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それは積みわらからはじまった #37

『モネ - 連作の情景』
上野の森美術館
2023年12月28日(木)


今日の一枚は、クロード・モネ「積みわら、雪の効果」。

明らかに、他の積みわらと違う。

クロード・モネ「積みわら、雪の効果」1891年 スコットランド・ナショナル・ギャラリー


他の積みわらは、積みわらのある風景を描いた絵であり、青い空、緑の草地、茶色の積みわらである。これに対し、「積みわら、雪の効果」は、複数の色面で構成された抽象画のよう。

一面の雪や空はピンク色っぽく、積みわらや影は青っぽく。補色の関係だろうか。

クロード・モネ「ウォータールー橋、ロンドン、日没」1904年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー


じっと見ていると、これは、積みわらではない何かを描いているような気がしてくる。

ウォータールー橋や睡蓮と似た、モネ独特の「色の世界観」を見ているようだ。絵のなかに取り込まれたかのような感覚にさせられる。これぞモネ、である。

クロード・モネ「国会議事堂、バラ色のシンフォニー」1901年 ポーラ美術館


モネの連作は、1891年のデュラン=リュエル画廊で、積みわらの15点が公開されたのが始まりなのだそうだ。

今日の一枚「積みわら、雪の効果」は、その15点のうちの一つ。モネの連作はこの積みわらからはじまったのである。


クロード・モネ「睡蓮の池」1918年 ハッソ・ブラットナー・コレクション


この美術展は連作を推している割には、連作が数点しかない。睡蓮に至っては、最初期の睡蓮(1897~1898年、ロサンゼルス・カウンティ美術館)を含めても2点しかない。

とはいえ、印象派と言われはじめた頃の作品と、連作に取り組みはじめた1891年以降の作品を比較できたのはよかった。1891年以降のモネは、もはや印象派ではない。新しい世界を切り開いたモネを感じることができた。


クロード・モネ「睡蓮」1897~1898年、ロサンゼルス・カウンティ美術館


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