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第6話 タスクの整理は、地獄のはじまり?

2022年の2月末に現職を辞めて、会社をつくることにした。
本作は、リアルタイムで創業を目指すそんな僕自身の物語。

「IRを、クリエイティブに。」を事業コンセプトに掲げ、企業のIR資料制作に主軸を置くことにした僕と友井は、いよいよ会社を形にすべく今後のタスクについて検討を開始した。
今回はそのあたりの話をしていく。

現職を辞めて起業することにした流れや、登場人物(僕と友井)、事業領域決定の経緯についてはこれまでの記事を読んでいただけると嬉しい。

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半年後に向けて、タスクの洗い出しを開始

2021年9月初旬。あんなに暑かった8月から一転して、東京は寒い日が続いていた。
半年後の会社の立ち上げと戦っていく事業領域を決めた僕らは、結構な頻度でTeamsをつなげて、タスクの洗い出しを始めた。

タスクは大きく分けて、2種類。
「会社の立ち上げ」に向けたものと「事業の成功」に向けたものである。
そもそもすべて未体験なわけで、僕らはそれぞれについて随時調べながら、優先順位を決めていった。

(1)会社の立ち上げに向けたタスク

まず会社の立ち上げに向けてのタスク。
これは2022年3月を目処に完了しておきたいものである。

会社の立ち上げに向けたタスク
・会社名の決定←重要
・法人登記に向けた各種準備
(オフィスの選定、定款の作成、事業計画書の作成、出資額の決定など)
・企業の顔となるロゴやコーポレートページの作成
・編集時代にお世話になった人への挨拶
・現職の会社を辞める←重要
・家族に説明し、納得してもらう←最重要

聞けば聞くほど、法人登記に向けた各種準備がとても面倒くさそうだったので、出資額など“決め“の部分以外は友井に一任することにした。

リサーチした上で皆まで言わずとも最適な形にアレンジしてくれる、そんな友井のプロジェクトマネージャーとしての腕を僕は買っている。
事業計画のベースをつくる作業は僕が引き受けるという条件で、大部分は彼が担当することになった。

ちなみに創業に向けて、友井は知らないうちに簿記の資格を取っていた。
「持っておいて損はないでしょ」とのこと。仕事ができる男だ。

この段階で決めたものは以下のとおり。

  • オフィス:利益が出るまでは固定費を上げないためにバーチャルオフィスを前提にする

  • 出資額:合計500万円となるようにそれぞれの出資金を調整

  • 会社ロゴ:会社名が決まったら発注(担当は僕)

  • コーポレートページ:初期費用を抑えるべく、自分で作るか格安で作ったものでしばらくは運用

  • 現職の退社:2022年2月末

会社名については「早めに決めたほうがテンション上がるよな」ということで優先度は高めにしていたが、一応お互いちゃんと考えてみようと1カ月くらい期間を設けて、改めて決定することにした。

余談だが、退社を2022年2月末にしようと決めた数日後、友井から「創業に向けて早めに専念したいから9月末で仕事辞めるわ」と連絡が来て、彼は本当に辞めた。
仕事の早い男だ。さすがに僕もビビった。

(2)事業の成功に向けたタスク

次に、事業を成功させるためのタスク。

事業の成功に向けたタスク
・より詳細な環境分析
・課題になり得るもののあぶり出し←重要
・生き残るため、勝ち抜くための武器の明確化
・顧客開拓/マーケティングの戦略検討
・「クリエイティブなIR資料」の抽出

とにかくまずは事業周辺の調査と分析が大事という話になった。

競合の分析もそうだが、特に各企業がIRに対してどの程度取り組んでいるか、取り組みが先行している企業や業界はどこなのか。そのリサーチなしでは始まらない。
企業のIR活動の傾向を熟知した上でなければ、企業と市場をハッとさせられるような新しい価値を提案・提供するのは不可能だろう。

そしてまた、リサーチの積み重ねこそが将来的に自分たちの武器になると僕らは考えた。
すべての企業のIRツールを調べ、クリエイティブの度合い、分かりやすさをデータベース化できれば、芯を食った提案が可能になる。
良い資料と、悪い資料の言語化もできるはずだ。

そんな考えから、顧客分析はとにかく丁寧に、かつ量をこなすことに注力し、全上場企業のIR資料を一つ一つ見ていき、そのバリエーションとクリエイティビティを数値化していくプランを打ち出した。
そう。4,000社弱ある全社のデータベースをつくることにしたのである。


最重要タスクは「クリエイティブ」の認識合わせ

データベースに取り掛かる前に、やっておかなければならないと考えていたことがある。
それが「クリエイティブ」の基準のすり合わせだ。

「クリエイティブ」の捉え方は人によってまちまちである。
理由は単純で、あまり言語化されていない単元であり、感性によるところが大きいと思われているから。

たしかにクリエイティブ=発想力と考えるならば、正解はない。
しかし、一冊通した全体の構成(論理性)や、文章を書くこと、文字と画像のレイアウト、文字の大きさ、棒グラフにするか円グラフにするかの選択など、内容を分かりやすく伝えるのも「クリエイティブ」の役割である。

この「内容を分かりやすく伝えるクリエイティブ」については、ある程度の正解と、確かな技術があるというのが、編集者を生業としてきた僕の持論だ。この辺の話は後日改めて、真面目な記事を書こうと思う。

話を戻すが、僕らの優先すべき事項として、友井とここの価値観・評価基準を同じにする必要があると感じていた。
それには共通のIR資料を見ながら、良し悪しについて意見交換していくのが一番よいだろう。
僕は友井に自分のノウハウと価値基準を伝えられるし、僕は友井から投資家として何を重視して見ているかという生の声を聞くことができる。
お互いにとってメリットしかない。

そう考えると、データベースを作ることはこの先のすべての起点になる。そんな気がしてきた。
一石で4、5羽の鳥を落とすことができるくらいの可能性があるように思えたのだ。

落とされる鳥たち
・市場と顧客の分析
・クリエイティブな資料の事例収集(良いモデルの抽出)
・全企業のデータを持っているという独自性の醸成
・“クリエイティブ”の認識すり合わせ
・顧客開拓の足掛かり

一石二鳥のイラスト探したら、大概みんな笑顔で石投げてて悲しい気持ちになった

思い立ったら、やるしかない。
僕らはとりあえず「論理性」や「抑えるべき項目を抑えているか」「文字量」「色づかい」など、媒体単位でいくつかの採点項目を決め、まずは20社のIR資料を各々のさじ加減で採点(5段階)を始めた。

結果は、予想以上にてんでんバラバラ。
互いに見ているポイントが全然違う。
データベースをつくり始める前に、認識の統一をやっておいてよかった〜と本気で思った。

その後、僕らは「何でこれを3点にしたのか」「この採点項目はいらないんじゃないか」「この図が見やすかった」「有価証券報告書や決算短信での差別化は難しい」など、各自がどこに重きを置いて採点したのかを共有しながら、クリエイティブの採点項目と基準を整備していった。

タスクの洗い出しから半月ほど経った、9月中旬。
すり合わせの作業がおおよそ完了した。
あとは随時、「ここはどう思う?」と聞いていくことにして、作業を始めることになった。

目標は2月末までの完成。
ついに全3,824社のデータベースづくりが本格始動したのである。

これが後々、友井にとって長く険しい旅路のはじまりとなるわけだが、このときの二人はまだ知る由もなかった。

TN

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