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【フレキシブルに配置で殴る】PSMから見たシモーネ・インザーギ体制のインテル

こんにちは!TORAです🐯

今回はなんだか久しぶり!戦術面での更新です。

シモーネ・インザーギ監督になってインテルのサッカーがどう変わったか?
PSM(プレシーズンマッチ)から紐解いていきたいと思います。

尚、筆者はPSMを全てチェックしましたが(見れるものは)、パルマ戦とディナモ・キエフ戦の2試合のみを考察記事の対象とします。
(ルガーノ戦はディマルコテスト、クロトーネ戦はルカクありきの戦い方だったので)

結論から言えば、要所要所に早くもシモーネ色が出ています
この辺はハキミとルカクの放出との因果関係もあるでしょうね。。

フレキシブルに配置で殴る

全体を短いセンテンスで表現するとこんな感じかな?と考えています。

臨機応変かつシステマチックでありながら、フォーメーションは割とカチッとしている。

可変する動的なシステムだけど、配置そのものはわりと静的。
一見矛盾を感じる、でも成立している点に『シモーネっぽさ』を感じます。

●ビルドアップ-加速器からの脱却

分かりやすく変わったのはビルドアップです。

ビルドアップにおける選手配置は3−3−4、もしくは、4−2−4と表現すべきでしょうか。

CHが最終ラインに降りて、両HV(3バックの左右CB)が膨らみ、上がるムーブが明らかに増えています。特に左サイドのバストーニ。

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パルマ戦より。

また、その担保として上がった側のIHが降りて、ビルドアップやトランジションの担保となります。

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昨季の完成形はCH(ブロゾヴィッチ)とIH(エリクセン)が横並びの関係でしたが、シモーネ体制ではフォーメーション通りの『斜めの関係』と言えそうです。

もちろん、瞬間的に横並びになることは多々ありますけどね。あくまで体裁的な表現としては斜めかな、と。

ということで、両HVのムーブよりWBが押し上げられるので、必然高めに位置します。

基本的には幅を取ってアウトレーンで勝負します。

片側に寄せてからの、逆サイドWBのアイソレーションを活かす手段も多く見られました。

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従来のインテルのサイドチェンジって、一発でどかーんと変える場面は意外と多くなく、中央を(というか中央の前線を)経由することが基本でしたので印象的。

・昨季インテルは一発サイドチェンジが少ない
スウィッチ(40ヤード以上、ピッチを横断するパス)の総数はリーグ8位。
ですが、”パスの総回数に対する割合”で見るとリーグ14位です。
これはドリブル突破試行数の少なさとの関連性もあるでしょうね。
FBrefを参照。

したがって、シモーネ式WBは快速で、ある程度独力で崩せる人材が好まれると思います。ルリッチ、ラッザリは”まさに”。

ダンフリースはお国や戦術に馴染めば、相当ハマりそうな予感がします。

一方、ダルミアンは昨季ほどの働きが出来るかは一抹の不安を感じたり。彼はオフザボールで崩す選手ですからね。

とは言え、コンテ体制でもお馴染みのローテーション的な動的配置を見せるシーンも多々ありました。

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ダルミアンも絶対に得意だと思うんですが、実はけっこう大外に張りがちなんですよね。昨季から。

これがチーム由来なのか、個人由来なのか。今後チェックしていきたいです。

さて、WBが昨季よりも高い位置を取るということで、ビルドアップに関しては「IHが頑張ります!」度が増しました。ここもラツィオ感。

CB間のハブになったり、膨らんで逃げ場所になりつつも、自身がボールを前に出す・運ぶお仕事量が増加。

IHとして当然のタスクですが、昨季のIHは瞬間的というかなんと言うか。0⇨1にする、スイッチ的な側面が強く、今季は中間的な『0.5』を担うことが増えているイメージです。

簡単に言えば、ゲームメイキング色が濃くなっている、ということですね。

これは間違いなくシモーネ色なわけですが、結果的にルカクという絶対無二の加速器からの脱却になっている点が非常に興味深いです。

もしかしたら、コンテ継続の方が設計に苦慮していた可能性も否定できないかも。

ザーッと書いてきましたが、整理すると、各ポジションのお仕事はそのポジションが持つイメージに近い業務がメインとなりました(あくまでメイン)。

WBはしっかり幅を取ってアウトレーンを攻略するし、IHはインサイドプレーヤーとして、ゲームを組み立てる、ボールを運ぶ。みたいな。

ただし、WBの人がWBのポジションをやる必要はない。他も同様。動的に選手配置を入れ替えて、そのポジションに入った選手が務めますよ!という因子がコンテ体制よりも幅を利かせている。

フォーメーションという大枠は静的だけど、
選手配置という中身は動的。

こんな表現が適当に思えます。

事実、PSMで配置のバランスを自ら崩して仕掛けるオプションは皆無に近かったように見えました。

例えば、昨季のように右サイドでレーン被りさせて「オラオラオラ!」みたいな感じでダイナミックに縦突破するシーンとか。

まぁ、これはバレッラとハキミが揃ってこそ、という面も大きいか。かなしい。

●崩し-斜めに付ける再現性

「大枠は静的だけど、中身は動的」は崩しのフェーズでも見られました。
特にディナモ・キエフ戦の変化は如実。

選手配置は3-2ー5、もしくは、3-3-4のイメージでしょうか。

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上述の通り、オーバーロードからの逆サイドアイソレーションをちらかせながら、メインウェポンはポジショナルなコンビネーションプレー

多角形を構成しながら、斜めのパスを付けて、瞬間的な連携で一気に崩す。そして、再現性がある
その華麗なパスワークは贔屓目を抜きにしても美しかったです。

それにしてもシモーネ監督のチームは斜めの段差を作るのが本当に上手い。
ラツィオも斜め斜めにパスを付けて進軍するのが抜群に良かったですもんね。

ただ、ラツィオはビルドアップやショートカウンター時に発揮しますが、キエフ戦インテルはフィニッシュワークの局面で発揮していたのが違いでしょうか。

選手配置が整っている。

理由のひとつとして間違いなく挙げられます。

例として挙げたいのは、キエフ戦55分のシーン。

シュクリニアルの攻め上がりからチャルハノールが決定的なシュートを放つものの、CBにブロックされた決定機です。

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✔︎そもそもペリシッチとチャルハノールがポジションチェンジしている。
✔︎シュクリニアルが上がり、バレッラがポジションを担保している。
✔︎ピナモンティは楔を受け取ると、ダルミアンがとともに膨らみ、DFを引きつける。
✔︎シュクリニアルが内に絞って中央レーンを埋める。

超フレキシブルだけど、大枠はしっかり保たれています。
なので、斜めのパスコースが確保されている=細かいパス回しで崩せる。

この緻密さと正確さがシモーネのウリかもしれません。

ただし、フィニッシュワークのフェーズで選手配置がしっかり整っているということは、『前のめり度』も高いという裏返しでもあります。

これはインテリスタの皆さんが仰る通り、被カウンターのリスクとなる恐れがありますが、キエフ戦は配置も連動性もほとんど問題なかったんじゃないかね。
スタメンが入れ替わった後は悪目立ちしましたけど。

とはいえ、崩しの部分も被カウンター予防も、キエフが前からプレスをまるっと放棄していて整えやすかった点は考慮しなくてはいけません。
パルマもガッツリ重心低かったですしね。

理論づけしましたが、PSMではまだまだジャッジし難いですね。

●ボール非保持-不変であるが故の不安

早速、シモーネカラーが感じられるボール保持とは対照的に非保持は地続きです。

特にブロック守備。

シモーネラツィオはリトリート以外では、文字通りの3-5-2で守っていた印象です。

両WBが最終ライン入りしないんだぜ!と言うと語弊が生まれますが、他の3−5−2システムのブロック守備と比較すると、相対的に「5−3ブロックじゃなくて、3−5って言いたいよね!」って感じ。

つまり、シモーネラツィオは両WBはドン引きせず、ある程度重心が前にあるのですが、シモーネインテルはガッツリ低めでした。

コンテよろしく、パキっとした5−3ですし、ブロック守備に移行する意識も特に変わりないように見えました。

唯一変わったのはプレッシング。特に前からプレス。セットしたら、CH(ブロゾヴィッチ)が相手のレジスタを捕まえるために積極的に上がります
なんかデジャヴだなと思ったのですが、この守り方ってまんま19-20シーズン、コンテ政権1年目の守り方なんですよね。

↑パルマ戦後にあらかじめ控えていた内容です。

「個人的にこれ好きじゃないんですよねー理由は○○でー」
とか書こうと思っていたのですが、ディナモ・キエフ戦ではそんなことありませんでしたね。一旦スルーします。

ということで、ハイプレスを仕掛けつつも、突破されたらスパッと切り替えて、重心低めで迎撃するお馴染みのスタイルです。

”最小失点でのスクデット”というステータスがあるので、単体で見れば、変える必要がないのは素直に頷けます。

しかし、昨季はむしろ攻撃のための重心低めブロック守備でもありました。

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✔︎重心低めで相手を引き寄せてスペースを作る!
✔︎相手の攻撃をシャットアウト!ポジティブトランジション!
✔︎前線の質的優位を活かすカウンター!これがインテルの最大瞬間火力!

現実問題、今季のスカッドはこのピーキーさが低下していると断じざるを得ません。

想定される事態としては、

I)押し込まれた際の陣地回復力。抜け出せないと連打を浴びる。

II)被ハイプレス時のビルドアップ力。縦の怖さがないと思いっきり来られる。

などが挙げられると思います。

「ここをどうクリアにするか?」
シモーネ政権の最初の壁だと睨んでいます。

教科書通りで行けば、カウンタープレスを仕掛けるか、EURO2020のアッズーリみたいにボールホルダー近くの選手が徹底ディレイして他が戻るか、でしょうか。
インテルにフィットしそうなのは後者かな。

●おわりに

ここまで5000字近く書いといてなんですが、記事を執筆する上での判断材料はPSMだけなので、参考程度に留めてください。

シーズンが開幕したら、色々と変わることもあるでしょう。成長や進化もあれば、何か諦めることもある。

その際は、マッチレビューを通して、随時更新・訂正していきます。

しかしまー、シモーネ監督はとにかく不憫ですね。

強奪気味にインテルに来てくれたのに、戦術兵器のハキミを失っただけでなく、戦術の中心であったルカクまで失った。
なのに補強費の天井は驚くほど低く、なんならまだまだ節約しないといけない。

あれ、我々ってスクデット取ったチームですよね?笑

というわけで、ぼくは今季のインテルを優しい目で見ようと思います。

FORZA INTER!! ⚫️🔵


※お詫び
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