中島みゆき「誕生」レビュー ~つまずいた人たちすべてへの救い~
最近、この歌詞が実感を持って迫ってくることが増えた。
歳を重ねると、いろんな人々との出会いと別れが重なっていく。
この歌を初めて聴いたのは学生の頃だった。
そのときは、上記の歌詞を聴いても、あまり印象に残るフレーズではなかった。
強気強気で押しまくっていく人たちは、どこまでも自らの主張を押し通して、のし上がっていくんじゃないか。
そんなふうに思っていたからだ。
しかし、社会人になって経験を重ねると、中島みゆきが綴った上記の詞は、次々と身近な現実で起き続けることを知った。
この資本主義社会において、成功者は、ピラミッドの最上部にいる、ごく一部の才能の持ち主だけでしかない。
どれだけ強気強気で推し進めても、失敗に失敗を重ねて結果を残せず、些細な出来事をきっかけに心が折れてしまうものなのだ。
大多数の人々は、望まれて誕生する。
しかし、心が折れてしまうと、まるで社会の中で誰からも望まれていないような孤独にさいなまれる。
中島みゆきの「誕生」は、そんな気持ちになった人々に、救いと生きる勇気を与えてくれる楽曲である。
誰かに頼ってもいいんだよ、と優しく諭してくれているかのように感じる。
そして、大サビでは、生まれたときに、誰からも「Welcome」を言われた記憶がないなら、わたしが「Welcome」を言うよ、と、すべての人々に救いを施すのだ。
つまずいた人たちすべてに救いを施す壮大な名曲。
だから「誕生」は、シングルとして大ヒットしてないにもかかわらず、多くの人々に愛され続けているのだろう。
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