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タコ部屋 in the foot

食事はもっぱら外食である。出張でビジネス旅館に宿泊してる時は、朝夕付くので美味しいごはんがたらふく食えるが、寮にいる時は自炊である。作業車のアベニールに日銭を稼いだみんなを乗せ現場近くのコンビニによる。アルコールとつまみとレンジでチンするご飯をみんな買い込む、それまでチンするご飯なんて食べたこと無くて、うまいぞと言われたがまったく口に合わず米は炊くようにした。

出張先で思い出に残る食堂がある。一つは清水にあって老夫婦が営む食堂、朝から営業していて仕事前の労働者がワサワサいた。そこの鯵の干物定食の鯵は見たことない大きさで驚いた ご飯も大盛りが普通で優しいおばあさんが接客していた。その時 味噌汁をご飯にかけたぶっかけ飯にしたら、青野さんに怒られた、なんでも朝やるのは縁起が良くないらしい。そしてもう一軒 西横浜駅の近くにある中華料理屋ここは立体交差の道路の橋脚の耐震工事で寮から通った現場で、昼食は中華料理屋で食べていた。そこのレバニラが忘れられないレバーとニラだけ嘘偽りのないレバニラ、もやしでかさ増しする邪道とは違う 映画のセットのような佇まいも相まってよく行った。

生まれて初めて高級寿司を食ったのも伊豆見工業に入社してから、なんだか変な話だが底辺の日雇い労働者が高級寿司を食べるなんて、僕の日当でも25日働けば325,000円入る、そんな月は寮の近くにある寿司屋に行く一張羅のキレイな作業服を着て。ここは近くにゴルフ場がありゴルフ帰りの客が多かった。もっと高級なところはいくらでもあるだろうが、二貫で800円とか5,000円の海鮮丼とか僕にとって未知の世界 そこで飲み食いするのは少し優越感もあった。みんなの中にも寿司は特別という感覚がある。

現場に行ってもそれほどやる事がない日もある。一応時間通りに現場に向かい、朝礼に出てパチンコ屋に向かう、大体午前中はずっと打っている。僕はギャンブルは得意ではないので早々に切り上げて車で漫画を読んでいる。昼近くになるとみんな帰ってくる その日梅さんは5万ほど勝った、しかし 顔色が芳しくない 青野さんが「梅ちゃん勝ったから寿司食いにいくぞ」とそこにいた4人全員で近くの寿司屋に入る 昼間だけど飲む みんなご満悦だけど梅さんは意気消沈 5万の儲けが2万になってしまった。このパターンはこの先何回か続き ギャンブル運の無い僕は人に奢ること無くただパチンコ台に呑まれていく日だった 勝っても地獄 負けても地獄 徐々にみんな一人でパチンコに行くようになったのは言うまでもない。

次回「僕が職長デビュー 製鉄所編」

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