見出し画像

タコ部屋 in the foot

「 飛んだ 」寮生活や出張中にある、心の決断によりその場を誰にも告げず消えること、後先は考えず大して価値のない手荷物を抱え、公共交通機関かタクシーか自転車か己の足で捕まらないようにいち早くその場を離れる。当人は逃亡者で焦っているだろうが、本隊は何事も無く朝食を頂き現場に向かう。だいたいが新人かバイトだから思い入れもない。僕が伊豆見工業を辞める時は森下さんの部屋にみんな集まってお酒を呑んでいるときで その旨を伝え、僕はボロボロ泣き崩れ、宴から空気を変えてしまったが今後の僕を応援してくれた。その後 建築防水会社に入社し、伊豆見工業で覚えた技術で現場を収めてた時は、青野さんに育ててくれてありがとうございましたと電話した。

東名集中工事期間中に旅館から飛んだ人がいた、伊豆見工業ではない会社の人で朝起きたらいなかった。年もいってた方なので重労働に耐えられず飛んだ。町中ならすぐに移動出来るが、こんな山の中の早朝に市街地まで下りたのかと不思議だった。社員に辞めることを伝えるプレッシャーに勝てずまた逃げてしまったはず。

恵那山トンネルで接触事故を起こして金髪の彼も飛んだ、しかもその場からトンネル内トラックに乗り規制車線からバックで一般車線に出て戻ろうとしたらしい。予想できるのは工事場所のキロポストを通り過ぎ、規制車線内を戻るにも他の作業車が停まっていて、そのままバック出来ず一般車線を迂回して目的のキロポストに戻ろうとし、一般車と接触した。さぞ一般車は肝を冷やしただろう 大事故にならなくて本当に良かった。新人にはこのキロポストがよくわからない、僕も初めての高速道路の工事の時、キロポストを行き過ぎてしまった。金髪の彼の周りに誰かいれば相談して指示を仰いだだろうが、彼は自分の考えのみで行動してしまった、危険な現場では一番やってはいけない。

彼はトラックから飛び降り トンネル内を岐阜方面に走り去った Y社の社員も気づかぬうちに。後で聞いた話では、その後自転車をかっぱらって少し距離を稼ぎタクシーに乗り電車を乗り継ぎ静岡に帰った時にお縄になったらしい彼が事故を起こしてトラックの中で頭がグルグル周り逃げると決断してトンネルを抜け山中を歩き続けてる間 何を考えていたのだろう、家に帰ったら元の生活に戻れるなんて想像していたのだろうか。

そして、別の高速道路の工事の新規入場教育の時に、見せられたビデオには金髪の彼が起こした事故の経緯が流れた。人は慌て追い詰められると予測不能である

次回「潮時」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?