見出し画像

こわいかおをした森

知っていますか?

大きな森の中に、
アンドレイ・ニコルスキーという、
かいぶつがすんでいるのです。

その森は、
黒々とした木々がおいしげり、
まっくらにみえます。
そして、
それは、
それは、
とても、
こわいかおをした森です。

しかし、
夜になると、
大きな音とうつしいメロディーが、
森から聞こえてきます。

皆、
不思議に思っているのですが、
誰もこわくてちかづけません。

ある日、
ひとりの少年が、
このこわいかおをした森の中へ、
入っていきました。

なぜ、
入っていたかというと、
少年にとって、
とても、
とても、
悲しい出来事があった、
からです。

この少年の悲しみは、
薄らいでいくどころか、
日ごとにふくらんでいって、
とうとう、
少年のこころが、
つぶれました。

そして、
ついに少年は、
こわいことさえ忘れ、
何も感じなくなったのです。

森の中をどんどん歩いていく少年は、
このこわいかおをした森と、
少しずつ、
友だちになっていくような気がしました。

もしかすると、
とても、
めずらしい黒い大きな木々や小さな花々、
そして小鳥たちに、
少年は慰められていたのかもしれません。

夜になりました。
そしたら、
地面がわれそうなくらいの、
大きな音が、
森じゅうにひびきわたりました。

すると、
小さなゾウが、
あらわれ、
長い鼻でひょいと、
少年を包み、
背中にのせると、
急ぎ足で、
ずんずんと、
森の奥深くへ、
入っていきました。

少年とゾウが、
満月の下にたどりつくと、
熊に狸に鹿など、
森じゅうから集まった、
あらゆる動物たちに囲まれた中、
月の光で、
アンドレイ・ニコルスキーが、
ピアノを弾いていました。

アンドレイ・ニコルスキーの、
すべてを圧倒する、
見事な演奏がおわると、
動物たちの歓声で森じゅうが、
大きく揺れうごきました。

それは少年が、
かつてみたことこともない、
情景でした。
少年は、
びっくりしました。

そのときです!
山のような巨大ゾウが、
すごいの力で、
少年の大きな悲しみを、
踏みつぶしました。

こころを取り戻した、
少年の、
えがおは、
夢であふれかります。

もうなにも悲しくありません。

少年は、
夜空にきらめく星たちを、
久しぶりに、
眺めていました。

・・・・・・

この夢のようなお話は、
アンドレイ・ニコルスキーという、
かいぶつからの贈り物です。

あなたも大きな悲しみに、
こころがつぶされそうになったら、
このこわいかおをした森の中へ、
入っていってみませんか?

アンドレイ・ニコルスキーという、
かいぶつが奏でる、
すごく大きな音とうつくしいメロディーをきいて、
巨大ゾウにあなたの悲しみを、
踏みつぶしてもらうのです。

きっと素敵な夢がまっていますから。


(おわり)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?