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第4話 決まった事業領域。可能性は無限大?

2022年の2月末に現職を辞めて、会社をつくることにした。
本作は、リアルタイムで創業を目指すそんな僕自身の物語。

第4話は、前回に引き続き僕がどの領域で戦っていくことに決めたかについて紹介していく。

現職を辞めて起業することにした流れや登場人物(僕と友井)についてはこれまでの記事を読んでいただけると嬉しい。

活発化が予見される投資界隈で何をするのか

第3話でも記したように、2年前に僕と友井は、スマホでの証券取引の実現や2022年度の「投資教育」義務化などを契機に、日本の投資界隈が数年後に活発化するのではないかと予想した。
そして、そこに大きなビジネスチャンスがあるのではないかと仮説を立てたのである。

あれから2年。コロナ禍の影響もあり、現実は僕らの想像を超えるスピードで望む方向へと変わろうとしている。

2年前の僕らの想定
・投資を始めようと思っても、現状まだまだハードルが高い
・日本には投資する人が増えるポテンシャルがある
・今後、日本の投資環境は過渡期を迎える
・そこにビジネスチャンスがありそう

日本における投資環境の概況

・コロナ禍の影響もあり、日本の証券口座数は増加傾向にある
・特に若い世代が口座を開設。スマホでも投資できる時代になった
・2022年度より高校の授業で「投資教育」が義務化
・2022年4月に、東証が再編(プライム市場などが誕生予定)

さて、肝心なのはこの領域の中で「何をするのか」だ。

渋谷のお好み焼き屋で日本の投資環境に焦点を当てたそのときから、つい数カ月前まで、僕らはビジネスの可能性について議論を重ねに重ねた。

起点は、友井のこの発言。
「俺、結構前から日本の投資環境を変えたいなと思っていて、誰でも気軽に投資にエントリーできるように投資教育とかしてみたかったんだよね」

彼がやってみたいと言った「投資教育」から、あちらこちらに発想を飛ばしながら、互いの経験やスキルを生かせそうな事業の形を探していった。

例えば、以下のようなものだ。

事業アイデア(一例)
・口座開設から丁寧に。マンツーマン形式のオンライン株式投資塾
・資産形成を一緒に考える、若者特化ファイナンシャルプランナー
・損失が出たら受講料はいただきません! ライザップ式の投資道場
・企業のサイズや取りたいリスク度合いなどに応じて理想の銘柄を提案する、"人"×"株"のマッチングアプリ
・投資家と企業のIR担当者がバーチャルで交流する会員制投資ラウンジ
・投資系Youtuber(笑)

「こんなこともできそうじゃない?」
「どこで収益化するよ?」
「ライザップ式は全体相場が暴落したら秒で利益なくなるな(笑)」
といったように風呂敷を広げては畳んでを繰り返し、2年前のその日、僕らはお好み焼き屋を後にした。


事業アイデアが浮かぶも、しっくりこない

結局、会社を立ち上げることを決めたその日まで、友井は僕に事業のアイデアや方針について定期的に連絡をよこし続けた。
バレーで会ったときも、「最近こんな本読んだわ」と経営者の書籍を押し付けてきた。
結構うざかったが、友井の貸す本は割とどれも面白かった。

そしていつしか僕自身も、頭の体操代わりに(笑)、色々なことを妄想し、事業のポテンシャルについて考えるようになっていった。

しかしながら、アイデアこそ色々と出てはくるものの、いざ自分がそれをやるのかとなるとなかなか気が乗らなかった。
いまいち手応えを感じていなかったのである。

ひとえに「投資教育」と言っても、口座開設から本格的な利益追求まで幅広い領域がある。
当然、「口座の開設方法」の知識は、投資の入り口として欠かせない項目だろう。

ただ、証券会社各社が努力を続けている中で、一人ひとりに開設方法を教えることに本当に価値があるかと考えると、自信を持って「Yes」とは思えなかった。

投資塾にしてもそうだ。”億り人”といった分かりやすくキャッチーな実績すらない、何者でもない僕らの授業を受けようと思う生徒がいるのか。集客に苦戦することは目に見えている。

というか、そもそも僕は「投資教育」をやりたいのだろうか……。
そのような自問自答を繰り返していた。

「投資塾とか始めちゃったら、平日夜とか土日に休み取れないよなぁ…」

投資教育は手段の一つに過ぎない

果たして、僕は「投資教育」をやりたいのか?
友井は「やりたい」と言っていたが、ぶっちゃけ僕自身はどっちでもよかった。
長年講師業をしていた友井と違って僕は、そもそも人に何か教えたことなんざ、ほとんどない。
教育なんて言われても、正直ぴんと来ていなかったのだ。
(これ友井に言ってなかったから、読んだら悲しむだろうな。ごめんよ)

友井「俺、結構前から日本の投資環境を変えたいなと思っていて、誰でも気軽に投資にエントリーできるように投資教育とかしてみたかったんだよね」

思い返すと、僕が友井の言葉の中で惹かれたのは、後半の「投資教育」の話ではない。
前半の「日本の投資環境を変えたい」という部分だ。

第3話で合コンの話をしたが、「もっと人々が楽しんで投資に参加できる世の中になったらなぁ」という気持ちは、友井と同様に僕も持っており、ここに共感したのである。

前回も書いたが、外資系大手で働いている僕が、”CEOのスポークスマン”というやりがいと学びのあるポジション&それなりの給料を手放すのだ。
どうせやるなら、世の中を変えられるようなどデカイことじゃないと面白くないだろ。

そういう意味で、投資教育は世の中を変える手段の一つではあったものの、僕の中の”本質”ではなかった。
そしてまた、上に列挙した数々のアイデアも、世の中を変えられるほどの事業ではない気がして、僕の琴線に触れるまではいかなかった。


実体験からたどり着いた事業のヒント

どういう事業ならば、僕自身がワクワクできるのか。
どういう事業ならば、世の中を変えられるのか。

実は最初に話したときに、事業のアイデアがもう一つあった。
「企業のIR資料を中心とした制作会社」である

企業のIR資料、すなわち決算発表資料や統合報告書、株主通信、中期経営計画などの資料に特化した会社だ。

友井起点の投資教育とは離れるので本筋にはなかったが、「投資家」「証券マン」「編集者」という自分のキャリアやスキルを総合したときに、割と早い段階で一つのアイデアとして挙げられていた。

とはいえ、当初は自分ができることを一つにしただけのアイデア。
世の中を変えられるほどのインパクトがあるかなんて、考えることすらしなかった。

ところが、この事業について本格的に検討を始めるや否や、思考は急速な伸びを見せていった。
あまりに思考が進むものだから、シナプスが熱で少し焦げたと思う。

ヒントは僕の投資家としての経験の中にあった。

僕は企業のIR資料を読むのが好きだ。
特に中期経営計画。企業の志や課題設定、どういう方針で何に取り組んでいくのかが、ビジネスモデルとともにまとまっていて、色々な発見がある。
統合報告書にあるような経営者のロングインタビューも好きだ。

それが上場企業の数だけあるのだから、暇つぶしにはうってつけ……のはずだが、実際はそうでもない。

大半のIR資料は読んでいて寝落ちしかねないくらい、退屈なものである。

僕が思う、残念なIR資料
・難解な表現、雑なグラフ、やたらと色数と立体処理を施したスライド資料
・読者である投資家よりも自社の社長ファーストになっている統合報告書
・「とりあえず話題のESG入れてみました」と言わんばかりに、やたらと文字ばかり並べて読む気を失せさせるサステナブル系の資料
・希望的観測ばかりで環境分析やファクトが一切ない、あるいは高尚な思想だけ綴られ具体的な施策の欠けた中期経営計画の発表資料
・誰が作っているのかよく分からない、もはや20年前のデザインを採用している株主通信

なんだよこれ!!! 
美しくない!!!! 面白くもない!!!!!
もっと読み手に寄り添った、読んでいて胸が踊るようなツールにできるだろうよ!!!!!!
もっと企業がやっている素晴らしいことを、ちゃんと伝える方法があるだろうよ!!!!!!

といったように、”残念なIR資料”への不満は、たしかに僕の中に長年渦巻いていたのだ。
そしてそれは、僕が編集者としての目を養っていくにつれ、増長していった。


もっとワクワクであふれる投資環境を目指して

当初はいくつかある案の一つ、なんならバックアップに過ぎなかった「企業のIR資料を中心とした制作会社」案は、環境の分析や検討を重ねていけばいくほど、これしかないのではという手応えへと変わっていった。

「現状のIR資料に変革を起こすことができれば、世の中が変わっていく」と本気で思えてしまったのである。

これから日本の投資は活発になっていく。
そんな時代が来るというのに、企業のIR資料がこのままでいいわけがない。

企業のIR資料がもっと美しい装いになれば、
投資家はもっと楽しみながら企業研究ができるだろう。

企業のIR資料がもっと分かりやすく、充実したものになれば、
企業のことを好きになってくれる人がもっと増えるはずだ。

企業のIR資料がもっとクリエイティブになれば、
日本の投資環境はもっとワクワクしたものになるに違いない。

いつしか僕はそう信じるようになった。
同じく友井も「そんなふうに世の中を変えることができたら、めちゃくちゃ面白いね!」と、この考えを信じるようになった。
 

IRを、クリエイティブに。

これは僕らが打ち出した事業コンセプトだ。

実際のところ、IRを変革していく重要性に気づき、積極的に取り組んでいる企業もこの1、2年で増えている。
今後はそういった企業に追いつけ追い越せで、あらゆる企業がIRに力を入れていくことになるはずだ。

この領域には可能性しかない。
日本のIRはもっと面白くなる。
そう信じて僕らは、この事業で戦っていく。

いつか僕が「ほらな。」とドヤ顔でメディアに取り上げられるその日を、楽しみにしていてほしい。

TN


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