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タコ部屋 in the foot

仮病の「お母さん お腹が痛いから今日学校休む」は自分の嘘をどこまで相手に信じ込ませるかの訓練と演技の練習にもなる。母はお見通しだが、勝ち取った休日の午前は胸を張りもう一度布団に潜り込めるが 午後になれば 囚われの身に変わりガラス越しに下校してくるみんなを恨めしそうに見ている

病欠で休んだのは3年間で数日 その中で病院を受診したのは一回 保険証の無い僕には大きな決断だったが熱病の苦しさには勝てなかった。他のみんなも病欠する人は少なく、早朝 もそもそと寮から出てきて車に乗り込む。アベニールは直されることなく廃車になり、ワゴン車に変わった。その日は高速道路の規制と道路の補修工事 規制班と作業班に別れ仕事をする。僕は作業班 中央分離帯のコンクリートを溶剤で強固にする。二車線の内一車線を潰すその規制をかける 規則的に引かれた走行車線と追い越し車線の白線の端にカラーコーンを置く 発煙筒を焚き 走行車線に一般車を促すが、うまく車線変更出来ずギリギリまで迫ってくる車があるので危険な作業である。

森下さんは規制班にまわっていた。前々から馬の合わない他の会社の人がいて、その人がトラックを運転して森下さんが荷台に乗りカラーコーンを置いていた。僕は材料の準備をしていた、後方から「何すんだ!!コノヤロー」とよくあるセリフが聞こえた。森下さんが荷台から運転手の顔に蹴りをいれていた、運転手も冷静さをかき 降りればいいものを窓から顔を出し「やめろ!!コノヤロー」と言うもんだから、また蹴りが入る 高速道路での乱闘はスペシャルだ。森下さんは何日か欠席した。

たまに全体で欠席することがある。これは青野さんが元請けにイラつくと明日からストライキだと休む。所長も現場の事は青野さんに任せているので何も言わない。

休み明けの月曜日 やる気のでない週の始まり、それでも もそもそとみんな出てくる。しかし 角田さんが一向に出てこない、土曜日にお決まりの二宮港でのサビキ釣りに出かけ日曜の夜に帰ってくるはずだが、部屋はもぬけの殻、たまに伊豆見工業からも忽然と姿を消す人がいるので、もしやとおもったが出発時間となり僕たちは現場に向かった。数日後 所長から電話があり 角田は留置所にいた 競輪場で喧嘩になり酔っていた角田が過剰防衛で連れて行かれたらしいと 小柄だけど虎だからな。久しぶりにあった角田さんはみんなに茶化されながら恥ずかしそうに縮こまっていた。「欠席の理由」

次回「金髪の彼の所業」

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