人は"きょうだい型"がすべて

「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち 『きょうだい型』性格分析&コミュニケーション」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の「あとがき」より抜粋。

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私のきょうだい型は末子です。 5つ上に兄が、3つ上に姉がいます。

子どものころは、体が弱かったこともあり親からは徹底的に甘やかされて育ちました。母につけ入って横暴な兄を叱ってもらったり、冷蔵庫に取っておいたヨーグルトを姉に食べられて憤慨したりしたのも、今ではいい思い出です。

末子的な性格、つまり、効率主義で損得勘定にシビア、もめ事を嫌って楽しく生き たいと願うところは、私自身の中に、確かにあるような気がします。

〝あるような気がする〞と書いたのは、なにも恥ずかしがって言葉をにごしたわけではありません。正確に言うと、今回この本を書いてみて、これまでうっすらと自覚していたそういう傾向が、改めて再確認できたというのが正直なところです。

きょうだい型をテーマにさまざまな人にインタビューを重ねてみて実感したのが、 「世界は広い」ということでした。自分では思いもつかないようなことを考えて生きている人が、世の中には本当にいるんだ、と。

長子のみなさんの「頼られたい」「弟妹を人として認めていない」という証言には 心から驚きましたし、中間子のみなさんの〝愛情のエアポケット〞発言には、いたく感じ入りました。

一人っ子のみなさんの「人とモメたくないから逃げちゃう」というエピソードに は、これまでの一人っ子とのやりとりの経験を顧みて、ため息が出ました。

そしてなんと言っても、末子のみなさんが口をそろえた「最終的には誰かがなんと かしてくれると思っている」という信念には、自分の心の中を見透かされたような思 いがしたものです。

確かに長子に比べれば「無責任」かもしれないし、中間子に比べれば「自己肯定感 が強い」かもしれない。一人っ子よりは「人づきあいに関心がある」かもしれない し、末子独特の「依存心」のようなものが自分の中にあるような気もする......。

そうやって、この年になって改めて、自分の性格を確認し、補強することができたのは、思いがけない収穫でした。

結局のところ、性格とはそういうものではないでしょうか。

自分で「私はこういう性格だ」と自認することには、どうやら限界がありそうで す。私などは職業柄、自分の心理については客観的に捉えられていたつもりですが、 それでも新たな発見はまだまだある。

性格とは実に相対的なもの。あの人に比べたら私はこういう傾向があるかもしれない。あの人たちから見たら、私はこういう性格に見えているだろう。そうした手ざわりの集積が、人格を形づくるのでしょうか。

「自分探しとは他人探し」という言葉があるように、結局、他人をきちんと知ることでしか自分は理解できないわけです。

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今回「生まれ順」「きょうだい構成」という身近なテーマを題材に、世の中の人を 四つのきょうだい型に分けることに挑戦しました。もちろん、人とはそんな簡単に分類できるものではないし、例外だってたくさんあります。

それでも、こうしたタイプ別分析を読みながら、「あはは、確かに私ってそうかも」 と笑っているうちに、次第に「え、みんなそうじゃないの?」と心配になり、次に 「あ、こういう人いるいる」と再び笑って安心し、最終的には「うーん、この人たちに比べたら、自分ってこういう性格かもなあ」と納得する。そうやって、他者と自分 を行ったり来たりしながら考えを深める素材として、この「きょうだい型」という枠組みが役立てばと、願っています。

では、そうやって、自分の性格の特徴を知り、他者への理解が深まったら、どうすればいいでしょうか。むしろ際だってしまった差異をどう埋めればいいでしょうか。

もしかしたら長子のみなさんであれば「違いをすり合わせる」「妥協点を探るべく 話し合いを重ねる」といった解決策にたどり着くかもしれません。もちろん、それも正しい行いです。

ですが、末子である私は、別のことを考えました。違うなら違うでいいじゃない か、と。相手を変えるのは、なかなかに困難なことです。自分を変えるのは、もっと大変でしょう。であれば違う者同士、尊重し合えないか。お互いそのままで、なんと かやっていけないものか、と。

そこで、コミュニケーションの出番です。

コミュニケーションとは、心を通い合わせる魔法ではありません。もちろんそういう面もありますが、過剰に期待しない方がいいでしょう。むしろ目的を達成するための技術であり、ツールと割り切ったほうが、なにかと都合がいいはずです。

「郷に入ったら郷に従え」ではありませんが、海外ではその国の言葉を話す必要があります。見よう見まねでもとりあえずは話してみる。まずはそこから、人と人の関係は始まります。心の底から仲良くなったり、親友になって酒を酌み交わすようになるのは、もっと先の話です。

つまり、言葉なんて、コミュニケーションなんて、通じればいいのです。とりあえ ずは効率的に、要領よく、人とのつながりをつくっていけば、最終的には、深いところまでわかり合えるかもしれません。

そういう思いから、この本では、 つのきょうだい型の性格や心理を分析するだけでなく、それぞれへ伝わりやすいコミュニケーションについても論じました。

同じ「謝る」でも、同じ「叱る」でも、世の中にはいろいろな言い方があります。 どうしてこの言い方は自分にはぐっときて、あの人にはぐっとこないのか。そのメカ ニズムを知り、 つの言語を使い分けられるようになれば、あなたは人づき合いにお いて、とても強力な武器を一度に手にすることになります。ぜひ、見よう見まねで試してみてください。

・まずは自分を知り、次に相手を知り、結果的に自分をより深く知る。

・自分とは違う相手に対して、〝伝わりやすい言葉〞を選ぶことで、人間関係を円滑に進める。

この2つこそが、私がこの本でみなさんに伝えたかったメッセージです。

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最後に、笑い話をひとつ。

私は現在「五百田ゼミ」という「コミュニケーション・人間関係・言葉」をテーマ とした勉強会を主宰しています。あるとき、きょうだい型についてディスカッション する回があり、参加者の中に 人の女性がいました。きょうだい型はそれぞれ、長 子・中間子・末子。終了後、会費を支払うときに事件は起きました。

長子さんは、「お釣りのないようにご準備ください」という事前の注意書きをしっかり守って、封筒に用意した3500円で率先して支払いを済ませます。

中間子さんは、「500円玉までは用意できなくて...すみません」と申し訳なさそうに、4000円をおずおずと差し出します。

最後に末子さんは、ニコニコとなにも悪びれることなく、10000円札を無造作に取り出すのでした。いわく「どうせ誰かが細かいの出すだろうなー、と思って」とのこと。

きょうだい型の性格の違いについて話した直後の出来事だったので、会場は爆笑に包まれました。できすぎた話のようですが、実話です。

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と、はじめはこんな冗談みたいなところからでもかまいません。まずは、ご家族や 友人、職場の仲間と、このテーマについて話してみてください。意外な人が意外なテ ンションで、「あ、やっぱり。前から思ってたんだ!」「うちの夫も一人っ子で〜」 と、エピソードを話し始めてくれるはずです。

誰もがうっすら知っていたけど、誰もちゃんと分かっていなかった「きょうだい 型」をネタに、ワイワイと盛り上がってもらえれば、そして結果的に、あなたがあなた自身について知り、他者を知り、身近な人と上手にコミュニケーションを取れるよ うになってもらえれば、著者としてこれ以上の喜びはありません。

2016年11月 五百田 達成

※11月29日・12月6日、コミュニケーションセミナー開催

「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち 『きょうだい型』性格分析&コミュニケーション」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は全国書店にて発売中です。

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五百田達成

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「最終的には誰かがなんと かしてくれると思っている」という信念!えっ、してくれないの?
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