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2006年から10年間で失われた日本の産業 と10年後の未来

先日、経済産業省から「2019年度版ものづくり白書」が発行された。ものづくり白書といえば、主に製造業における、各種情報をデータとしてまとめているのだが、その中に興味深いチャートが掲載されていた。

2006年、100兆円規模の産業となっていたのは、自動車とエレクトロニクス

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このバブルチャートで、左上にあるオレンジの大きなバブルが自動車産業だ。その周りに紺色の割と大きめのバブルがいくつもあるが、これはエレクトロニクス産業、中でも完成品を指す。情報通信機器やコンピューター情報端末、AV機器などだ。さらに、薄い緑色が電子部品や半導体、電気部品デバイスといった産業が大きな規模として存在感を示している。

つまり、日本のエレクトロニクス産業と自動車産業は、世界シェアは高くないものの規模の大きなビジネスを行なっていたと言える。

2016年、自動車産業だけが残り、さらなる発展を遂げる

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2016年になると、自動車産業(左上のオレンジのバブル)はさらに規模を増し大きくなっているが、左上の紺色のバブルはなくなり、エレクトロニクス産業の市場規模が軒並み小さくなってしまっていることがわかる。代わりに、右側(つまり、世界シェアが高い)産業分野に大きなバブルが増えていて、主に、自動車部品(黄色)やハイブリッド車(オレンジ)が存在感を示している。

10年で失われた、日本のエレクトロニクス産業

ちなみに、世界のGDPは米国、中国、ドイツ、日本の4カ国合計でおよそ世界のGDPの半分をしめるのだが、日本は現在、部品産業が強く、完成品は自動車くらいしか強い産業がないと言える状態だ。

日本のエレクトロニクス産業はどこにいってしまったのだろう。

ご想像の通り、中国が大きく力をつけて産業規模も世界シェアも大きくリードする状況となった。(下の図は中国の世界シェア、中央上部に紺色のバブルが大きな存在感となっているのがわかる)

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90年代後半に半導体を手放し、2000年代に入って、サンヨー、シャープと売却が進んだ結果、部品産業は残ったものの、エレクトロニクス産業における完成品メーカーや半導体メーカーは、世界では存在感を失ってしまった。

向こう10年をどう読むべきか

過ぎてしまった10年のことはともかく、未来の10年をどう見ればよいのだろうか。

クルマやエレクトロニクス製品の部品や、ハイブリッド車、製造設備などまだまだ世界で戦えている産業が多い日本。得意な分野は伸ばしつつ、パラダイムがシフトするタイミングで、新しいチャンスをつかめばよいと思うのが順当だ。

しかし、米中貿易摩擦がきっかけとなって、部品産業や製造装置産業も打撃を受けだしている。世界はすでに境目がない状態になっていて、日本で作られた部品が中国で完成品となり、米国に輸出されるとサプライチェーンに関しては、当然のごとく影響を受ける。

つまり、得意なところを伸ばしたくても、国境のないサプライチェーンの中でビジネスを展開する以上、自国の産業だけが伸びていくということが難しい社会になっているといえるのだ。

それでは、向こう10年で起きつつある現在進行形の変化とは何があるのだろうか。

一番大きい変化は、IoT/AIによって既存産業にデジタルが取り込まれる、ということだ。IoTによりリアルで起きているデータをどんどん集められるようになってくる中、AI処理が可能となるような高度なコンピューターも手に入りやすい環境になってきた。

この技術環境の変化が何をもたらすのかというと、誤解を恐れずに言うと、「ロボット化が進む」と考えるとわかりやすい。ロボットは人にたとえられることが多いのだが、ヒトは手や足で感じたことを頭脳で考え、それを手や足に返して次の動作をさせる。ロボットの場合は、センサーで感じたことをAIで考え、それをロボットアームなど、何らかの駆動部分の動作指示に変えて動かしていく。

実際に、ヒトのようなロボットがそこいらをウロウロするというわけではなく、頭脳と駆動部分を持ったデバイスが様々な形で我々を助けてくれる、今後はあらゆる産業でロボット化(知能化)が進む時代になるといえるのだ。

単純に部品産業だけだと、ヒトにとっての手足、すなわち、データを収集する部分、あるいは、ロボットが駆動する部分だけに収まってしまうが、産業全体のロボット化つまり、頭脳を含めた処理系統に関しては、まだ世界的にも発展の過程であるといえる。

一方で、日本は、ロボット産業においては世界トップクラスで、センサー技術やモータ―技術などにおいても高度な技術を有している国だといえる。

そこで、もっと、それらの技術を統合し、ロボット化された産業を生み出していくことができれば、グローバル社会において強みを発揮するのだ。


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