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世のなかの、美しいもの、醜いもの

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偏愛するテーマを取りあげながら、おもむくままに綴ったエッセイ。
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記事一覧

手足に願いをかけて

ここのところ手や足のことばかり考えている。 なので、手足形の話でもしようかな。 福井県若…

糸を愛でる

糸が好きで、たくさんもっている。 手先が不器用なせいか、それともミシンとの相性が悪いのか…

カルタフィルスかもしれない人たち

「さまよえるユダヤ人」は作家たちの創作意欲をかきたてる題材のようで、彼の伝説を耳にした…

カルタフィルスの目撃情報

カルタフィルスは実在する(と信じるには創作じみている)目撃情報をいくつか紹介しようと思う…

カルタフィルスの話

カルタフィルスの話をしようと思う。 もしも老いることなく、死ぬことなく、何千年ものあいだ…

プエラ・エテルナ(少女論4)

マリと森茉莉とアナイス・ニン。ここに私はシルヴィア・プラスも並べたい。ドラマティックな死…

アナイス・ニンのこと(少女論3)

周囲の讃嘆の眼差しを我物にしてきたモイラのような美少女を現実に知っている。奇しくも森茉莉とおなじ年に生を享けたアナイス・ニンだ。 ニンは、悪夢のような美しさをもちながらも長いあいだ自分の醜さに苦しんでいた。はじめて人から容姿を褒められたときには「ばかみたい、ちゃんちゃらおかしい」と日記にうち明けている。 物語でなく現実を生きるニンの抱えていた容貌コンプレックスの理由ははっきりしていて、音楽家で審美家の父が幼い娘の病み上がりの顔を見てこぼした「なんてみっともないんだ」と

モイラのこと(少女論2)

アナトール・フランスの『マリ』ついでに、もう一人のマリについても書く。 文豪・森鷗外に砂…

マリのこと(少女論1)

アナトール・フランスの『マリ』は、1886年にパリのアシェットという本屋から出版された『我々…

この世でもっとも美しく、残酷な本のこと(3)

とフランスの啓蒙思想家ルソーは書いている。 ここで近代思潮全体に影響を及ぼしたその教育論…

この世でもっとも美しく、残酷な本のこと(2)

マルグリット・オードゥー(Marguerite Audoux)というのがその本の作者の名前だと知ったのは…

この世でもっとも美しく、残酷な本のこと(1)

この世でもっとも美しい本を知っている。 夢さながらの美しい舞台で、詩のように意味深い言葉…

リナ・ボ・バルディと悠久のイス

休日で、天気がよくて、そんな日は時代も時間も飛び越えてうしろから知らない人に呼び止められ…

階段を愛でる

日常のほとんどを部屋に籠って暮らしているので、会社、と呼ばれる場所にはまるで縁がないのだけれど、それでも滅多にない用事で訪ねるときに私の頭を占めているのは、空模様でも電車のことでもなく、階段である。 会社の入っているビルとか博物館とか商業施設だとか、箱ものを訪ねる喜びのほとんどは建物を愛でることにある。目が痛いくらいの白々しいあかり、おびただしい数の柱、無機質なガラス窓。 限られた場所以外は滅多に出歩かず、車のエンジン音も聞こえないような場所に住んでいるくせに、私はオフィ