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クラウドファンディングに挑む~『なつやすみの巨匠』製作秘話3

クラウドファンディングのメリット

自主映画の資金調達としてクラウドファンディングを利用するのは今でこそ当たり前ですが、2014年当時はまだ珍しかったと思います。とあるパーティーで知り合った人に紹介してもらい、大手のCAMPFIREさんにお願いすることにしました。

やってみて分かったのですが、クラウドファンディングには資金調達以外にもいくつかメリットがあります。

・それ自体が宣伝になる
 我々はパトロンの募集期間を2ヶ月に設定しました。ということはその2ヶ月間がプロジェクト自体の告知活動にもなるのです。CAMPFIREさんも積極的に自社SNSで宣伝してくれますし、活用しない手はないでしょう。

・しがらみなく自由に使える
 直接出資して下さる企業や個人はもちろん有り難いですが、「金は出すが口も出す」タイプの出資者も中にはいます(今回のプロジェクトには幸い一人もいませんでしたが)。クラウドファンディングはいわば寄付金のため、たくさん集まっても発起人の発言権を保つことが出来ます。つまりはブレない映画作りが出来るということです。

プロジェクト成立の秘訣とは

何よりもまず誠意を示すことだと思います。発起人がどれだけそのプロジェクトに本気なのか、応援してくれる人にどれだけのリターンを用意するのか。

当時のクラウドファンディングは殆どがAll-or-Nothing方式で、設定金額に達しない場合は容赦なくプロジェクトは不成立となります。要は、その場合でもやり遂げる覚悟はあるのか、ということです。

・隗より始めよ
 そこで僕が宣言したのが、自己資金の投入です。
 自分がやりたくて立ち上げた企画なのに、初めから他人のお金を当てにするのでは筋が通りません。何があっても映画は完成させるという前提のもと、さらなるクオリティアップのために支援を募る。この姿勢が支持を得たのだと思っています。
 上の動画では冗談っぽく言っていますが、400万円というのは僕にとってかなりの額です。それこそ映画と結婚するくらいのつもりでした。

・社会的意義
 ただ自分の好きなことをやりたいから支援して下さいと言っても、他の人にとっては「知らんがな」です。そこには必ず何らかの社会的意義が必要です。義憤とか義侠心と言ってもいいでしょう。例えばエコでも貧困対策でも何でもいい、発起人の「無私なる切実さ」に他者は心を動かされるのです。
 僕の場合は「映画業界に対する危機感」でした。これは特に同業者からの共感を得ました。最高額を支援してくれた人が二人もいて、驚くと同時にやはりみんな同じことを考えていたのだなあと嬉しくもなりました。

・「成長」するプロジェクト
 自分がパトロンになる場合を考えてみて下さい。災害義援金は別として、ただ「寄付してあげよう」と思っているわけではないですよね。せっかくならそのプロジェクトに積極的に関わりたいはずです。
 となれば、発起人はお金を集めるだけ集めてはいありがとうございます、ではダメです。パトロンの皆さんを巻き込んで、一つのお祭りのように盛り上げていく必要があります。つまり当事者意識を持ってもらうということ。
 我々はプロジェクト期間中に並行してロケハンや子役オーディションを行い、それを逐一パトロンに報告しました。皆さんがちょっとしたプロデューサー気分を味わえたのではないかと思います。

これが当時のプロジェクトページです。
僕の言いたいことはほぼ全てここに書いてあります。

プロジェクトの結果は……?

目標金額1,750,000円に対し、支援総額3,244,500円!支援者数95人
結果的には大成功と言っていいでしょう。むしろ目標額をもっと多めに設定した方がスケール感が出てさらに集まったかも知れません。

CAMPFIREさんへの手数料を差し引き、自己資金と合わせて我々は700万円弱を確保することが出来ました。
順風満帆!かと思いきや、とんでもない。当時の予算案をご覧下さい。

■予算内訳
・交通費、宿泊費、食費 250万
・キャスト出演費、スタッフ人件費 425万
・機材費 70万
・美術、小道具、衣装、ロケ費 60万
・編集、仕上げ費 150万

◇合計 955万(※配給宣伝費は含まず)

この時点で既に足りていないうえに、我々の認識の甘さを後に思い知ることになります。映画は我々が思っていた以上にお金が掛かるものだったのです。

【つづく】



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