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タコ部屋 in the foot

伊豆見工業に来て劇的に回数が増えた事といえば、まずはパチンコ 出張先の余暇でやっていたが負けた時の感情の有様に情けなくなり足を洗った。余暇で同じ金を使うならスナックの方が断然良い。地方のスナックでのローカル話は酒のつまみになる。今だお通しがトーストだったのは他の追随を許さない。余暇の中で一番健全だったのは釣りである。

森下さんと初めて会ったのは僕が伊豆見工業に来て一月ほど経った頃だった僕より一回り年齢は上 ロン毛で音楽好き 笑顔が今でも浮かぶステキなお兄さん、その時富山の出張が終わりお土産に甘海老とホタルイカをみんなに振る舞っていた。 伊豆見工業の中で別棟に住んでいるのは所長と職長青野さんと森下さんだ。その飲み会に僕も呼ばれ 森下さんの別棟の部屋にお邪魔したそこで初めて卵付きの甘海老を食った旨さに驚きご馳走してくれた森下さんに感謝した。森下さんの部屋にルアーロッドが置いてあった。僕も海釣りをしていたので、釣りの話を振ったそれきっかけで二人で釣りに行くようになる。寮の目の前にある小鮎川でアブラバヤを釣ったり 休日の横須賀の第二海堡に行って関係を深めた。僕の呼称は だいすけ だいちゃん ひらやまちゃんとそれぞれで、だいすけと呼んでくれる人は僕のことを気にかけてくれて僕もなついていたし、年上の人といる方が楽しかった。その当時僕はラッパーを気取っていて、世間にドラゴンアッシュがラップとして認知されているのに胸くそ悪かった 僕は単純に韻を踏んでるだけの印税野郎と思っていたから、森下さんもドラゴンアッシュがラップを世間に広めたのは間違いないよと言った 今思うとHow toだったのは間違いない、だけどラッパーでもないしHIPHOPでもないと上手く伝えられずヒートアップした最後は笑顔で僕に「今自分が好きな事に熱くなれるのいいよな ヨシ だいすけ飲みに行くぞ」とスナックに連れてってくれた。森下さんは幼少期の話を僕にしてくれた、振り替えれる年齢になって誰かに話したい気持ちなんだろう。僕も一定の安心感を与えてくれる人に自分の過去や心模様を話すのが好きで聞くのも好き 森下さんも僕には話してくれた。

長いこと静岡の清水に出張滞在している。森下さんが久慈さんと一緒に清水港に夜釣りに行こうと誘ってくれた。仕事が終わり埃っぽい作業車のアベニールに発電機と投光器を乗せてコンビニで食料を買い込んで清水港に向かう清水港のゲートを抜け岸壁に車を停める 数人釣り人がいる、僕たちも竿を出し腰掛け飯を食う 気候の良い季節 のんびりと夜空を眺める 中型の船が停泊している外国籍の船だ 東南アジア風の乗組員が夜なのにパラソルの下 腰掛け国の音楽を聞いて潮風に乗り僕まで届く そこだけ切り取られたように見え外国にいる錯覚に落ちた。明日も仕事があるので10時頃にきりあげる。森下さんも久慈さんも僕も釣果がないまま 僕は最後ルアーを一投した岸壁に転々と灯る外灯の光と光が届かな海の境で銀色の魚が僕のルアーを追いかけてきた透明度のない港湾の海水の中輝く姿が不釣り合いで、でもより一層輝きを引き立たせる。

素性もわからない人々に見てしまった輝き 20年以上経た今でも僕の中に現存している

次回「かけさんという人」


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