちょい歌の内圧上げてたよ……?

ヘンリー(ともう一役)の人、そういう人物のキャラ作りなのは多分にあるんだと思うんだけど棒読みよりもべったり平らな発音で、その、はっきり言っていい?音を日本語に直すのがすっげえ大変で聞かされるのが苦痛。本当に苦痛。せめて文字単位でははっきりしてるけど単語には繋がらない、ならまだ聞けたのに。
ちなみにこの人が2幕で台詞飛ばし、マットの子が噴き出したことで堤防決壊して全体が止まったりした。黒ピエロの人が最後まで頑張ってたけどついに噴き出し、帽子取って顔隠すも収まらずついに片手で顔を覆うなどありました。
マットの子がいち早く立ち直り、声を切り替えて話の流れと空気を戻すように動き、まだツボってる周りを引っ張っていたので一抹の救いがあった。

初舞台(らしいです)山根さん、動きの大きさや声の抑揚がなんか……テレビの(カメラで映されてるくらいの)感じだなって思った。そのままだとちょっと小さいけどオペラグラスで抜いちゃうとそれはそれで解像度が、その。それでもどこかキュートで愛嬌あるねって和んで見られるのは流石のプロだなと。
いやでもほんとにキュートで愛嬌あってあのぐだぐだ地獄の中で1滴の水みたいな救いがあった。何より台詞が日本語としてちゃんと頭に入ってくるので全然もーまんたいです。むしろ初舞台で公演期間2週間の演目(に用意されるだろう準備期間)でここまでできるのすごいめっちゃ頑張った成果なのでは。

マットパパ斎藤司さん(この人だけ名前がわかる、観たことがあるので)、ルイーダパパとノンマイクでわちゃわちゃやってるところがさりげないながらも彩りを添えていて、地獄みたいなメイン進行の清涼剤になってた。パパたち二人のわちゃわちゃが唯一の救いになる少年少女ラブストーリー、何かが間違っているのでは。パパたちは(少年少女たちも)何も悪くないが。
レミゼで観ただけだったので、公演期間2週間ぶんの(それでキャストにペイするぶんが+になるだろう稽古期間での)馴染ませ方だとこういう感じになるんだな、と思いました。音が高いメロのほうがざらざらしないで文字の音が綺麗に響くのが意外な発見だった。マチルダで田代さんとWキャストなのをえっどっちかは低く/高くて歌うの大変なんじゃないの?と思ったんですが、得意な高さ近いのかもしれないなと思いました。

ルイーダパパ。可愛いから見て。なんだろう……なんていうか、私の知ってる「ミュージカル」をやってくれてたのがこの人だけだったので……。(私は初ミュージカルが劇団四季その次がデスミュ浦井月さらに次が1789とシークレットガーデンで、「ミュージカル」のハードルがめちゃくちゃ高い自覚はあります。)
すべてに耐え切れなくて「帰りたい……」で心がいっぱいになったときは(5回くらいあった、)オペラグラスでルイーダパパを視界いっぱいに収めて安定剤がわりにしてた。

結論(第一段階)
ファンタスティックス、第一声で場を呑み込む圧倒的歌唱力か他のとこ見てても目を引きつけて離さない超越的な身体表現かが必須な演目な気がするな……。大劇場でやる演目ではなさそうというのはあるけど、少人数であっても大劇場の隅から隅まで一声で呑める役者がいないとあの世界には引き込みきれないよ。

ここまでは観劇途中で発揮された防衛機制により「ミュージカルだと思ってたけど勘違いだったかな」と思い込んだことによる「まあ音楽劇としては……」という意識で話していたんですが、やっぱり「ミュージカル」として売ってたよねという事実にたどり着いたためオブラートが1枚減りました。
まだ包んでますとも。剝がしたらネットに流せるレベルの雑言じゃなくなるからね。

ファンタスティックスさあ、途中から私の認識違いかなと納得して見てたけどさ、やっぱり「ミュージカル」謳って出してたよねこれ!?そうだよね音楽劇じゃなかったよね!?
曲はね!質量ともにないです!
尺に対してって意味でもだし(会話がぐだぐだなのも大きいが)、印象に残らないって意味でもだし、音響に歌聴かせる気がないってのもだし

仮にも劇と言ったんだから歌になった瞬間話をぶち切るなアイドルプロモーションビデオをやりたいならチケ販売時にそう言えやとさんざ言ったスラムドッグを引き合いに出してまで言うの我ながら根性悪すぎると思うけど、歌を聴かせる一点においてはあのスラムドッグのほうがまだ音響の意識高かったぞ……。

なんか……本当にこう言っちゃ悪いんだけどたぶん、演出家が見せたいものに必要な要件とそこに振られた役者の適性(技術スキルだったり経験だったり得意な分野だったり)がチグハグで、それも必須で押さえなきゃいけないポイントほど乖離が大きいが故にこのぐだぐだ地獄のしんどさが生じるんだろうな……。

狂言回しの歌声一発で引き込まなきゃいけないところで繊細な色気はあるが場を食う圧は足りない歌唱がお出しされて(歌そのものは綺麗なので音響で彼女の声を大きくしたりリバーブかけたりの工夫で補えるはずなのに)、軽妙にテンポよく進めればおかしみが出る掛け合いで尺も間もべたべたで(これは役者が何とかするしかない)脚本の言葉の魅力を潰し、だれた空気に耐え切れなかった客のお情け笑いに甘えてますますグダつき、濡れ場……じゃないけど……2幕ラスト、ハッピーエンドに向かってく収束点では皆んな慣れてるから形になって勢いでそれっぽい空気に落ち着けて幕が降りたものの、振り返っても楽しい思い出がまるで出てこない虚無のミュージカル。それがファンタスティックス

たぶん推しが出てる人は推しの味は噛み締めることができるのではないかと思うが、推しが出ていたわけじゃないので金を払って苦行をさせられた以上の何事でもなかった。
というかミュージカルでテンポ悪すぎてぐだぐだな空気を作るってもはや才能だよ……。怪人と探偵もそんな感じだった、某とある劇場の年末恒例のあれもそんな感じ、それはそう。怪人と探偵は「あの素材を使ってどうしてこんなにアレにできるの……?」なのであれはまた特殊かもしれないが……。

いやまあさ……多少はフォローしなきゃを考えて喋るとすれば2幕は1幕より多少はテンポも立ち回りもマシで、2幕とのギャップ狙いである程度は意図してるぐだぐだなのかもしれないとは思ったが。思いましたが、怪人と探偵ぶりに途中退席を本気で検討したからもー----ちょっとなんとかしてくれ。いっそのこと幕間削って1幕にしてくれ。キャストの着替えはないっぽいし、現段階で幕間抜き115分、今やってる噂のルートヴィヒは120分だしいけるでしょ。

わかっていたじゃないか……。普段は細部まで目を配り掘り下げる相互さんから「推しがかわいかった」以外の発言がない感想は、裏を返せば他に褒められるところがないってことだと……。
観劇界隈はまずいもの食わされてもくそまずかったと言わないお行儀を身に着けた人が多いから作る側が観劇客は推し偏重(作るものがつまらないからだとは思ってもない)のイメージを膨らませてるって、ついこないだ話題になったばかりじゃないか……。

最終結論ですが、ファンタスティックス、推しが出ている人にはまあまあまあお勧めできます。ホンの言葉はロジックも仕掛けもいっぱいだし。
推しが出てるわけではない人、あるいは演出家が担当した他作品がよかったから行こうとしてる人、悪いこと言わないからやめとけ。私は「笑う男」の演出が好きだったので行ったが虚無の味を持て余したぞ。

11/5追記:演目名を修正しました。教えてくださった方ありがとうございます。もう二度とポスターすら見たくなくて記憶頼みのノールックで書いたから……。

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