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読書(2021/4/6):『回転むてん丸』初見実況ログ

(注:Twitterの該当箇所の過去ログ。誤字脱字等修正済)

『くら寿司』販促WEB漫画『回転むてん丸』を読み始めた(ついにか)。第一弾は普通に無添加食品を価値とするSDキャラのむてん丸少年たちと、添加物食品を価値とする(手間のコストは低いが健康には良くない)SDキャラの悪の幹部たちが戦う真っ当でシンプルなお話です。おかしい。あんこく話じゃないとは。

回転むてん丸修行編を読んでいる。上位存在えびすさんに一時的に敵ボスを封印してもらったが、実力で勝ったとは言えないので、敵ボスの封印が解ける前に修行の旅に出るむてん丸。いろんな価値観を学び成長する。なんて真っ当な展開なんだ。だからこそ後々あんこく話が出てきたときに効いてくるのかな。

気分転換に『回転むてん丸』の前半、「第〇弾」の方を読み終えたりしていた。
充実した時間であったが、「故郷を超パワーアップしたラスボスに砲撃されて視界が暗黒になる主人公(故郷がどうなったかは読んで欲しい)」とか、後のシビアな展開につながるいろいろがありますね。

あと、『回転むてん丸』前半、デカイフォントだと便利だが、逆に小さいフォントになったら頭が「読めない」となる問題があり、そういう意味でもなかなか教訓がある。(変なところで教訓を得ている自覚はあります)

『回転むてん丸』前半だけ見ると、子供向けの絵柄であろうが「ここでは価値観を説く道徳的エンターテインメント漫画をやっているが、「どうしたら楽しいか」や「どうした方がよいか」ではなく、「どうなりうるか」は、やはり考えなきゃならないよ。全部だ。覚悟を決めろ」という「信念」を感じさせる…

『回転むてん丸』(『章』の方)を読んでいる。まだ第二章まで(喋るクマ親子のところ)。まともに面白いではないですか。
負の精神につけこんで人に怪力を与えつつ怪物にする結晶、悪い紳士&左右淑女、狂ってる研究者。
健全に善良で強い子供のむてん丸、救われるキャラたち。
少しずつ進めよう。

これ、後でハードな鬱展開になるんだよな…そうか…気をつけて読もう(今俺のメンタルも決してよろしくはないため)

『回転むてん丸』第3章。戦争機械で思考能力はあるが人らしい心を持たない、しかし戦後は人らしく料理人をやっている、ロボコック、テツジン・グランキオの話。
そして、ヒロインの一人、海美こと、海底王国の王女、シーラの○○○の話。

どちらも、
「情は熱いが猛然と忙しくて家族を顧みることが出来てないコックの義母や、親身だが何ら力になれてなかった店員」
とか、
「シーラの秘められたえげつない力を、悪党に利用されないために、父王が抑圧的に育てた結果、シーラが○○○する」
とか、『回転むてん丸』シリアスモード、本格化。

あと、
「主敵の駒で、破壊遊びが好きで、荒っぽく頑丈な巨大マスコット」
とか、
「かつてのテツジンの僚友らしき、主敵の傭兵」
とか、
「第三勢力のマッドサイエンティストの擁する、主敵よりヤバい運命の星に生まれた立場の、無表情クール超常能力少年」
とか、そういうところでも見どころがある。

回転むてん丸『章』編。
怪物の結晶、ディシウムを撒こうとする、緑のドラゴン顔の紳士、主敵シックたち。
これに立ち向かう主人公、むてん丸たち。
そして抑圧的な父の反動と、むてん丸たちの力になれない事実を前に、闇落ちした仲間、海美ことシーラ。実は広域破壊音波技能『破滅の歌』を持っており、その力で暴れる。そして…

中盤の盛り上がり。ディシウム広域浄化解毒装置を巡る戦い。
破滅の歌はシーラの生命力と引き換えの大技だった。これを連発したため、シーラはあと一発撃ったら死ぬ状態にあった。
決戦の果てにいろいろあって、むてん丸たちはシーラを元に戻す。

「シーラの時のしでかしを、海美はどうするのか」と、シックたちは当然揺すぶりをかける。
しかし、むてん丸たちは「生きる、そして償いをやっていく。仲間の僕たちがついている」とキメる。光属性だ! 死者はいないので話が早い。あと間接的な原因である父王が償って回っていた。まともなセンスだ…

回転むてん丸『章』編。
暴力的な遊びを好む敵マスコット、ジャガン。彼は崩壊の瀬戸際にあり、崩壊したら怪物結晶ディシウムを世界中に撒き散らして死ぬ。
これに対するはステゴロ大好きシャム・メルルーサ姐。
ケンカしている間は楽しいジャガンに、シャム姐は憐れむでもなく、しかし確かに憐れむ。

シャム姐も力が有り余っていて、遊ぶと周りが迷惑していた。
しかし、シャム姐には、叱ってくれたり、まともな遊び方を教えてくれる周囲の連中がいた。
だからギャングのリーダーになれるまでには(そんな形だが一応は)社会に適応出来た訳だ。
ジャガンにはそういう縁との巡り合せがなかった。哀れ。

ひ弱な坊やだったジャガンは、怪物結晶ディシウムの力と負の心で、元気の有り余る怪物になってしまった。
彼は人生を誤って死ぬが、最期には似た者同士のシャム姐に人生を全うしてもらい、負の心を残さず、ディシウムも撒き散らさずに、成仏した。
思うところのあるシャム姐。爽やかながら後味ビター。

回転むてん丸『章』編。主敵たる謎の紳士・シックの在りし日。
貴族の子息だったシック。しかし、両親は怪物結晶ディシウムに冒され、蓄財や搾取や領民立退を進めるなど、領地の皆にとって有害な奇行が目立つようになってきた。

領民の彼女、アン。しかし、彼女は領民の革命決行(まあ、そうなるな)に反対し、彼女自体が標的に。
孫娘のためにまともな生活を貴族から取り返そうとした、革命闘士のアンの祖父。
しかし、
結果、

「おかしいなぁ
アンはもういないのに
アンの笑顔はもう見れないのに
なんでみんな
笑ってるんだ」
革命は成功した。
少なくとも、一人の、不要不急の犠牲を払って。
永遠に失われた、シックにとっての、唯一の光。
そして…シック…闇落ち! (まあ、そうなるな…)

おそろしくムゴイことを言うと、幼き日々のシックの不幸は、怪物結晶ディシウムがもたらした、数多くの不幸の、たかが一つに過ぎない。
だが…シックにとってはそれは全てであり、シックが何もかもドブに叩き込んで、誰も彼もを絶望に突き落とすに足る、十分な理由だった。

そして、シックには、怪物結晶ディシウムがもたらした力と、何より強い意志があった!
誰も彼もを絶望に突き落とす!
幸せだったが、今や辛い、亡きアンとの記憶も、もう思い出せない。
呪詛の塊と化したシック、暗躍する。直接の復讐が終わった今、世界全体への、要するに、八つ当たりのために!

アンの名を出されて、分からない、といった顔をするシック。唖然とする海美(こいつもシーラ大暴れモードの時にむてん丸の名前を思い出せなくなっていたからな)
そして、思い出せないなりに、心の底から怒りがこみ上げてくる(ここもシーラの再現っぽい。この漫画はこういう天丼をしばしばやる)

そして、シック、世界全体への八つ当たりに便利な、魔王とやらの復活に利用できない(利用するならキッドの方がいい)ので、強いが闇落ちさせられないむてん丸を、もはや利用する気は消え去っていた。
だから、むてん丸が一番困る手を、既に打っていた。故郷のびっくら村への再度襲撃! マズイぞ!

回転むてん丸『章』編。両親を汚染して彼の日常を奪った怪物結晶ディシウムの力に呑まれたまま、愛する彼女を行き掛けの駄賃でもあるかのようにSATSUGAIした世界への八つ当たりのために、暗躍するシック。利用価値の高い魔王の復活のため、闇堕ちしないむてん丸をもはや欲したりはしないが…キッドがいる。

キッドは、自分の使命と、魔王のことを思い出していた。何があったかは分からないが、どうやらかつて捨てられたらしい。ナーバスになっている。神々の戦争のために作られた魔王が、結局世界の邪魔になったから棄てられたのか? それとも別の何かか?

マッドサイエンティスト、チアはチアで、「自分は研究のためにキッドを手元に置いており、場合によっては破棄はありえる。しかし、それはキッドが自分を必要としなくなり、自立した時に等しい。今はそうではないのでそうではない」と平然と言い放つ。

チア、キッドの親らしきことをしながら、いつか来るキッドの独立を見据えており、正直海底王国のシーラの父王よりはるかに弁えていると言える。また、虚飾に価値を認めず、おそろしく正直ベースで喋っていることも完全に理解できる。分かるよ。だが、ナーバスになっているキッドに対して、言い方ァ!

キッド、暴走。チアはこれをモロに喰らい、人の形を失い、透明なディシウムになってしまう。養父をこの手でぶっ殺してしまったキッド…絶望の果てに闇堕ち! かつてのシック闇堕ちに続けて、ツライ話が続く。そろそろ物語も最終章であるはずだが、畳みかけて来たな…

場面は変わり、怪物の群れの襲撃を受けているびっくら村。むてん丸たち、帰還! テツジンはびっくら村までの道中を切り開くために残る(回復能力のある海美と共に)。

テツジンはテツジンで事情があった。彼は刻の遺跡で、シックではなく、僚友のアスタルの過去を見ていた。機械として、人の心を持たず、強かったが、息子を亡くした老母との出会いと死により、思うところがあって戦争を離れたテツジン。その後もアスタルは戦争を戦っていた。

テツジンも認める、生き汚く強い戦闘狂のアスタル。しかしそのアスタルの方も、自分が超えられない、人間を超えた圧倒的なテツジンの強さに、思うところがあったようだ。その負の心、劣等感(おそらくディシウムと相性がいいんだろうな…)をシックは利用し、取引で人間をやめた力を与えようとする。

テツジンを超えられるなら、かつてテツジンがそうであったように、人間など捨てても、何ら構わない。そう言い切るアスタル。最後に、道中でのアスタルとの決戦を見ていたテツジン。そして、今が、その時だ。怪物と化したアスタル、来る!

アスタルのパートナー、トリシュナ。彼女はアスタルが最後に、シック所有のディシウムの中でも一番強く危険なものを持ち出したのを見た。彼女は広域大火力物理的破壊力を持つ破滅の歌と似て非なる、聞いている者の精神に絶望を共振させて意志を折る能力者だった。だから、逆に、人間の心を軽視しない。

トリシュナはアスタルが、人間の心を完全に捨てて、テツジンへの劣等感も捨てて、テツジンを超えようとしているのを理解している。(テツジンは人間性を手に入れるために足掻いているのだから、皮肉なものだ)

トリシュナは理解している。アスタルの閉塞感、絶望感、そして恐怖を。テツジンに、自分の劣等感に勝つために、これしかないのだとしても、これではアスタルは完全に怪物になってしまう。アスタルは、人間であることにも、劣等感も含む精神を持つことにも、最早耐えられなくなっている。自暴自棄だ。

そして、アスタルは完全に怪物になってしまった。トリシュナは嘆く。こうなったら、彼が行きつくところまで連れて行ってやる。彼がテツジンを倒す機能と化したのなら、せめてそれを全うさせてやる。アスタル&トリシュナに押されるテツジン。危うし!

シノブ&シャム姐vs.エリス&リトール姉妹。彼女たちは彼女たちで、病気と飢えに苦しむ貧民人生を歩んできた。誰も助けてくれないどころか、おそらく感染を恐れて、医師や市民に殺害されようとしている。(これが描かれた頃はまだしも、今はコロナ下だからシャレにならん)

これを救ったのは、皮肉にもシックだった。シックはもう、赤貧洗うが如しだった亡き彼女、アンのことを覚えていない。だからこれは気まぐれであり、エリス&リトールの無力感をディシウムに活用させるためであろう。だが、ともあれ、殺そうとしたのは飯の食えている未感染の市民、救ったのはシックだ。

エリス&リトールの怪物としての能力。強者を弱者にしてボコる鎌(楽しそう)。テツジンと違い、機械ではないが、強化人間の実験動物として生を受けたシノブ。その力が抜けていく。が…絶望しないシャム姐は、ものが違う! 抜けていく力より、鎌を砕く力の方が強い! (うわーつえーひでー)

強くなろうとしていた弱者のルサンチマンで、最初から強者のシャム姐にキレ散らかすエリス&リトール。似たような貧民であったシャム姐に対して、思うところがあるようだ。だが、シャム姐は貧しいが、「知らねえ 俺は最初から強かったからな」(うわーつえーひでーそりゃそうだし正直だが言い方ァー)

強者の理屈で一蹴されて、とどめを刺されようとするエリス&リトールを、しかしシノブが庇う。シノブやシャム姐が、エリス&リトールより幸せなのは、強者の理屈「だけ」ではない。シャム姐は叱ってくれたり遊び方を教えてくれる、そしてシノブには導いてくれる大人たちがいたのだ。

まだ本当の意味では強くなく、この二人やみんなを救えないが、いつかは導いてくれる大人たちのように、強くなり、救う。そう宣言する。強いシャム姐も認める。シノブ、カッコイイじゃねぇか。大したものだ。

力においても、運においても、人とのつながりにおいても、そして人徳においても、完全敗北したエリス&リトール。可哀想だが、シャム姐はそんな二人に、彼女たちなりの人とのつながりの証を渡す。病気に苦しみ、怪力乱神と化した、二人にとって思い入れのある、シャム姐の成仏させた、ジャガンの角だ。

そしてむてん丸たちの元へ去っていくシノブ&シャム姐。無力化したまま取り残されるエリス&リトール。しかし、憑き物は落ちた。いろいろな感情の果てに、残ったものは、「ありがとう」だった。(続く)(朝っぱらから何長々と初見実況してんだお前)

回転むてん丸『章』編。敵傭兵アスタルのパートナー、トリシュナの話。彼女の声は人を鬱病にさせるので、周囲に嫌われ、引きこもりを余儀なくされた(そりゃそうなる可能性は高いだろうが、ツライ)。

戦火に包まれた街から彼女を救ったのは、アスタルだった。(彼女の絶望は当然怪物結晶ディシウムとの相性が良いはずなので、戦火自体が彼女を「確保」するための、雇主シックの仕込みだった可能性は大いにあるが)

アスタルには「テツジンを超える」という強い妄執があり、それはトリシュナのもたらす絶望より強い。トリシュナが初めて見るタイプの人間。あまりにも強い刷り込み。今までの人生の「全て」を圧倒する、彼女の新たな「全て」。そして、彼の望みをかなえること「が」、彼女の「唯一の」望みとなった。

アスタルによって深く傷ついたテツジン。しかし、アスタルはテツジンを睨むのをやめない。アスタル、そしてテツジンの「心」、まだ戦(や)る気だ。海美はテツジンに、さらなる力を注ぎこむ。

アスタル、これを止めない。テツジンがより強くなるなら、その状態で倒さなければ、超えたことにならないからだ。強くなったテツジンを倒すこと「を」、アスタルは望んでいる。アスタルは今や「もっと強い奴と戦いてえ」戦闘狂だ。傭兵の軍事的合理性など知ったことか。トリシュナ、理解出来てしまう…

トリシュナも消耗している。ここが正念場だ。しかし、海美は破滅の歌ではなく、今や希望の歌を歌う身だ。トリシュナの絶望の叫びに、競り返す!

テツジンはアスタルに伝えたいことがある。アスタルは強い力が欲しい。心は邪魔なものだと思っている。だが、今のテツジンには、「心」、特に、守りたい動機こそが、「強さ」をもたらす動機である。アスタルが捨てた、否、見てすらいなかったものこそ、アスタルの目的のために、本当は価値があった。

テツジン、アスタルに勝つ。アスタルの心象風景。そこに、テツジンもいた。アスタルはもう終わる。心象風景の中のテツジン、アスタルに、「おこがましい事かも知れませんが 私はあなたにも 平和の中で生きていて欲しかった」と伝える。テツジンはもう、平和の中の生活を知っているからだ。

アスタルにとってはそうではない。自分より強く、戦場で最強だったテツジンの姿が、自分の人生を決定した「全て」だった。そのテツジンが、生きて戦場を引退する。こんな勝ち逃げ、あるか?

テツジンはそんなアスタルを否定しない。彼の戦闘狂の「心」の強さは、それはそれで、「心」のなかったテツジンにとっては、憧れすらもたらすものだったからだ。

アスタル、ムゴイ教訓を、遺言として、呪いとして、テツジンに伝える。「心」は強さをもたらすかもしれないが、明確に弱さをももたらすものだ。現に自分は耐えられなくなった。お前も苦しむことになる。だが…テツジンは覚悟の上だし、心の強さと、それを教えてくれた他の人たちを信じている。

孤独に蟲毒をこじらせて、心が閉じてなくなっていったアスタル、人と関わって心を得て、しかも開かれていったテツジンに、本当の意味で負けを認める。負けたが、悔いはない。そして、アスタルの中には、トリシュナを残していくことに心残りがあるような「心」が、実はまだ残っていたのだった。

テツジンは泣いている。彼にも心残りがある。僚友たるアスタルを、やはり、死なせたくはない。海美にアスタルを回復してもらおうとする。だが、アスタルにはもう、生きようとする意志がない。彼は彼なりに生を全うした。満たされた。安らかな眠りだけが欲しい。トリシュナはそういうことも分かってしまう。

怪物アスタルは全てを全うして死ぬ。トリシュナにとっての全てであるアスタルが。怪物トリシュナは…彼と共に生き、彼と共に死にたい。アスタル、トリシュナのそういう気持ちを理解し…受け入れる。

人魚姫のように泡と消えるトリシュナを、アスタルを、本物の人魚姫の海美は、歌と共に見送る。アスタルを万感の思いで見送るテツジン。アスタルがくれた、最後の心のピース。さらばだ。さあ、行きましょう! むてん丸のところへ! (つづく)

回転むてん丸『章』編。むてん丸はシックと対峙するが、ダウン。シック(病気の意)の撒き散らしたDNAウイルスめいた超極小の怪物に体内を蝕まれている。いったんむてん丸を連れて撤退する仲間たち。シックは止めない。思惑がある。戦いが伸びれば、シックに基本有利なチャンスがやってくる。それは…

怪物を浄化する力。それは、何らかの特別な能力ではない。そんなものがなくても、ジャガンもアスタルも成仏していった。シャム姐やテツジンのまごころを受けて。そう、誰もが持っている思いやりの力、まごころが、怪物を浄化するのだ(そういや、怪物にまごころを注ぐこと自体、かなりのレアケースだ)

快癒したむてん丸に、シック、再戦。んが、もうDNAウイルス型超極小怪物の手は効かない。そもそもシックのからだは怪物結晶ディシウムのせいでボロボロになっている。いつ崩れてもおかしくないが…戦う。彼も、執念という形で、心の強さを持つ者だからだ。

むてん丸はもうシックへの憎しみを持たない。救ってやる。終わりにしよう。最期の斬撃。が…間に合ったらしい。間に合ってしまった! 闇落ちした、魔王の繭、キッド!

シックがキッドに撃ち込んだトラップ。それは、親代わりのチアを殺害させるためにあった。大事な親を殺した、キッドの特大の絶望をもって、魔王が覚醒しようとしている。笑う資格のないのに笑うやつらの住む世界から、笑いを奪い全てを奪う、「シックの悲願を叶えてくれる」、魔王!

八つ当たりの成就のためなら、シックは己がからだも、いのちも、惜しくないのだ。むしろ、自分を救おうだなどと抜かすむてん丸を絶望させられる。これは、むしろ、アドです。大爆笑しながら死んでいくシック。(最悪だ)

無論、こんなの、アンは、悲しむだけだ。
これはシックの憎しみだ。エゴだ。
だが…
シックは救われなかった。
シックは八つ当たりをして回っていたのだから、まごころを向けてもらえる立場ではなかった。
じゃあ、シック、ますます、救われる訳がない。
まして、シックが、八つ当たりを止める訳がない。

シックを食って育った魔王キッドの能力。それは、世界を透明なディシウムに変えていくこと。何もかもが透明なディシウムに変わっていく。世界の危機だ! (ちょっと一休み。つづく)

#回転むてん丸 『章』編。ついに魔王が起動してしまった。世界が透明なディシウムで覆われていく。そんな中、対怪物警察機関付科学者、トゥナは、兄のマッドサイエンティスト、チアの日誌を見る。そもそもチアは秘密主義で、トゥナにも日誌を見せたことがない。では、なぜ、トゥナにこれを託したのか?

#回転むてん丸 チアの研究は「ディシウムをなくす」ことだった。マジかよ。光属性マッドサイエンティスト! どういうことだ? 理屈はこうだ。怪物は他の結晶を食うので、最終的には唯一特大の結晶が出来るだろう。これをガーと浄化すれば一発だ(撒き散らすタイプもいるからあれだが)。

#回転むてん丸 その過程で、想定外のディシウムの力の塊、キッドが生まれた。
そしてチアに方針変更があった。まごころでディシウムが浄化されるのだから、じゃあ、キッドにディシウムを食わせまくって、チアとカワイイ(我流leet記法)トゥナのまごころで、キッドに心を与える。これで一挙に浄化!

#回転むてん丸 これは理論上可能な方法だと主張するチアの日誌。
しかしマッドサイエンティスト気質のチアが、何でそんな世界平和のために? そこにはちっぽけな善意があった。カワイイ妹が対怪物警察機関付科学者となった。お兄ちゃんもお手伝いします。
そして、こんな大それた、世界平和への道を…

#回転むてん丸 シックの世界を憎む切欠のエピソードも涙腺に来たし、アスタルの人間性に対する葛藤と屈託と人生貫徹からの死の話も涙腺に来た。
だが、元々善にそれほど興味のなかった可能性の高いチアの、ちっぽけな善意による動機と、それがもたらした途方も無い成就の道の話が、一番グッと来た。チアは、やったのだ!

#回転むてん丸 ある日地球に落ちてきて、全てを滅ぼし飲み込みつつあった、怪物結晶、ディシウムの記憶。
神々の戦争の決戦兵器、魔王の名で人々に恐れられ、得心しかかるディシウムの意志、キッド。
が…チアはいい親、いい師だった。それは他称だ。自分の目で見て考えて研究したら、本当は、何者か?

#回転むてん丸 この星を飲む魔王と化したキッド。しかし、その中に、不思議な光がある。チアの心の光。キッドの唯一の希望。それはまだ、砕かれていない! むてん丸たちは行く! キッドが未だ大事に抱え込む、人の心の輝きに向かって!

#回転むてん丸 キッドの心象風景の中に、むてん丸はいた。キッドは複数の記憶が混濁して苦しんでいた。キッドは確かに神々の戦争の決戦兵器『魔王』の記憶と、そしてディシウムの他称、次の『魔王』の記憶と、チアの手で作られた結晶の人形の自認を持ち、そのいずれでもあり、いずれでもなかった。

#回転むてん丸 キッドは混乱の中、問う。
俺は誰だ。
むてん丸は当然知る訳がない。
だが、むてん丸は言う。
自分の事なら、自分自身がよく知ってるはずだ。
体験、そして思い出。魔王として、次の魔王として、結晶の人形として。
その中には、チアの顔も含まれていた。
いい笑顔が。

#回転むてん丸 キッドはシックほどこじらせていない。だから、むてん丸の説得が届く。
「僕と旅に出ない?」
世界は広く、そんな世界を旅することによって、むてん丸の世界も広がった。
キッドも、きっと、そうなる。
確かに、こうして、広陵かつ荒涼とした世界で、辛く狭く閉じるより、ずっとマシだ。

#回転むてん丸 紛れもない善意で、まごころで、むてん丸は手を差し伸べる。
「僕はむてん丸 トモダチになろうよ キッド」
それは、突き詰めれば、チアが与えた計画名、他称だ。
だが、チアは、自分というものを、自分で見て考えて、決めることをも、確かにくれたのだ。

#回転むてん丸 キッドは、その他称を、自ら、受け入れる。むてん丸の手も。
「俺は…キッドだ!」
世界を覆う結晶が、粉々になって、消えていく。

#回転むてん丸 キッド自身のまごころが、ディシウムの最終浄化の鍵だった。
そして、キッドは消えていない。今あるキッドこそが、キッドのまごころそのものだ。
チアの計画は成功した。怪物結晶ディシウムは消滅し、世界は救われ、キッドのまごころは、残った。

#回転むてん丸 そして、想定外の、もう一つの得られたもの。
それは…結晶から解放された、チア!
チアを一度は殺したキッドの躊躇う手を、しかしチアは平然と掴む。
「さ! 帰りましょ!」
親、つええー。キッド、笑顔になる。
「ああ! 帰ろう」
大団円!

#回転むてん丸 大団円の裏で、シックは…彼岸で、アンと再開していた。
怪物と化した自分は、アンの隣にいられる存在ではない。しかし、アンは言う。シックは、アンは、ずっと一緒にいると、約束したのだ。
シックは、元の幼いシックへと戻る。
一緒に帰ろう。そうアンは言う。

#回転むてん丸 もはや存在しない場所。そこに帰るということは、二人はもう、存在しなくなる、ということであろう。
だが。
シックはアンを奪った世界を許さなかった。
そして、アンは、今、ここにいる。
それが、今、シックにとっての全てだ。
これ以上、望むことはない。
非存在へ還る。二人で帰る。満たされて。(泣いてしまう)

#回転むてん丸 ジャガンは、心残りを全うして、シャム姐に成仏させられた。
アスタルは、人間性と人生のこだわりを全うして、テツジンに成仏させられた。
シックは、世界規模の大それた業の果てに、アンと共に成仏していく。
キッドとチアは、世界規模の大それた業の果てに、生還した。
むてん丸によって。

#回転むてん丸 そうそう、キッドは、チアと、そして妹のトゥナに、新しい家族として迎えられたのだ。元からそれはトゥナも百も承知だ。
そういやキッドはディシウムばかり食っていて、オスシなんか食ったことないんだった。
一緒に食おう。宴だ! 寿司パーティーだ!

#回転むてん丸 平和を取り戻した世界。
そして、びっくら村。
海美も、シャム姐も、シノブも、テツジンも、グリンベアも、精霊たちも、なんかいる。
どこかで見たような人々。
のんびりまったり。

#回転むてん丸 未だにエリス&リトールとその新たな仲間たちは、残党めいてむてん丸に挑んでくる。まあ、今更やめられないんだろうな。なんか新登場の合体能力までお足ししてきたよ。何なんだこの人たち。
だが…旅がしたいんで遊びにやってきたキッドに、行きがけの駄賃で一蹴される! (流石に哀れ)

#回転むてん丸 新たな旅、ええやんけ。
世界は広い。旅をしよう。そして、もっと自分の世界を広げに行こう。
さあ行こう!
回転むてん丸『章』編、完!

#回転むてん丸 いやー、すごい漫画だった。
「困難な出来事から逃げずに「誠実」に向き合い、そこからより改善しようとする「善」の方向と、「力」の大きさで、やっていきましょう」
という、販促にしては異様な付加価値のある本質漫画だった。

#回転むてん丸 世間的には暗黒漫画呼ばわりされているが、それはその綺麗事をいったんは退ける誠実さによるものだ。
「こういう困難な出来事は、起こりうる」
ということへの、厳しく、逃げない、むしろそういうのこそ描く甲斐がある、という作者の気迫を感じました。読者の俺が。勝手に。

#回転むてん丸 そして、この作者は、
「しかし、善性は、真に、ある。
真にある悪の、今ここにある迫力だけを描くつもりはなく、真にある善の、いつかより良くする力を、描きますよ。それは、あるんだから」
という、捻くれに逃げない姿勢で描いているのだ。そう、解釈しました。読者の俺が。勝手に。

#回転むてん丸 こんな、抑揚とメリハリとコシの効いた漫画が、無料で読めるの、世界の七不思議くらいには不思議なので、マジでビビる(物理書籍があるような話もあったが)

#回転むてん丸 他のWEB漫画の話をするの、悪い手癖だが、『胎界主』や『堕天作戦』や『トンデロリカ』や“Final Re:Quest“(アニメじゃん)同様、私の中で殿堂入りになった。
(比較対象おかしくね?)
(絵空事と本質と出来事と現実と価値と理想と実現の漫画なので、この並びでいいんだよ)
(ピンと来た人はぜひどうぞ)

#回転むてん丸 余力があれば、『すしペット』初見実況、やっていければいいですね。
今日はもう俺はバテた。すごい体験をした。オツカレサマドスエ! (俺が)
いじょうです。ご清聴有難うございました。

虚偽の甘さの話はしない。世の中に現にある善性の話をしよう。善性を実現する力があれば、善性のない閉じた不幸な力を、開いて解くことすら出来る。そんなおそろしく素晴らしい子供向け漫画、それが、私にとっての『回転むてん丸』です。

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