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ハマス、モスクワに現れる~ロシア、調停に動くか?~イスラエル、機先を制され”抗議”


【画像① プーチン氏はウクライナ戦争のかたわら、7日のハマス側によるイスラエル攻撃で始まったパレスチナ紛争へ精力的に関与しようと努めている。宗教者代表を集めて対話し、双方停戦の共同よびかけをしたり、この度のようにハマス代表団をモスクワに招いたりで、イスラエルがガザへの地上侵攻など本格的な報復戦に出にくい環境を作る努力をしているように見える。】


◆”人質解放交渉”名目にモスクワにハマス代表団を将兵か



昨夜から、モスクワにハマス代表団が現れて、世界をちょっと驚かせている。

「ロシア外務省は26日、ハマス幹部のアブ・マルズーク氏が率いる代表団がモスクワを訪問し、パレスチナ自治区ガザで拘束されている外国人の人質の解放や、ロシア人を含む外国人の退避について協議を行ったと明らかにしました。…イスラエルに駐在するロシアの大使の話では、ロシア国籍を持つ3人が人質に取られているということです。

(参考)「ハマス幹部がモスクワ訪問 人質解放など協議 ロシア外務省発表、イスラエル側は反発」2023/10/27 7:32 TBSテレビ ※映像付き
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/801694?display=1

【画像② ハマス代表団のアブ・マズルーク氏。写真は2020年のモスクワ訪問時のもの。】


◆イラン外務次官も招へい~イスラエルとの間の”核脅威”を協議か


モスクワの動きでもう1つ注目すべきは、同時にイランの外務次官も別建てで招へいされ、「核問題」を協議しているとされることだ。御存知の通り、イランはハマスの後ろ盾であり、この度のイスラエル攻撃の準備に協力していたのではないかと疑いがかけられている。そのため、イスラエルが場合によってはイランに対する核攻撃を仕掛けるのではないかとの危惧も呼んでいる。


「【モスクワ 26日 ロイター】 - ロシア外務省報道官は(10月)26日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの代表団が現在、モスクワを訪問していると明らかにした。…ハマス幹部のアブー・マルズーク氏も訪問しており、『ガザで拘束されている外国人人質の即時解放や、パレスチナ自治区からロシア人やその他の外国人の退避を確実にすることを巡り協議した』という。…ロシア通信(RIA)によると、ハマスは声明で『西側諸国が支持するイスラエルの犯罪』を終わらせるためのロシアのプーチン大統領と外務省の努力を賞賛した」

「ロシア外務省のザハロワ報道官はまた、イランのアリー・バーゲリキャニ外務次官が現在モスクワを訪問しており、ガルージン外務次官と会談したと明らかにした。バーゲリキャニ氏は核問題の交渉責任者。…イランはハマスを長年支援してきたとされている」

(参考)「ハマス幹部がモスクワ訪問、人質解放など巡り協議か」2023/10/27 1:42 REUTERS(日本語版)
https://jp.reuters.com/article/israel-palestinans-russia-hamas-idJPKBN31Q1ZC

「核問題交渉責任者」を呼んだのは、尋常じゃない。前駐日大使のガルージン外務次官は、紛争問題の協議調整担当だから、イランに対する一方的な話ではなく、当然イスラエル側の状況も把握して話に臨んでいると思われる。一連の動きから、イスラエル側もモスクワに招かれたものと思われるが(イスラエルはロシアの非友好国家ではない)、代表団を派遣しての話し合いは拒否し、同時に「許されざるテロ組織」であるハマスをモスクワに招へいすることに関してはとりやめるよう要求したと思われる。

いずれにしろ、紛争当事者の片方(パレスチナ側)とその後ろ盾(イラン)を公式的に呼び出して働きかけをしているロシア外交は、西側諸国よりも一歩先んじたといえよう。また、更なる軍事反撃拡大をめざすイスラエル・ネタニヤフ政権側にとっては、それに踏み出しにくい環境を作られたという点で、ロシアにしてやられたとの思いを抱いていることは容易に想像できる。そのため、抗議の意を表明しているのだ。

【画像③ 米下院のキャノン議員会館内に集まって、イスラエルによる報復的なガザ暫定自治区への大規模軍事攻撃や「パレスチナ国家との並存拒否」姿勢に抗議し「直ちに停戦を」とアピ―ルするユダヤ市民グループ。ハマスの「テロ攻撃」で始まった今回の紛争であるが、イスラム系だけではなくユダヤ系市民によるイスラエルの報復主義的な無差別攻撃に抗議する動きが各国で広がっている。】

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