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【映画評論】「夏へのトンネル、さよならの出口」を観ました。

 2023年6月21日(水)。11時51分。

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 タイトルから書いています。話は逸れることはないと思いますが初めのタイトルは「【映画評論】「夏へのトンネル、さよならの出口」を観ました」でした。
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 【映画評論】の際は毎回 note にも早出しするので今回も早出ししようと思います。
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 こんにちは。井上和音です。

 今日は休みの日だったので家に閉じこもって映画でも観ようと思いました。

 ツイッターにて、『映画「夏へのトンネル、さよならの出口」が、アヌシー国際アニメーション映画祭ポール・グリモー賞を受賞いたしました。』と流れてきて、NHKのニュースのアカウントでも取り扱っていたので、「夏へのトンネル、さよならの出口」を観たいなと思っていました。dアニメで550円で借りました。

 ネタバレはほぼ無く感想を書いていこうと思います。

 映画館で観ると内部が真っ暗なので暗闇なども綺麗に見えますが、家で観てしまうと暗闇が見づらくなるのが家でレンタルして観る際の欠点なのかなと思いました。

 夜のシーンが結構多いです。

 家でレンタルすると、映画館まで行く徒労とかが無くて「時間を使うほどいい映画だった」という気持ちにならなくなってしまい、映画の感想を書きたいという気持ちや神秘性とかが薄れてしまうこともまた家でレンタルする際の欠点なのかなと思ってしまいました。

 中身の話に入りましょう。ネタバレはありません。

 設定は田舎の高校生が、ウラシマトンネルという願いが何でも叶う代わりに時間を消費してしまう不思議なトンネルを巡る物語です。主要な登場人物は二人しかいません。

 主人公、塔野とおのカオルくんと、ヒロイン、花城はなしろあんずさんの二人です。

 複雑な人間関係等は無く、シンプルな青春ロマンス物語です。設定自体はSF調ですが、設定がSFなだけで難しい話はありません。面白かったですよ。

 描写が美しいのです。描写が美しく、男子高校生の主人公が「塔野くん」と呼ばれると、秒速5センチメートルの主人公、遠野貴樹を思い出しますね。あの人も「遠野とおのくん」と呼ばれますからね。雰囲気もどこか似ています。

 描写が美しいと言いましたが、ウラシマトンネルの中の描写が特に美しいです。YouTubeの予告で出ているので少しネタバレすると、紅葉もみじ。足元は水が溜まっていて、紅葉のトンネルの中を、水に浮かぶ紅葉の絨毯じゅうたんが広がっています。夏が舞台の中で紅葉の美しさが光っています。

 ウラシマトンネルの近くの駅から物語が始まりますが、その駅がまた美しいのです。香崎こうざき」という駅名です。そこから見える海の描写。またまたこれも美しい。個人的には雨の中のグレーに染まる海の描写が美しいと感じました。物静かな、重たい空と重い海。静かな世界を表現するのに適した描写だなと感じました。

 ヒロインの花城あんずさんは少しクセが強いです。ライトノベルによく出てくる不思議で気性の荒く、家庭に何かしらの事情を持つプライドの高い令嬢のような雰囲気で幕を開けます。まず始めに、このプライドの高い花城あんずさんとどのように仲良くなっていくのがが物語のカギですね。上手く創ってあります。プライドが高くて無口で誰にも心を開かないようなヒロインとどうやって仲良くしていくかはストーリーテラーの腕の見せ所だと思います。よく出来ています。

 塔野カオルくんは無気力キャラです。ただし無気力にも理由があり、そこの話題は避けますが、その無気力でありながら少し頭もよく、自分の軸もはっきりと持つそのキャラクター性は、やはりライトノベルであるあるのキャラクターだとは思います。こちらもまた人と深く仲良くなるキャラクターでも無いので、花城あんずさんとどうやって仲良くなっていくのかもストーリーテラーの腕の見せ所だったように思えます。

 タイトルは「夏へのトンネル、さよならの出口」なので、その通り、夏。夏がたくさん出て来ます。夏の雨。お祭り。向日葵ひまわり。花火。海。入道雲。もう夏です。夏の美しさをぎゅっと詰めた夏満載のアニメーションです。何回夏と言ったでしょうか。

 塔野カオルくんと花城あんずさんは共同戦線を組みますが、登場人物が二人しか出てこなくて、原作はライトノベルで、青春ロマンスなので、当たり前ですが恋に発展していきます。しかし、その恋の描き方もSF風の設定を存分に生かした特別な恋の描き方が出来上がっています。秒速5センチメートルではテーマは「時間」と言われていましたが、「夏へのトンネル、さよならの出口」においても恋のテーマは「時間」と言えると思われます。「時間」がテーマになってくると大抵が主人公かヒロインかのどちらかが苦しい恋をしてしまう悲しい運命に立たされますが、「夏へのトンネル、さよならの出口」でも同じようにどちらかが苦しい恋へと陥ってしまいます。

 フィクションなので仕方はないのです。よく頑張りましたと言ってあげたいです。

 描写の美しさ。日本の夏を存分に生かした風景の描き方。二人の話すセリフもしっかりとしたもので、ほんわかとした表現で誤魔化すこともなく。きっちりとした青春ロマンスの王道。様々な角度から見ても弱点が見当たらないのでポール・グリモー賞も受賞したのかなと思いました。上映時間を長くするためだけの適当な描写もありません。これ以上削れるところが無いくらいにびっちりとしたストーリー構成で出来ています。素晴らしい夏をありがとうございました。美しく良い映画でした。

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