見出し画像

岸田首相、突如「皇位継承議論を積極化」で旗振り~「愛子天皇を」の声に背を向けたまま、自身の主導で合意形成ねらう?


【画像① 天皇ご一家への共感は多くの国民の抱くところであり「令和の御世が永く続いて欲しい」との声は多いが、国民が願う安らかな皇室をいただき続けるため、現実のものとなる皇統の危機から目をそむけることは出来ない段階に至っている。】


◆岸田文雄首相の”旗振り”で皇位継承議論の積極化図る?~自民党が「総裁直属」の新検討組織設置へ


臨時国会冒頭の所信表明演説(10月23日、衆議院本会議)で、岸田文雄首相はこの間、まるで”棚上げ”にされてきたような皇位継承のあり方に関する議論について「積極化を期待」として次のように述べた。


「安定的な皇位継承を確保するための諸課題等、とりわけ、皇族数の減少への対応も、国の基本に関わる重要な課題です。政府としても、このような認識の下、皇族数確保のための具体的方策等を取りまとめ、国会に御報告いたしました。この重要な課題についても、『立法府の総意』が早期にとりまとめられるよう、国会における積極的な議論が行われることを期待します」


この間、特に2010年代以降の国会においては、民主党政権の一時期を除いて皇位継承問題や皇室に関わる問題が議論されることは、ほとんどなかった。それが、にわかに首相の基本的な所信の柱の中で取り上げられ、「積極的な議論…を期待」というのだから、どういう風の吹き回しか、ということになる。


一方、この首相の表明を受けて、自民党は「総裁直属」機関を党による検討のため設けることを明らかにした。


「自民党は、安定的な皇位継承策などを検討するため、党内に総裁直属機関の新組織を設ける方針を固めた。…トップには麻生副総裁が就任する方向で調整している。自民主導で議論を加速させ、国会での合意形成につなげたい考えだ」


「直属機関は、党総裁である岸田首相の意向が議論に反映されやすい利点がある。…皇位継承資格を持つ皇族男子は3人で、天皇陛下の次の世代は悠仁さましかおられず、皇位の安定継承が課題となっている。…政府は昨年1月、皇族数の確保策として、〈1〉内親王(天皇の子と孫)・女王(ひ孫以降)が結婚後も皇族の身分を保持する〈2〉皇族の養子縁組を可能とし、皇統に属する男系男子を皇族とするーーの2案の検討を求めた有識者会議の報告書を国会に提出。まずは各党で対応する運びとなったため、自民党は同月、『皇室問題等についての懇談会』で検討を始めたが、議論は停滞している。…首相は党内議論の場を直属機関に格上げし、意見集約を目指す考えだ」


(参考)「皇位継承策検討へ自民が新組織、総裁直属で議論加速」2023/10/27 読売新聞オンライン

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20231026-OYT1T50321/



【画像② 「皇位継承問題」に関する自民党内議論を促進し主導するため、岸田首相は「直属」の検討機関を設けて麻生太郎副総裁(左)に取り仕切らせる方向だという。麻生氏は皇室の姻戚でもあるが、どのような方向に議論をまとめていくのか、未知数なところがある。】



◆国民の大多数が求める「女性天皇」「敬宮愛子内親王を皇太子へ」との声に全く背を向けた有識者会議の報告書


上記の記事の中で「各党で対応する運び」などと書かれているが、有識者会議の報告を受けたあと、若干、国会で野党議員から質疑が行われただけで、それぞれの党内で格段の議論をしているなどという話は寡聞にして聞かない。自民党ですらもそうである。


そうした状況は岸田首相自身も「それどころではない」という姿勢みえみえで推移してきたことも影響してのことだが、ここに至って突如、「議論加速」をせっつきつつ自分の意向が反映しやすい仕組みで「直属機関」を与党自民党内に作って進めるという積極姿勢を示したのだ。


そして、岸田首相に答申された有識者会議の報告書も、上記記事で見る通り「皇位継承の危機」に応える内容とはなっていない。メインテーマは「皇族数の確保」にすぎず、ただ「継承第一位、第二位の秋篠宮皇嗣、長男の悠仁親王については検討外」として既定の流れのように述べているのが特徴だ。本来、国民の大多数の支持が世論調査で示された「女性天皇」の方向、特に今上陛下の「直系長子」である敬宮愛子内親王の皇位継承を検討することを、全く回避し背を向けたものであり、この報告書ベースにどんな議論を加速させ、結論を引っ張ろうとするかは、はなはだ不安なものと言わざるを得ない。


その不安に突き動かされてか、小泉純一郎政権時に首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」の座長代理を努めた元最高裁判事の園部逸夫氏(94)が「女性、女系天皇を認めるべき」とした議論を求める発言をした。


「小泉純一郎首相の私的諮問機関として設置された『皇室典範に関する有識者会議』(2005年)で、座長代理を努めた園部逸夫・元最高裁判事(94)は『行為の安定的継承が危機にさらされ続けている』と指摘し、『皇室制度の安定的継承のためには、直系を維持することが重要。女性天皇、女系天皇を認めなければいけない』と話す」



【画像③ 小泉政権の際の「皇室典範に関する有識者会議」で座長代理を務めた園部逸夫元最高裁判事は、「女性・女系天皇を認めなければいけない」と現状への危惧の声を上げた。】



<平成時代から引き継がれた課題が残されたまま>


「(園部氏)平成時代から引き継がれた課題が残されたままになっています。現在の皇室は、天皇陛下、秋篠宮皇嗣殿下の次の世代の皇位継承資格者は悠仁親王殿下お一方となります。この先、悠仁親王殿下がご結婚されても、男子が生まれるかどうかはわかりません。安定した皇位継承とは程遠い危機的な状況が続いているのです」


「私は法学者として研究、議論を重ねてきましたが、現在の『皇統に属する男子が継承する』という制度では、安定した皇室制度の維持は難しいと考えています。皇室制度の維持のために何より優先すべきは安定した皇位継承であり、そのためには直系であることが重要です。その先に、それが男性なのか、女性なのかという議論になります」


「議論するうえで、まず初めに大事なのは、皇室の具体的な状況を念頭に置かないことです。愛子内親王殿下、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下などのお名前をあげることなく、本来望ましい皇位継承制度のあり方を考えなくてはいけません。…なぜ皇室制度が日本に必要なのか。必要だとすれば、女性天皇や女系天皇、女性宮家は認められるのか否かを考える。必要だとすれば適用時期、ご対象などについて考えていくこと。これが議論する上で、大事な姿勢です」


(参考)「園部逸夫・元最高裁判事『女性、女系天皇を認めるべき』皇室典範改正、進まぬ議論に低減」2023/10/30 山口沙貴子 弁護士ドットコムニュース

https://www.bengo4.com/c_18/n_16688/


園部氏の議論は、他に「旧皇族の皇籍復帰」や「法律が絶対なのではなく国民の意思が絶対(皇室典範の改正に関して)」などについて、突っ込んだ内容を示しており、ぜひ上記記事は一読されることを勧めたい。国会議員も与野党問わず、逃げずに向き合って欲しいものだが、最近、自身のセールス文句にしてきた「聞く力」が極めて怪しいことの分かった岸田首相が、自身に答申された不十分な内容の有識者会議報告書に基づいて「議論を加速」させ、結論を導き出すことの危険性に鑑みるなら、国民も学びつつ広く声を上げるべき時が来たと言える。


言うまでもなく、現在の皇室典範は皇位継承資格者を「男系男子」に限るとし、そのうえで「直系長子」を優先すると定めているのだが、園部氏が座長代理を務めた有識者会議の報告書では、(1)皇位継承資格を女性・女系に広げる、(2)皇位継承順位は直系を優先する、(3)兄弟姉妹では長子を優先する、というもので、これが採用されるなら、国会での審議を経て憲法の下位法である皇室典範は改正されるべきという運びを想定したものだった。


さて、岸田首相が進めようとしている議論は、この2005年の有識者会議報告書については全く無視したものになるのだろうか? しかし、「それ以前だ」との話も聞こえてくる。



【画像④ 岸田政権に対して答申された有識者会議報告書では「皇位継承一位、二位の秋篠宮皇嗣殿下、悠仁殿下については動かさない」と結論づけているが、ここ数年あらわになった秋篠宮家の”乱脈ぶり”に眉をひそめる国民が増えてきて、「秋篠宮に皇位が移るなら、皇室は令和まででよい」といった声がよく聞かれるようになった。】


ここから先は

1,388字 / 2画像

インテリジェンスウェポン正会員

¥1,500 / 月
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?