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勝手にファンド評価 Vol.10「ロボアドバイザー ウェルスナビの分析(その5) 2022年7月末基準」

こんばんわ。
元ファンドマネージャーのJackです。
10回目の記事を書きます。
ちょっと間が空いてしまいましたが、前回の続きで、内容はロボアドバイザーのウェルスナビの評価5回目(最終回)です。
今回は、まとめです。

なお、これは元ファンドマネージャーが徒然なるままに、個人的趣味で分析をやってみた感想文を公開しているだけです。
投資助言とか、アドバイスではありません。投資判断は、ご自分の責任でやってください。
また、情報の正確性も保証しません。個人的な感想文として読んでください。

それでは、始めていきます。

1.ウェルスナビの総評

・運用成績は良好。
・ポートフォリオの構成では、米国資産(米国債券、米国国債、米国物価連動国債、米国リート等)及び米ドルのエクスポージャーが非常に大きく、それらに大きくベットしている。
・運用成績の良さは、集中投資している米国及び米ドルのリターンが高かったことが要因。それらがいつも高リターンを上げられるわけではない。特に米ドルのリターンはどうなるかわからないため、現状の好成績は、運用が巧かったというより、投資対象が運よく高いリターンを上げた結果と考えられる。
・投資している資産のほとんどは、米国株への連動性が高い。米国株を薄めて投資しているようなポートフォリオになっている。

2.ウェルスナビについて思うこと

運用成績はいいのですが、米国資産と米ドルに極端にベットし、それが上手くいったから起きた好成績であり、逆の展開となれば、大きな損失を被ったかもしれません。良くも悪くも激しい成績になりやすいポートフォリオです。

また、ほとんどすべて外貨建ての資産で、且つ米ドル資産が大半です。第7回(ウェルスナビ2回目)の記事でも書きましたが、一般的にほとんどの人は家計のバランスシート上で、住宅ローンという円建ての大きな負債を抱えており、資産の中でウェルスナビのポートフォリオが大きなウェイトを占めるようになると、万一、為替が急激に円高に振れた場合、資産と負債のバランスが取れなくなる可能性があります。

ウェルスナビの場合、本当に米国のロボアドをそのまま日本に持ち込んだ感じなんですね。米ドルの世界で生活して、資産も負債も米ドル建てのアメリカ人向けのサービスを、円の世界で生活している日本人に持ち込んだ感じがします。

私の経験から言うと、米国人は為替の感覚がありません。米国の大手運用会社のファンドマネージャーと話をして、「為替は長期では影響はない」という言葉を何度も聞いたことがあります。また、英国やスイスのファンドマネージャーと話すと、「米国人は米ドルがすべてで、その他の通貨のことを考えず、為替の変動リスクという概念がほとんどない」と言われたことがあります。
ウェルスナビも米ドル建てで為替のことは考えない仕様になっていますが、米国のロボアドをそのまま日本に持ち込んだため、「為替は長期では影響はない」との米国人の考え方を特に疑うこともなく、そのまま取り入れたのだと推測します。

繰り返しになりますが、私たち日本人の多くは、家を購入するときに家計のバランスシートに円建ての大きな借金を負います。米ドルベースの運用サービスを利用して資産形成を図った場合、家計のバランスシートに多額の米ドル建て有価証券ポジションを持つことになります。これはリスクがあります。もし円高が急激に進んだ場合、米ドル建て有価証券ポジションが円ベースでは大きく減ってしまいますが、家の借金は円建てのままです。家計のバランスシートで資産が減る一方、負債の方は減らず、資産と負債のアンマッチが起きます。

ですので、ウェルスナビを利用する場合は、米ドル建てで資産を持つことを忘れてはいけません。自身の資産の中で、どの程度のウェイトを占めているかを時々確認すべきです。できれば、資産の評価額を円建てで把握するだけでなく、米ドル建てでも把握すべきでしょう。そして、投資をする場合は、必ず積立投資にすべきでしょう。

こういった点を考えると、ウェルスナビは投資初心者にはあまり向かないと思います。ある程度、投資経験を積んだ、知識のある人向けのサービスで、わかっている人には低コストで米ドル建てのエクスポージャーを持てる、ひとつの選択肢だと思います。

さらに、私は、お金の運用は、①すぐ使うお金、②すぐ使う予定はないが、すぐ使うことになるかもしれないお金、③長期的に使う予定がないお金の3つに分けられると考えています。
もう少し、詳しく書くと以下のとおりです。

①すぐ使うお金 → 「絶対に銀行預金でないとダメなお金」です。すぐ使う予定があり、減らしてはいけないので、投資に回しては絶対にダメです。毎月の生活費 × 6カ月 ぐらいの金額があれば、いいと思います。銀行預金であるべきなので、ウェルスナビの投資には使えません。

②すぐ使う予定はないが、すぐ使うことになるかもしれないお金 → 銀行預金である必要はなく、「円建てのバランス運用へ積立投資」をして運用すべきと思います。理由は次のとおりです。
まず、①すぐ使うお金のように、絶対に減らしていけないお金ではないので、わざわざリターンがほぼない銀行預金にするのはもったいないです。限定的なリスクを取りながら、積立投資をする運用は可能であり、リスクリターンのバランスの良さを考えれば、リスクを抑制した積立投資をするのが正解だと思います。
ただ、すぐ使うこともありえるので、大幅に減るかもしれないリスクは取れません。減った場合、損失が回復するまで待てる保証はないからです。長期で投資すべき株式や株式ファンドは積立投資するにしてもリスクが高すぎ、もっとリスクを抑えた「バランス運用」に積立投資をするのがベストだと思います。
ウェルスナビは、バランス運用なのですが、米ドル建てのバランス型ポートフォリオに、ドル円の為替変動が乗っかってくるため、リスクが高すぎると、私は感じます。万一、急激な円高が起きたら、バランス運用でも大きな損失が出る可能性があるからです。すぐ使うことになるかもしれないので、一旦大きな損失が出たら、回復を待てません。ですから、バランス運用でも、為替リスクを100%負うウェルスナビのような米ドル建てバランス運用ではなく、為替リスクを相当抑制した円建てのバランス運用を選ぶべきでしょう。
よって、この②のお金もウェルスナビへの投資には向かないと思います。

③長期的に使う予定がないお金 → まさに長期でリスクを取って運用すべきお金です。大きな損失が出ても、長期で使わないので、回復を待てます。
このお金は、ウェルスナビに投資することもできます。
しかし、どうせなら、ウェルスナビのようなバランス運用よりも、よりリスクが高い株式ファンドに投資するほうがBetterでしょう。リスクとリターンはトレードオフの関係にあり、より高いリスクを取った方が高いリターンを期待できるからです。それなら、リスクが大小の様々な資産に分散投資するバランス運用よりも、リスクが高い株式だけに投資する方が理にかなっています。
具体的には、為替ヘッジがない外国株式ファンドに投資するのがいいでしょう。投資の仕方は、勿論、積立投資です。
ついでに言うなら、私達は日本で働き、日本で給料をもらってますから、日本に何かあったときに、運用している資産まで一緒にダメにならないように、日本とは異なるリスクを取った運用をした方がいいです。「日本を除く先進国の株式か全世界株式」に投資するべきだと思います。

このように考えると、上記①、②、③のお金のいずれも、ウェルスナビには向かないと私は思います。
ウェルスナビは悪くないサービスではあるものの、資産形成のツールとして使う場がないというのが、私の結論です。

次回以降は、再び、個別ファンドの分析評価に戻ろうと考えていますが、世間的によりニーズがある内容にしたいと思ってます。
これまでは、どちらかというと、成績がいいファンド、悪くないファンドで、残高が大きいファンドを選んでましたが、今後は成績が悪いファンドにも焦点を当てていこうと思います。




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