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対談-僕らの会社ができるまでの話。 〈2〉

2022年の2月末に外資系大手を辞めて、会社をつくることにした。
企業のIR資料づくりを中心に据えた制作会社だ。
本作は、リアルタイムで創業を目指すそんな僕自身の物語。

2022年4月4日、ついに僕らは株式会社イチロクザンニを創業した。

前回(僕らの会社ができるまでの話。〈1〉)に引き続き、今回も創業準備の話を友井との対談形式で記していく。テーマは立ち上げ時のクリエイティブについて。

現職を辞めて起業することにした流れや、事業領域決定の経緯についてはこれまでの記事を読んでもらえると嬉しい。

一応、登場人物です。

なんでこいつ本持ってるんだろ。

左奥:新実 拓(にいのみ・たく)
代表取締役CEO/クリエイティブディレクター。東京都文京区出身。趣味はスポーツ観戦(主にサッカーと野球)と、麻雀やボードゲームなどの頭脳ゲーム。犬のあおが可愛すぎて、ずっと家にいる。座右の銘は『果報は寝て待て』。IQは600を超える。

中央:友井 翔太(ともい・しょうた)
代表取締役COO/IRプロデューサー。神奈川県町田市出身。趣味はバレーボール、麻雀、ボードゲーム、読書。個別株投資が大好きで投資歴は今年で9年目。酒にめっぽう弱く、缶チューハイを1本空けると次の日には雪が降ると言われている。


立ち上げ時のクリエイティブ関連の話

新実:前回は法人を登記するところまで話したね。今回も第6話「タスクの整理は、地獄のはじまり?」で整理したタスクに準じて当時の心境とかを話していきましょう。

友井:よろしくお願いします。

会社の立ち上げに向けたタスク
・会社名の決定
・法人登記に向けた各種準備
(オフィスの選定、定款の作成、事業計画書の作成、出資額の決定など)

・企業の顔となるロゴやコーポレートページの作成
・編集時代にお世話になった人への挨拶
・現職の会社を辞める
・家族に説明し、納得してもらう

※取り消し線の項目は〈1〉にて完了

新実:今回は企業の顔となるロゴやコーポレートページの作成について。

友井:クリエイティブの領域だね。

①デザイナーのこだわりが詰まったコーポレートロゴ

新実:ロゴは年明けたくらいのタイミングで編集時代からずっとお世話になっているデザイナーさんにお願いしたんだよね。tongpooの尾崎文彦さん。
なんとなくそれっぽくてカッコいいデザインを生み出せるデザイナーはたくさんいるけれども、一つひとつの要素に意味合いをもたせて最後まで細部にこだわってくれる方はなかなかいなくて。頼むなら尾崎さんしかいないって立ち上げる前から思っていたんだよね。

友井:他社を見てもなかなかないロゴだと思うけど、どんな感じで作成をお願いしたの?

新実:んー、普通にLINEでサラッと。「会社作るんで、ロゴお願いしやす!」って(笑)

友井:そんなカジュアルな感じだったのかい(笑)

新実:事実、ちゃんとしたお願いはしていなくて。「会社名はイチロクザンニにします」「麻雀っぽさはないほうがいいです」「あんまり固くなくて、でも上品さもある感じがいい!」「色はなんでもいいけど、派手すぎるのはちょっと…」くらいしか伝えなかったのよ。

友井:随分なぶん投げ方だな……。

新実:信頼の証ってやつですよ! とにかく自分の想像の範疇にないものがよくて。ただ「イチロクザンニのロゴを麻雀感ナシで、と依頼している先がトンプウなのは、ひょっとしてフリですか?」とは言われたよね(笑)
あと、途中で会社名を「株式会社フリテンチョンボ」にされそうにもなった。

友井:危うくマイナス ニセンヨンセン。

新実:ちょっと何言っているかよく分からないけど。それで依頼してからちょうど2カ月経ったタイミングで、以下のメッセージとともに最初の案がいくつか届いて。ほとんど迷うことなく現状のものに決まったよね。

tongpoo尾崎さんからの申し送り事項(抜粋)

・ロゴデザインの進め方にはいろいろあるけど、今回はいかにもロゴ的なベタなデザインはすっ飛ばし、はじめから尾崎の感覚的なイメージを前提にスタート。

・新実さんが起業する会社、クライアントに対してIRについて語る新実さんを想像すると、「いかにもロゴという見え方ではない」「ベタすぎないもの」「ちょっと新感覚な雰囲気」「感情、体温、重量を感じすぎない見え方」「方向性としてはクールだけど冷たくないもの」「淡々としつつも素っ気ないわけではない」「じんわりとくる魅力」というイメージがほしい。

アイデンティティーカラー、象徴するカラーは黒。雰囲気やなんとなく良いイメージで語るのではなく、確固たる理由と方法論を提示していく意味を込めて黒。環境や状況で見え方にブレが生じる他の色とは一線を画す黒。「黒字につながるIR」を目指して、黒。

・一般的なロゴマークは図案で社名や業務を表すが、イチロクザンニの場合はロゴマークを数字による表現に。社名的にこの数字の見え方が最も重要。イチロクザンニは数字をそのまま記号として使うことで、「イチロクザンニ」に馴染みがない人でも数字の会社として認知してもらうことを図る。

友井:最初は「もっとロゴっぽくしなくて大丈夫かな?」と思ったけど、投資環境を変えていく気概とか、会社名に込めた遊び心とか、そのあたりを踏まえると、いわゆる王道のロゴじゃないほうがむしろいいと拓(新実)が強く訴えてきて、妙に納得したのを覚えている。

新実:普通のロゴは嫌だけど、下品にはしたくない。そんなことを思っていたからこそ、すべてを伝えていなくても尾崎さんから思っていた方向性で、しかも想像を遥かに超えたデザインがあがってきてめっちゃ感動したよね。それが自分のためというのも相まって余計に。
余談だけど、その後も尾崎さんから微調整されたロゴ案が送られてきたんですよ。「新実さん、ロゴ修正してみたんだけど、どっちが好き?」って。いやもう違い分かんねーよって思わず口に出ちゃうくらいには細かい変化だけど、たしかに良くなった気はする(笑)

友井:まさに職人だよね。こだわってくれたのは本当に嬉しいことだけど、正直最後のほうは、俺には何がなんだか全然分からんかった(笑)

ロゴマーク微調整の軌跡 by tongpoo尾崎さん

②名刺はとにかくイイものを持ちたかった

友井:名刺のデザインも尾崎さんだよね?

新実:そう! ロゴと一緒にこれまたLINEで(笑)

友井:携帯電話の契約に思いのほか時間がかかったから、なかなか印刷の発注ができなかったけど、ゴールデンウィークに入ってようやく完成しましたねぇ。

新実:ようやく手に入りましたねぇ。これまたカッコよく仕上がっているんですよ。話してもいい?(笑)

友井:どうぞ(笑)

新実:これまた尾崎さんが、お題なしで作り始めてくれて。メールアドレスやURLといった文字列を収めやすいこともあって、世の中の名刺の大半はヨコ使いなんだけど、おカタい職業、例えば役所、官庁、士業などで採用されているタテ型の名刺をあえて使い、それでいて特徴的なデザインや印刷を採用することでギャップや独特な見え方を狙った仕上がりとなっております。

友井:ほう。印刷にもこだわったんだよね?

新実:そうなの! まぁ尾崎さんのご提案に全力で乗っかっただけなんだけど、グレーの味わいのある台紙に、これまた趣がよく出る活版印刷で一枚ずつ丁寧に仕上げてもらったんですよ。
それなりに印刷費用はかかったんだけど、クライアントの手に渡るものにはやっぱりこだわりたいし、少しでもカッコいいもの、クリエイティブな制作物をつくってくれる会社という印象を与えられたらいいなぁと思って。


友井:そんなこだわりだらけの名刺を開業から1カ月経ってまだ誰にも渡せていないのがもったいないよね!(笑)

新実:
そうなんだよねー。法人登記しないと携帯の契約ができなくて、携帯はブツの手配まで2週間、しかも届かないと番号が分からない。さらに携帯番号がないと名刺を作れなくて。だから4月に開業はしたものの、これまでお世話になった人たちにちゃんとご挨拶したいのにできない状況が続いていて、なかなかもどかしかったわけですよ。

友井:ここまで携帯を手に入れるのに時間がかかるのは正直誤算だったよな。ということは、これから冒頭に列挙したタスクの中の「編集時代にお世話になった人への挨拶」を進めていくということだね。

新実:そう! 本当は開業前にご挨拶するのが筋だし、そうすればよかったなぁって思うことは少くないんだけど、開業から1カ月経ってようやく体制が整った今、このカッチョイイ名刺を持っていよいよご挨拶できるのは本当に嬉しいよね。


③とりあえずで作り始めてみたコーポレートページ

友井:最後にイチロクザンニのホームページについて。会社の初期費用を節約するため、拓にイチから作ってもらったわけだけど、やってみてどうだった?

新実:めっちゃめんどくさかった(笑) 当たり前だけど、これはプロに任せたほうがいいね。

友井:ですよね(笑) もともとホームページとかは作ったことあったの?

新実:いやほぼ初めて。今回コードを書かずにウェブサイトをデザインできるSTUDIOというツールを使ったけど、それなりに扱いやすかったかな。

友井:開業まで残り1週間くらいのタイミングでほぼ完成していたサイトを作り直したよね。あれはどうして?

新実:前提として、ホームページを外部に発注すると結構お金がかかるから、創業時はそこまで労力をかけずに仮で設置して会社にある程度お金が貯まったタイミングで作り直すのがいいと思っていて、サイト構築の勉強も兼ねて自分で作り始めたのね。
それで、一回仮のものができたんだけど、見様見真似で作ったもんだか構造が適当だったりして、スマホに対応させようとしたときに結構なエラーが生じちゃって。このままではまずいと思って、ツールの使い方やアニメーションの方法なんかを調べ始めたら「こんなこともできるのか」と色々な発見があって、気づいたら全部作り直してたよね(笑)

友井:ひょっとしてサイトのあらゆる要素を動かしているのは……?

新実:言ってしまえば発見したことの実証実験だね(笑) 企業のイメージを損なわない程度に、思いついたアニメーションの処理をとりあえず試してみた感じ。だからアニメーションが多かったり、サイトのトンマナが違うのは自分でも分かっていて、創業の準備や業務が落ち着いたタイミングで落ち着いたものにしようとは思っております。

友井:そんなことを考えていたなんて知らなかったよ(笑)

新実:さすがに自分でデザインとか維持・管理し続けるのもしんどいので、頑張ってお金を稼ぎましょう(笑)


(続く)

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