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アイルランド節税投資法:株式投資か年金投資のどちらが有利か

こんにちは、アイルランド在住会計士のつぐみです。

お金に関する情報はどこに住んでいても重要ですが、今日はアイルランドでの投資情報をシェアします。将来への備えとして、アイルランドで人気のある投資手段の中から、特に節税効果を追求できる年金投資に焦点を当ててみましょう。


結論:アイルランドで投資するなら、まずは節税効果を狙って年金投資額を増やそう

将来のための投資手段として、アイルランドで人気なのは以下の3つです:任意確定拠出年金(AVC:Additional Voluntary Contributions)、株式投資、不動産投資。
今回は、その中でも比較的簡単に始められる任意確定拠出年金に焦点を当てて、節税効果について考えてみましょう。
(自営業の場合、会社勤めとは異なった年金形態となりますが、今回は会社勤めのみを対象にしています。)

アイルランドの会社員は一般に以下の年金制度を利用することができます。

①公的年金制度

社会保険料(PRSI)の支払いにより、誰でも受給可能です。ただし、週に受け取ることができる額は2023年現在265ユーロ程度であり、比較的受給額は低めです。

②企業年金制度

これは日本でいう厚生年金に似た制度で、会社員に提供される会社福利厚生の一環として存在します。会社によって積み立て額は異なりますが、一般的には若い世代では会社負担5%、自己負担5%の割合で積み立てられます。福利厚生に力を入れている大企業などの場合には、会社負担が10%、自己負担が5%といったケースもあります。

③任意確定拠出年金制度(AVC)

この制度は、公的年金制度と企業年金制度に加えて、自分の年金受給額を積極的に増やすための方法です。自主的に年金を積み立てることができ、アイルランドでの追加投資手段として人気があります。

アイルランドのAVC制度は、将来の年金受給額を増やすための有効な方法として注目されています。会社員として、これらの制度を上手に活用して、将来の経済的安定を築くことが重要です。

年金投資のメリット - 節税効果

①拠出時の節税効果

年金投資を行うと、一定額(後述)まで無税となります。
例えば、給与1,000ユーロに対する手取り金額は、税率40%の場合、600ユーロになります。しかしこの同額1000ユーロを年金として拠出すると、税額は0となり、1,000ユーロの年金拠出増額を実現できるわけです。

②将来増分への節税効果(Tax-free growth)

株式投資であれば、投資対象の株式や投資信託が将来的に増額すれば、利益を確定させた段階でCapital Gain Taxを支払う必要があります。
一方で年金の投資は、成長に対して課税されないため、将来的にも節税のメリットが続きます。

③投資額上限も大きい=節税額も大きい

年金投資の魅力として、投資上限額が比較的大きいことも挙げられます。例えば日本のiDeCoは、自営業でも月額68,000円(年額816,000円)が上限、厚生年金保険料の上限は年収1212万円を超える人の年間の保険料は112万5450円が上限と定められ、それらの制度から享受できる節税効果も制限されています。

それに比較してアイルランドの年金投資額上限は大きく、年収に対する年金投資上限割合額は以下の表のようにさだめられています。(なお、年収115,000ユーロ以上の場合、年収115,000として計算されます。)

そのため、企業年金のみではなく、AVCによる追加投資を行い、節税効果を最大限享受するのが、アイルランド投資での一番のおすすめ方法になります。


年金投資上限額計算表


例えば、働き盛りの40代は、年収の25%まで年金増額しその節税効果を得ることができます。年収が100,000ユーロだとすると、100,000✖️25%で25,000ユーロの年金投資を行うことができ、税率40%とすると10,000ユーロ(約150万円)の節税効果を得ることができます。


確定拠出年金のデメリット

①拠出額払い戻しの制限

多くの年金プランでは、早くとも60歳までは拠出額を払い戻すことができないため、早期リタイアを考えている場合には注意が必要です。自分の年金プランの詳細、特に払い戻し制限については確認しておきましょう。

②0.5%から2%程度のマネジメントフィー

年額拠出額に対して数%のマネジメントフィーがかかります。これはどの年金投資会社を使っても大差はありませんし、会社勤めの場合、年金投資会社選択の余地はほぼないでしょう。
但し、株式投資や不動産投資などの他の投資形態をとる場合でも、マネジメントフィーの発生は不可避なので、特段大きなデメリットとは言えないでしょう。


アイルランドの年金について、そのメリット・デメリットをご紹介しました。年金投資は税金面でのメリットが大きい反面、一部の拠出額は長期間にわたって引き出せないという制約もあります。個人的な意見として、将来の資金に余裕がある範囲で、できるだけ制限枠いっぱいの年金への投資を検討し、一方で短期間で必要な資金には株式投資を活用することが賢明かもしれません。

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