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【ゲスト講義第二回】 「サイトラ sight translation」授業振り返り

こんにちは!今回は関根マイクさん主催の英語通訳塾の授業の一環として2月18日(木)に開催された講義「サイトラ sight translation」の振り返りをさせていただきます。

ゲスト講師として白倉淳一先生(https://profile.hatena.ne.jp/shira-j/)をお迎えました。その1時間半の講義の要点を、私(村山)が特に学びが多かったと感じたことを中心にお伝えします。

1,サイトトランスレーション(サイトラ)とは?

ご存知ない方のために補足として記載させていただきますと、英語にすると分かりやすいのですが「sight translation」とは「見て翻訳する」という意味。つまり、英文を読んで、語順どおり前から日本語に訳していく/もしくは日本語を読んで、英語に翻訳することを指します。今回の授業では英日(英語から日本語)のサイトラについて教えていただきました。

まず、白倉先生の方から、「サイトラとは通訳/翻訳の一つのやり方」であると同時に「通訳トレーニングとして有効」であるというお話がありました。私もサイトラという言葉は知っていたのですが、実際に現場でもそのような需要があるとは知りませんでした。白倉先生によると「通訳として呼ばれた現場で、プレゼンのスライドの準備がギリギリになってしまったため、スライドが英語(もしくは日本語)しか用意がない、通訳さん内容を訳してください。」というように通訳業務に付随して頼まれることがあるそうです。そのような場合、もちろん頼まれた通訳者の側もそのスライドを見るのは初めてなわけですから、文字を順に追って「目で読みながら内容を理解し、訳して言葉に出す」これが現場でのサイトラです。ただ、このブログを見ていただいているような方は通訳、もしくは通訳トレーニングに興味がある方が多いかと思いますが、(私もそうです)そのような人にとってサイトラと言えばやはりトレーニング方法という方が多いと思います。実際、白倉先生もご自身が通訳訓練をされていた際にサイトラが非常に有効な練習方法だったとおっしゃっていました。それでは実際の練習方法を見ていきましょう。

2,サイトラ練習をやる意味

サイトラを通訳訓練として行うには以下のような理由があります。

● 言葉で自然な訳を出すために時間が必要なら、時間をかけてみる。 できないことは分解して時間をかける 

耳よりも目のほうが、情報処理能力が高いため、耳から聞いた情報を訳すよりも目で捉える方が多くの情報を得ることができます。特に時制、定冠詞、単数、複数などに問題を抱えている学習者には、自分の苦手分野を意識し、そこに重点を置いたトレーニングができるというのもメリットの一つです。


●「解答→答えあわせ」メンタリティからの脱出

通訳学校などでは、生徒の訳出に対して、正解、不正解をつける傾向があり、通訳訓練を受けるうちに「言語には正解、不正解はない」という大前提が学習者の中で崩れてしまい。自分の訳出に対して答え合わせをするようになってしまいます。サイトラをする事で、さまざまなバリエーションを自分の中に持つことができるようになり、一つの正解を追い求めてしまうことから脱却することができるようになります。正解というものは誰かに教えてもらうものではなく自分で見つけるものなのです。通訳のプロたるには自分のスタンダードは自分で見つけていかなければなりません。

● いつでもどこでもできる 

サイトラは他言語の素材さえ目の前にあれば、場所を問わずに実施できます。例えば、コロナ禍で誰しもがマスクをしている今日であれば、多少マスクの中で口を動かしてぶつぶつサイトラをしていたとしても他人とのソーシャルディスタンスを広げるだけで全く問題ありません。

3,練習の素材

まず大前提として、この素材でサイトラを行うことが最適というものは残念ながらありません。これは語学学習の全般に言えることですが、すぐに即効性がある学習方法というものは存在せず、続けたからこそ効果を感じることができるものばかりなのです。そこでなるべく長く続けていくために素材選びで大切になってくるのが、まず、「読みたいものを読むこと!」「英語の素材であれば日本語を翻訳したものではなく、英語で書かれたもの、出どころが確かなものを選ぶこと」「事実や主張が書かれたもの」を選択することです。また、白倉先生もおっしゃっていましたが、人生は短い!興味をあるものを読む方が有益と言えます。

4,練習の方法

第二言語として英語を学んでいる人にとって日本語は利き腕(右利きの人には右手)、英語はその逆の手(右利きの人は左手)です。そのため、自由自在に使いこなしていくためには訓練が必要なわけです。英文法などを理解しているだけでは使いこなすには至らないため、自分の弱点を意識して直していくことが重要です。このように基礎固めをするためにサイトラは非常に役に立ちます。

例えば時制を使いこなすことが難しい人の場合(まさに私です)時制の認識をするために下記のような内容をサイトラするとします。

スクリーンショット 2021-02-19 22.36.57

スライドにも書いていただいていますが、コテコテに訳してみることで、日本語での認識が難しい、英語の時制の理解に繋がります。

例文)In some ways the UN has exceeded expectations.

この文章を英文法を意識してサイトラをしてみると

訳出例)見方によっては皆様ご存知の(the UN) 国連はさまざまな期待(expectations)を過去も今も越え続けて(has exceeded過去完了)います。

日本語としては不自然ですが、どうしてそこにその冠詞、自制が必要なのか、複数形を使っている意図は?と言う英語の観念が理解できると思います。このように自分の弱点を意識し、そこを重点として練習することでスキルアップにつながっていくのです。

5,最後に

サイトラなどの通訳トレーニングを行う意味、またその最終目標としてはやはり、通訳者として独り立ちしてこれを仕事にしたいということです。今回の授業を通じて、私は「(通訳を含む)職業訓練というのは誰かに全てを教えてもらって、できるようになる類のものでは無く、自分個人の強み弱みを自らが意識し、自分なりのコミットメントをもって取り組むべきもの」であるという大前提を強く意識させられました。白倉先生からも最後の質疑応答の際に「コミットメントとは自分に対して誠実であるかということが非常に重要である。もし勉強をすることを辞めたとしても誰も止めてくれる人はいない。自分がどうしても実現したいと思っているものならばしっかりとしたビジョンと計画性をもってやるべき」という言葉で励ましていただきました。日々この言葉を念頭においてしっかり学んでいきたいと思います。白倉先生、本当に先週の「ノートテイキング」の授業から二週に渡って素晴らしい授業をしていただき、本当にありがとうございました。

これからも英語通訳塾ブログをよろしくお願いします。それでは次回もお楽しみに!


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