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北朝鮮、外貨稼ぎ目減りで、しわ寄せが海外派遣労働者に~つけまつげ、かつら生産のサービス労働強要


【画像① 国家上層部の本当の動静も不透明な北朝鮮は、ひたすら「核大国」をめざすとしてミサイル開発に狂奔しているが、とうとう”資金ショート”が露見しつつある。】


◆在外公館10カ所閉鎖で”闇貿易”収入が減少


ロシアとの友好協力関係を強めるなど、存在感を高めている北朝鮮は、ミサイル開発でも強気の姿勢を崩さない。最近は、10月に予定された「人工衛星」発射を見送るなど、一時に比べるならややペースは落ちたが、今月は「11月18日を”ミサイル工業節”(記念日)とする」と発表し、今後もミサイル開発優先の施策を進める姿勢を示している。


「北朝鮮は、去年、新型のICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験に成功したとしている11月18日を、『ミサイル工業節』に制定したと発表しました。…5日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は、最高人民会議の常任委員会の会議で、11月18日を『ミサイル工業節』に制定する政令が採択されたと伝えました」


「去年11月の発射実験では、キムジョンウン(金正恩)総書記が娘を同行させて立ち会う様子も伝えられ、キム総書記の娘が初めて公開されたことでも関心を集めました。…今回の制定について、専門家からはアメリカに対抗するICBMの能力を誇示するほか、娘を初めて公開した象徴的な意味を踏まえて、体制への忠誠心をさらに高めたい意図もあるという見方が出ています」


(参考)「北朝鮮11月18日を『ミサイル工業節』に制定と発表」2023/11/5 NHK NEWS WEB

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231105/k10014247711000.html


昨年らい、過去の十数年を上回る回数の”乱射”とでもいうべきミサイル発射が行われてきたが、不思議に思われたのがいったいどうやって開発や製造、発射のコストが賄われているかということだった。「報復戦力のミサイル開発を進めて強盛大国を」といった勇ましいスローガンの裏では、おりからの新型コロナウイルス感染拡大によるダメージも重なり、民生が軽視された結果、最近としてはかなり多くの餓死者を出しているものとされていた。



【画像② 昨年11月18日の「火星18号」ICBMの発射に際して、「金正恩」氏は娘連れで現地指導をした。ここのところ、娘連れで現れるのは、「人民を守る慈父」を演出するためだとも言われるが…。】


しかし、ここにきて北朝鮮国家経済の”ショート”ぶりを窺わせるような現象が露わになってきた。なんと、在外公館の維持が困難となり、10カ所が閉鎖になったというのだ。


閉鎖が明らかになった北朝鮮在外公館は、具体的にはウガンダ、アンゴラ、スペイン、などでここはいずれも駐在大使を離任させている。スペイン大使はイタリア駐在大使が兼務することとなっている。その他に領事館も閉鎖されており、中国では在香港総領事館が閉じられたことが確認されている。


北朝鮮にとって在外公館閉鎖というのは深刻な問題だ。というのは、過去から知られていることだが、北朝鮮外交官は外交特権を使った”闇貿易”による外貨稼ぎのノルマが課せられており、それで現地の運営費を調達する他に本国送金も行ってきていた。そうした活動の拠点としての大使館、総領事館が閉鎖されるのは、まんま収入減が反映したと見るべきものだ。


北朝鮮外交官は、国際法で認められた免責特権や外交上の書類・物品を運搬するための外交行李(パッケージ)を悪用して、現地への胸像(銅像)の売り込みから、違法薬剤取引、武器密輸を行ったり、途上国への医師・看護師派遣の仲介などを展開している。そうした収入源を確保するための在外公館が閉鎖されるということは、こうした活動がうまく機能していない、つまり在外公館配置すら割りに合わない事態に追い込まれているということを意味する。


これは、国連安保理制裁決議を北朝鮮に宥和的な中国、ロシアなどを含めて賛成させ、厳格な制裁実施を国際社会が監視して担保してきた効果がようやく現れたと見てよいものだろう。外交官の”闇貿易”が機能しなくなりつつあるのだ。




【画像③ この度のガザ暫定自治区で展開されているイスラエル国防軍によるハマス掃討作戦でも、押収される兵器のうちのかなりの数が北朝鮮製であることが確認されている。北朝鮮製小火器は、地球上どの地域の紛争地でも発見されるほどポピュラーだ。】



◆かつら、つけまつげの増産を「金正恩」名で刑務所、海外派遣労働者に指示


こうした外交官副業(いや本業か?)の行き詰まりに対応し、9月末に朝鮮労働党中央委員会が「金正恩」総書記名で、かつらやつけまつげの増産を刑務所及び海外派遣労働者に求める指示文書が出されたことが判明した。その他にも、日用品での”売れ筋”商品も同様に製造数アップと販路拡大が求められているという。




【画像④ 中国市場で出回っている北朝鮮製のつけまつげ。画像のものは、中国側企業が材料を提供し、中朝国境地帯の新義州市(北朝鮮側)の工場で製造されたものといい、1000種以上の商品があるという。】


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