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碧き眼の曇れる朝や九月尽

2007年7月だった。石手寺で土産物屋の前に仔猫が居た。私がしゃがんで呼ぶと、その仔猫はやってきた。そして、膝の上へ這い上がり、動かなくなってしまった。お大師様が連れて帰れとおっしゃっている気がした。動物病院で診てもらったら、生後2~3ヶ月くらいと言われたけれど、生まれたのが何月何日かはわからない。猫風邪で具合が悪く、膝から降りなくなったのは助けてくれの合図だったか。それ以来、このコは我が家の家族となった。碧い眼が美しいので、「るり」と名付けた。
16年になるのか。ヒトなら80歳以上、もうすっかりおばあちゃんだな。いつお別れが来ても不思議はない。病院が嫌いで、キャリーバッグに入れただけでも地獄の底から呻くような声で嫌がる。それでずっと家でだけ過ごしてきたコだ。今更、動物病院の受診は考えていない。余計に苦しめることになる気がする。
元々よく吐くコだった。ここ半年ほどは頻繁に吐き、排泄の度にひどく吐いた。排泄の頻度が減り、フードを食べる量が減り、先週末から固形のフードは食べなくなった。ウェットフードも口をつけない。ずっと寝ている。昨夜、私が座っている椅子の横まで歩いてきた。何か食べたいのか?ツナ缶を開けるとその音で、必ずやってきたのを思い出し、ストックを一缶開けた。鼻先を近づけてくる。中身を別の皿へ移してから、缶を床に置く。うつむくのが苦しそうだと気づき、持ち上げて、口の近くに持っていくと、一心に缶に残ったオイルを舐めた。
今朝も、小皿にツナ缶の油と少量の身を乗せたら舐めた。だが、それだけ。また寝に戻った。私の枕の上に顎を乗せて、いつものスタイルで眠っている。布団をたたんで積み上げると、その一番上で枕に陣取る。いつもの様子、だけど、不安。今日は月曜、出勤しなくてはならない。私が戻るまで、待っていてくれるかどうか・・・。
待っていてくれ。

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