永遠の片想い

私は人間が堪らなく好きだ。そのくせ人一倍敏感でキズつきやすいものだから、人間がやたらと怖かったりもする。

ちなみにこの「人間が好き」という気持ちは「犬が好き」、「猫が好き」、「鳥が好き」といった感覚とよく似ていて、生まれついての理屈を超えた「好き」だと感じている。なんだかよくわからないけど気づいたら好きだった、みたいな。

好き故に人間のことを性善説で見ずにはいられないのだけれど、キズつく(といっても相手に悪気があるとか関係なしにキズつくことも多い)かもしれないという不安から意味もなくソワソワしてしまう。

その結果、広く浅くつき合うのがメチャメチャ苦手で、井戸端会議にスマートに参加することなんて夢のまた夢で、遠目に見ることしかできない。それに批判めいた噂話や身内ネタなんかがとても苦手で、学校行事といった子供繋がりで話す時は無難に相槌を打ったりするものの、後でドッと疲れてしまう。

3人以上で話す場合は満遍なく話題を振ったり目を合わせたり、そんな気遣いを求められていないことは重々承知だけれど、どうしても気になってカラ回りしてしまい疲れてしまう。

つき合いの長い友達とはそこまで神経をすり減らすことは無いが、自分が思う以上に勝手に消耗してしまうようで、やっぱり後から疲れが出てしまったりする。

人と会うと決まって気疲れしてしまうから1人の静かな時間を好むけれど、人間そのものが好きだから、いつもどこかで人恋しさを抱えている。

ところが初対面の相手と話すのは意外にも大丈夫で、むしろ好きだったりする。一見矛盾するように思えるけれど、初対面ならではの互いが遠慮気味になる特有の空気感が心地良くて、そしてなぜかしら私には色々と話しやすいようで「初対面なのにこんなことまで話してる」みたいなことを言われることがよくある。

この色々話しやすいというのは、時として話した本人すら気づいていないようなグロテスクで生々しい部分に触れてしまうことがあり(初対面だとそうなることはまず無いのだけれど)、自分に向けられたモノではなくても、そんな時私は結構なダメージを受けてしまう。そしてつき合いの深度に比例して、ダメージから回復して立ち直るのに時間が掛かってしまう。

一方で、些細なことでも困った際に人から助けてもらえたり、困っている人が誰かに助けられているのを目撃したりといったことがしばしばあり、その度にさり気ない人の温かさにふわりと心が魅了される。

(私にとっては)奇跡的に夫とだけは一緒に居てもあまり疲れないので、出会いから20年以上経つ今でも、というか出会った頃よりも今の方が仲が良くて、自分で言うのも何だけれど仲睦まじいおしどりカップルだ。夫と出会ってから、特に一緒に暮らすようになってからは人恋しさが随分解消されたように思う。

それでも生まれついての人間が好きな気持ちと人恋しさは相変わらずで、この永遠の片思いのようなシチュエーションを、私は案外気に入っているのかもしれない。

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