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「金正恩」訪ロ・北朝鮮の大きな変動を感じさせる気配~「小泉首相訪朝」を仕掛けた飯島勲氏が北朝鮮要人との極秘会談記録をいま公表した背景

◆「金正恩」氏、4年ぶり訪ロとミサイル発射、正に”鳴り物入り”の動き

”装甲列車”で移動する北朝鮮最高指導者「金正恩」氏が4年ぶりに訪ロ(というか、外国首脳との会談も4年ぶり、”本物”だとしたら…)する一方、防衛省の発表では本日(13日)午前、弾道ミサイルを発射した。久方のトップの海外行を”鳴り物入り”で盛り上げているかのようだ。


「防衛省によりますと、13日午前11時41分ごろと11時51分ごろ、北朝鮮西岸付近から弾道ミサイル合わせて2発が東の方向に発射されました。…▼1発目は飛行距離がおよそ350キロ、最高高度がおよそ50キロ…▼2発目は飛行距離がおよそ650キロ、最高高度がおよそ50キロで…いずれも日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海に落下したと推定されています。このうち2発目は変則的な軌道で飛行した可能性があるということです」

(参考)「【詳しく】北朝鮮 弾道ミサイル可能性あるものEEZ外に落下」2023/9/13 13:30 NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230913/amp/k10014194141000.html

このニュースとほぼ同時配信で、プーチン大統領がロシア極東アムール州のボストーチヌィ宇宙基地に到着、昨日ロシア極東地区入りした「金正恩」氏とここで会談する見通しであるとの報道がされている。両者の会談は、2019年4月以来となる(これが事実上、それまででも最後の海外首脳と金正恩氏との対面会談だった)。


【画像① 9月13日、ロシア極東地区のヴォスト―チヌィ宇宙基地で落ち合ったプーチン大統領と「金正恩」総書記。ウラジオストックでおりから開催されている東方経済フォーラムに参加しているプーチン大統領とタイミングを合わせた「金正恩」氏の訪問だが、我が国や西側のメディアが「ウクライナで弾薬不足に悩むロシアが北朝鮮に支援を要請か」「北に部隊派遣を交渉」などの勝手な憶測を垂れ流している。実際は記事本文にあるように、今後の朝ロ関係の方向について意味深長な中身が協議されそうだ】




まだ、ほとんど会談の具体的な内容が出てくる前だから勝手な憶測で「会談の狙い」とか朝ロ両国の同盟関係がどうなるなどの話を書く段階じゃないと思うが、これまで短い間で観察された次のような事実はポイントとなるはずだ。

(1)「金正恩」氏には軍人や科学者などと見られる随行者が多くいると見られること

(2)ロシア入りした列車到着・下車点のハサンで「金正恩」氏を出迎えたロシア側幹部がアレクサンドル・コズロフ天然資源環境相であること

(3)首脳会談の場所が宇宙基地であること

(1)~(3)を総合すると、首脳会談などで話し合われ、何らかの合意がされる見通しのある課題は「『宇宙開発』(ミサイル開発)での両国の共同」「北朝鮮内で豊富とされるレアメタル鉱山を始めとする手つかずの資源開発にロシア側が投資及び現地展開して協力すること」などであろうと推測される。今日の弾道ミサイル発射は、こうした協議事項を後押しする形で、北朝鮮のミサイル技術の完成度を誇示する意味もあったのだろうと考えると、自然な理解に思える。


◆飯島勲氏の北朝鮮要人との会談記録公開の背景にもオーバーラップする朝ロ交渉

以上を考えた時、少し先だって(9月初めに)月刊『文藝春秋』10月号誌面で公表された小泉純一郎元首相の秘書官で2002年と04年の「首相訪朝」の仕掛け人だった飯島勲氏が2013年の自身で独自に訪朝して日朝交渉の糸口を探るために北朝鮮要人と会談した記録を今の段階で公表したことは意味深いことがある。何も、北朝鮮と諮って公表したのではなかろうが、相手側との話し合いの中で「共和国(北朝鮮)には素晴らしい地下資源がある」、これらを日本などと協力して活用すれば「(北朝鮮は)10年以内にアジアでもトップクラスの経済大国になれる」と飯島氏が述べたことが明らかにされている点は、前記したロシアの資源開発参加への意欲を窺わせるサインにも重なるものがある。

北朝鮮を動かす1つのヒントのようなものが、示されているのは間違いないと思う。それにしても、『文藝春秋』が飯島氏の会談記録発表にあたってタイトルを「横田めぐみさん奪還交渉記録」としたのは、内容から見ても煽りすぎではないか。たしかに、会談記録には横田めぐみさんに関する対話が含まれているが、「返せ」なんて話ではなく「なぜ13歳の横田めぐみさんを拉致したのか」理解できる説明を求めるという趣旨であるから「奪還交渉」などとするのは言い過ぎだ(はっきり言って「売らんかな」の姿勢丸出しだが、最近、「木原誠二事件」問題でもネット民にカンパを募るなど、私のような事実上の独立自営ジャーナリストじゃあるまいし、と思わせるような動きをする同社は本当に財政危機なのか?)。


【画像② 『文藝春秋』10月号の「会談記録公表」にかかるこの記事タイトルは、内容から考えてあまりに煽情的に思える。しかし、内容そのものは日朝交渉に関わる北朝鮮側キーマン3人との、「虚心坦懐」な対話が赤裸々に綴られたもので、貴重だ。読者によっては飯島氏の言説を「あまりに北朝鮮寄り」ととる人があるかもしれない。特に2013年当時、日朝間の焦点となっていた朝鮮総連本部ビル競売問題に関わるくだりは、飯島氏が北朝鮮側の主張に最大限、歩み寄って解決をはたらきかけようとの話がされており、怒りを感じる人もあると思われる】




実は、永田町や首相官邸界隈でもこの度、飯島氏が10年あたためてきた極秘会談記録を敢えて公表に踏み切った意図について、さまざまな憶測もされている。「善意」とはみなさない声もある。

飯島氏自身は、特集記事の中の書き下ろし部分「次なる交渉のモノサシにしてほしい」(このタイトル自体が公表の意図を語っている)でこう語っている。


「『条件を付けずにいつでも金正恩氏と直接向き合う』、『私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい』…率直に言って、びっくりしました。これは総理大臣として勝負をかけたとしか思えない発言です」

「岸田総理が決断された今、この記録を拉致問題解決に向けた、ひとつのモノサシとして提供したい。…一般読者にも、次なる日朝交渉のステップを考えるきっかけにしてほしい。そんな思いで今回、『会談記録』を公にすることを決めたのです」

以上が5月27日に岸田首相が拉致被害者の救出を求める「国民大集会」に出席した際に述べた決意の言葉を受けて、公表に踏み切ったというのが飯島氏の言い分だ。以下、飯島氏の記録の中で、あらためて「日朝間でこんな交渉が」と思えた部分についてと、永田町界隈で囁かれている公表の背景についての言説について取り上げる。


【画像③ 2002年9月17日、平壌に赴いた小泉純一郎首相(中央)と安倍晋三官房副長官(右)。百花園迎賓館で金正日氏の出迎えを受けたところ】




◆「自分はもはやパイプ役になれず」と悟って公開に踏み切った…政府関係者の間で流布している飯島氏の記録公開理由


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