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勝手にファンド評価 Vol.6「ロボアドバイザー ウェルスナビの分析(その1) 2022年7月末基準」

こんばんわ。
元ファンドマネージャーのJackです。
6回目の記事ですが、今回はロボアドバイザーのウェルスナビの評価を書こうと思います。
書く内容は幅広いので、何回かに分けて書きます。
1回目の今回は、まずウェルスナビについて分析する前に、ロボアドバイザーとは何ぞや?ということを書こうと思います。

なお、これは元ファンドマネージャーが徒然なるままに、個人的趣味で分析をやってみた感想文を公開しているだけです。
投資助言とか、アドバイスではありません。投資判断は、ご自分の責任でやってください。
また、情報の正確性も保証しません。個人的な感想文として読んでください。

それでは、始めていきます。

0.ウェルスナビの概要

投資一任契約に基づき運用されるロボアドバイザー。ETFへの投資を通じ、多数の資産に分散投資し、バランス運用を行う。米ドルベースで、リスクリターンが最適なバランスポートフォリオを作り、運用する。2022年7月末現在、運用残高は7千億円超。

1.ロボアドバイザーとは、何か?

ウェルスナビは、ロボアドバイザーと呼ばれるサービスですが、まずロボアドバイザーとは何かを説明したいと思います。
ロボアドバイザーというのは、顧客の投資一任口座を、運用の全権を顧客から委任された投資顧問会社が投資判断を下し、売買を実行するサービスです。
よくラップ口座という言葉を聞くことがあると思いますが、ロボアドバイザーはラップ口座の廉価版です。ファンドラップが普通の投資信託を投資対象にするのに対し、ウェルスナビはETFという上場型投資信託を投資対象にします。仕組みそのものは、まったく同じで、ロボアドバイザーは対面で営業マンと顔を合わせることなく、顧客と投資顧問会社の間で投資一任契約を締結し、運用が行われます。
世間では、ロボアドバイザーがまったく新しいサービスのように言われていますが、そんなことはありません。かなり前からあるラップ口座をネットで手続きできるようにして、人手を介さない分、フィーを安くしただけです。

2.投資信託のバランスファンドと何が違うか?

ウェルスナビは、バランス運用を行いますが、普通の投資信託のバランスファンドと何が違うのでしょうか?
国内外の株式や債券など様々な資産に分散投資する点は同じで、何も変わりません。
違いは、スキームにあります。
それぞれのスキームは以下のとおりです。

違いは、いくつかあります。
一つ目の違いは、「1.ロボアドバイザーとは、何か?」で説明したとおり、ロボアドバイザーは”サービス”であるのに対し、投資信託のバランスファンドは”商品”であることです。ロボアドバイザーは、運用の全権を任せた投資顧問会社のファンドマネージャーが顧客の投資一任口座を使って、有価証券を売買し、収益の獲得を目指す”サービス”であるのに対し、投資信託のバランスファンドは、投資するために購入する”商品”です。

二つ目の違いは、顧客一人一人が別口座で、運用資産を顧客毎に別々に保有するのに対し、投資信託のバランスファンドは、みんなでファンドに投資し、ファンドの資産はみんなで共有する点です。投資信託では、大口の投資家の資金の流出入で基準価額がブレて、それが有利に働いたり、不利に働いたりすることがありますが、ロボアドバイザーではそういうことは起こりません。

三つ目の違いは、ロボアドバイザーは投資対象の資産(日本株、海外株・・・)を個別のETFで持つのに対し、バランスファンドは投資対象資産をファンドの中にごちゃまぜで持ちます。日本株も海外株も一緒くたに持ちます。その結果、ロバアドバイザーでは、資産配分の変更や修正を行う場合、顧客が個別ETFを売買することになるため、売却益が発生すると、税金を取られます。一方、投資信託のバランスファンドは、資産配分の変更で日本株を売って海外株を買うような売買を行っても、ファンドの中での売買であり、顧客はファンドの売買を行わないため、売却損益は発生せず、税金はかかりません。
これはロボアドバイザーだけでなく、ラップ口座全般の弱点なのですが、ウェルスナビでは、DeTAXという機能でなるべく売却益が発生しないよう、工夫をしています。
税金は、「売却益ー売却損」の金額に対して、かかります。
DeTAXは、あるETFを売却して利益が出る場合、わざと他のETFを売却して損失を出し、「売却益ー売却損」の額を極力小さくすることで、取られる税金を小さくする機能です。
ただ、いつもいつもDeTAXで、取られる税金を圧縮できるとは限りません。例えば、すべての資産が値上がりして評価益がある状態では、売却損を出すことができませんので、DeTAXできません。
税制上、ロボアドバイザーは、投資信託のバランスファンドに対し、どうやっても不利になります。

四つ目の違いは、投資する際の商品サービスの選択にあります。ロボアドバイザーは、投資一任契約を締結する過程で、いくつかの質問をされ、それに回答することで、顧客のリスク許容度や期待リターンが測られ、自動的にポートフォリオが決まります。従って、顧客がどれに投資しようか、考える必要はありません。一方、投資信託のバランスファンドの場合は、どのファンドに投資するかを決めなければなりません。
投資初心者で、投資対象のファンドを決めるというのは簡単ではなく、その点でロボアドバイザーの方が初心者には優しいと思います。

3.まとめ

・ロボアドバイザーとは、顧客の投資一任口座を、運用の全権を顧客から委任された投資顧問会社が投資判断を下し、売買を実行するサービス。
・ロボアドバイザーは、ラップ口座の一種。ラップ口座をネットで手続きできるようにして、人手を介さない分、フィーを安くしたもの。
・投資信託のバランスファンドとの違い ①ロボアドバイザーはサービス、バランスファンドは商品。②運用資産は、ロボアドバイザーは顧客毎に別々、バランスファンドはすべての顧客がファンド内で共有。③資産の持ち方が、ロボアドバイザーは個別資産をそれぞれのETFで持つ一方、バランスファンドはファンド内で各資産をごちゃまぜで持つ。結果、資産配分の変更や修正を行うときに、ロボアドバイザーは個別ETFで評価益があると、売却益が出て、課税されてしまう。バランスファンドはそのようなことはない。税制上は、ロボアドバイザーはバランスファンドより不利。④ロボアドバイザーは、投資一任契約を締結する過程で聞かれる質問に回答することで、ポートフォリオは自動的に決まる。一方、バランスファンドは、投資対象ファンドを決めなければならない。その点で、ロボアドバイザーの方が投資初心者に優しい。

ただ、個人的には、ロボアドバイザーと投資信託のバランスファンドで、あまり差はないと考えています。ロボアドバイザーは、税制上不利な問題はありますが、バランス運用なので極端に大きな売却益が出るケースは稀で、DeTAXに加え、運用が上手ければ、不利な部分はかなりカバーできると思います。 

とはいえ、投資対象ファンドを選べる、これに投資すると決断できる方には、普通の投資信託のバランスファンドの方がいいです。税制上、どうやってもロボアドバイザーには不利な部分があり、そこはどうしようもないからです。

次回は、ウェルスナビのパフォーマンスを見ていきます。


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