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加速し続けているESGを知ろう!~第8回インターン勉強会~

こんにちは、インターン生の武田です。

私は、大学で金融について学んでおり、学問としてだけではなく実務の場でも金融を学びたいと思い、今年の3月からインベストメントブリッジでインターンを始めました。

今回は、大学での研究や投資コンテストなどで得た「ESG」についての知識を共有できればと思い勉強会を担当させていただきました。

ESGという単語は聞いたことがあっても、説明できる人は少ないと思います。しかし、どんどんESGの流れは加速しています。流れに乗り遅れないように、ESGの基礎を学んでいきましょう。

 はじめに

ESGが分かりづらい理由は主に3つあります。

① ESGの他に「RI」や「CSR」、「SDGs」などの似た意味の単語がある。
② ESGの何を見ればいいのか分からない。抽象的すぎる。
③ どのように投資に組み込めばいいのか分からない。

逆に言えば、これら3つの疑問が解消されれば、ESGをより理解することができるはずです。①は「ESGの歴史」で、②、③は「ESGと投資パフォーマンス」と「ESG投資の具体例」で解説していきます。

ESGの歴史

ESGは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせた言葉です。
キャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報に加え、非財務情報であるESGの要素を考慮する投資がESG投資と言われています。

・Eの例:CO₂排出量、気候変動問題  ・Sの例:女性活躍、人権、労働問題
・Gの例:取締役会の構成

ESGという言葉は、2006年に公表された国連責任投資原則(PRI)の中で使われ、広く普及しました。しかし、ESG投資に似た考えの投資はもっと古くからあります。
*PRI: Principles for Responsible Investment

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① 倫理投資時代
1900 年代初期の米国では既に、キリスト教の教会などが宗教上の理由からタバコ、アルコール、ギャンブルといった産業を投資対象から外すということが行われていました。
その後の1900年代初期から後期にかけての非財務情報を使った投資は、主に宗教や思想が強く出たものでした。

② 社会的責任投資(SRI)時代
1990年になり、企業の社会的責任(CSR)という考え方が広まりました。それに伴い企業のCSR評価に基づく投資、すなわち社会的責任投資(SRI)を実践する年金基金などの機関投資家が現れてきました。この頃から、投資パフォーマンスも重視され始めました。
*CSR: Corporate Social Responsibility, SRI: Social Responsible Investment

③ 責任投資(RI)時代
2006年のPRIの公表により、「ESG要因は企業価値に影響を与えるため、投資判断の際考慮しておく必要がある」という考え方が世界に広まりました。そのため、社会的な目的は必須ではなくなり、SRIのSの部分をなくして、単に責任投資(RI)となりました。RIは投資パフォーマンス追求のためにESG要因を考慮していく投資です。RIはESG投資とほとんど同義です。
*RI: Responsible Investment

④ SDGsの発表
SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030 年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成されており、SDGsによって企業が何を目指しているのかが分かりやすくなりました。
*SDGs: Sustainable Development Goals

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このように「非財務情報を利用した投資」は、考え方や名前などが少しずつ変わって、現在のESG投資になっています。そのためESGに似た意味の単語が多く存在していますが、ESGの歴史を追うことでこのような単語の意味を理解できるはずです。

ESGと投資パフォーマンス

上述したように、ESG投資は「環境や社会に配慮しながら、投資パフォーマンスも良くする」という投資手法です。しかし、本当にESGを重視しながら、投資パフォーマンスも良くすることはできるのでしょうか?このことを考えていくために、まずは投資パフォーマンスについて考えてみましょう。

・投資パフォーマンスが良いとは何か?
まずは次のクイズを考えてみて下さい。

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Aの期待賞金は、4,000円。Bの期待賞金は、10,000✕50% = 5,000円とBの方が期待賞金が高いです。しかし、Aを引きたいと感じた人もいると思います。それは、Bには「50%の確率で何ももらえない」というリスクがあるからです。人間はリスクに対してリターンを要求します。

そのため、投資パフォーマンスが良いというのはただ「将来の投資からのリターンを増やすこと」ではなく、「リスクに対してより大きいリターンを目指すこと」を言います。

・ESGはリスクを減らすのか?リターンを増やすのか?
ESG投資が、環境や社会に配慮しながら投資パフォーマンスも良くするという投資なら、ESG要因はリスクとリターンのどちらに関係しているのでしょうか?このことは、学術的には結論が出ていません。そもそもESGによって投資パフォーマンスが良くなるということについては、学術的に様々な議論があります。一方実務では、ESGが投資パフォーマンスにつながっているとしている見方も多いです。

以下では、ESGがリスク(*)やリターンに関係する可能性の例をあげてみます。
*リスクが個別リスクかシステマティックリスクかという議論はここではしないこととします。

・ESGがリスクを下げる可能性
 ・環境破壊などで訴訟を起こされない。
 ・差別的な商品を作ってしまい、不買運動や炎上が起きることがない。
・ESGがリターンを増やす可能性
 ・多様性のある社員(国籍、障がい、性別など)によって、イノベーションが起きる。
 ・環境配慮などの取り組みから、新技術が生まれる。

まとめると、ESGと投資パフォーマンスの関係は正の関係があるという意見が多いですが、まだ結論が出ていないということです。

ESG投資の具体例

この章では、ESG投資の具体例を3つあげます。

① ESGが悪い企業に投資しない(ダイベストメント)
考え方は「ESGの歴史」で説明した倫理投資に近い投資方法です。例えば、たばこを製造している企業や労働環境に問題がある企業などに投資をしないことです。

② ESGについての投資信託を買う
ESG情報提供機関(BloombergやMSCI)などが作っている「ESGスコア」を基に銘柄を選んだESG投資信託(以下、ESG投信)が存在します。
ESG投信を買うのが一番手っ取り早い方法ですが、ESGスコアは作った会社ごとにばらつきがあります。GPIFが作成した「2019年度 ESG活動報告」では、「FTSE社とMSCI社が作った世界的にも有名なESGスコアの間には明確な相関がなかった」とも発表されています。

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(日本経済新聞 「ESG重視で選ぶ投信 独自指数で運用評価」より)

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(GPIF 「2019年度 ESG活動報告」より)

つまり、ESG投信に投資する場合でも、どの投信を選ぶかというのは非常に重要になるということです。
しかしESGスコアの付け方など中身が分かりづらいのも事実です。そのため根気よくスコアの付け方などを確認することは必要です。

ESGスコアがばらついてしまうのは、ESGというものの抽象性が原因の一つとしてあります。業界や企業によって重要な課題は違うのに、ESGという言葉で一括りにするのは無理があります。
例えば、金融業界の企業がCO₂削減を重視したからといって、パフォーマンスが良くなるのでしょうか?また、重工業の企業が女性活躍を重視するのと、廃棄物問題を重視するのはどちらがよりパフォーマンスにつながるのでしょうか?(もちろんどちらも大事ですが)

③ ESGの中の特定の課題に注目して、良い企業に投資する。
最近は特定の課題に注目した投資信託も出てきています。GPIFも炭素効率性と女性活躍に注目した指数を採用しています。ESGを課題ごとに分けて細かく見る時は、その企業の属する産業や事業環境において重要な課題に注目しましょう。例えば、化粧品会社なら女性活躍、自動車会社ならCO₂、飲料会社なら水資源などです。

①、③の投資方法を実践する際に投資信託などを買わず、自分で個別銘柄を選択する場合は分散投資を心がけましょう。

 最後に

ESGについてここまで書いてきましたが、結局ESGは実務的にも学術的にもまだ議論の途上ではあるけれど、重要性が増しているのは事実であり、投資判断に組み入れていかなければならないということです。

また、ESGは投資以外にも使えます。私がインベストメントブリッジの業務として作成している「Student Bridge Report」という就活生向け企業レポートにおいてはESG情報(主にS要因)を使っており、学生が企業を選ぶ際にもESG情報は役立ちます。

今後、ESGは投資だけでなく生活の様々な場面で重要になっていくと思われます。これを機会にぜひESGについて勉強してみて下さい。

※本noteは株式会社インベストメントブリッジとしての意見・見解ではなく、あくまでも一個人の意見・見解となります。

参考文献

・平成28年3月, 日興リサーチセンター株式会社, 「「平成27年度資本市場における女性活躍状況の見える化と女性活躍情報を中心とした非財務情報の投資における活用状況に関する調査」報告書」http://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/27mierukachosa.html
・2020年1月11日, 日本経済新聞, 「ESG重視で選ぶ投信 独自指数で運用評価」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54251520Q0A110C2PPE000/
・2020年8月19日, GPIF, 「2019年度 ESG活動報告」https://www.gpif.go.jp/investment/GPIF_ESGReport_FY2019_J.pdf
・平成31年3月7日, 内閣府, 「機関投資家が評価する企業の女性活躍推進と情報開示」http://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/30esg_research.html

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