Yukari Watanabe (Iris)

2010年6月から俳句の世界へ。俳句集団いつき組俳人。耽猫派。写真は観るのも撮るのも好…

Yukari Watanabe (Iris)

2010年6月から俳句の世界へ。俳句集団いつき組俳人。耽猫派。写真は観るのも撮るのも好き。ここで使用している写真はすべて自分で撮ったもの。

最近の記事

大洲吟行記録 3

車窓は花降りてまた花花の路地 初花といふには満開のさくら 餅ちぎる速さ春祭りはあした 着ぐるみにたんと春陽を浴びさせて 春闌けて古民家カフェにバターの香 禅寺へ続く道にもやまざくら 鬼の名の椿おほきくあかく落つ 花時の大杉なりし株の虚(うろ) 経蔵を回せば春の香り初む 深閑たる古刹に清き花万朶

    • 大洲吟行記録 2

      如法寺は臨済宗のお寺。藩主の加藤泰興(かとうやすおき)公が禅僧・盤珪(ばんけい)を招聘し開山したと伝えられています。ご本尊は釈迦如来、本堂は座禅を組む体験もできる場所。 経蔵も見せていただき、一周回すと一回収蔵されているお経を読んだのと同じご利益が得られるなどと教えていただきました。ご案内の後、お抹茶とお菓子「月窓餅」をいただきました。お庭を眺めながらのお茶がことのほか美味しく、静かな時間が流れます。 帰りのJRまで少し時間があったので、少彦名神社へも立ち寄ることができま

      • 大洲吟行記録 1

        2024年3月30日(土) 句友・天玲さんにお願いして、大洲の吟行企画の下見に連れて行っていただきました。JR特急宇和海に乗れば、松山ーいよ大洲は30分ほど。車窓から山桜も堪能でき、気分は既に上々です。 いよ大洲駅では改札口で天玲さんがお迎えくださって、天玲さんの愛車でまず大洲領総鎮守八幡神社へ。翌日の春祭りに供えて、境内では餅つきなどの準備が着々と進められていました。餅つきをお手伝いしようということで行ったものの、餅撒き用の小袋を詰めやすいように開く作業など、ちょっぴりしか

        • 錆鼠の堀へ余寒の柳の葉

          #俳句ポスト365 初・秀作いただきました。ありがとうございます。 今回のお題「余寒」は、映像を持たない季語です。明確な映像(もしくは五感によって感知しうる何か)を取り合わせて、「余寒」を表現しなくてはなりません。堀之内公園を散歩していた時に、ふっと見えてきたのが柳でした。そろそろ芽が出る頃なのに、いまだに枝に残っている古い葉がありました。堀の水面に落ちていく葉も。よし、これを一句に、と思いました。 悩んだのはまず、堀の水の色を何と表現するか、です。残念ながら松山のお堀は水が

        大洲吟行記録 3

          ごとし とは何だ?

          よく耳にする「ごとし」について、ご質問をいただいたので、あらためて調べてみた。日本語には10の品詞がある、という話を前回したのだけれども、「ごとし」は辞書を引くと「助動詞」と出ている。「付属語」で「活用がある」、「動詞や他の助動詞を助けて意味を付け加える」のが助動詞、とここでは簡単に説明しておこうか。 「ごとし」は「形容詞のク活用」とよく似た活用の形だから「ク活用の助動詞」に分類される。助動詞ならば動詞や助動詞の後ろにくっついているのが普通だ。それ以外の使い方は無いはずだ。と

          ごとし とは何だ?

          文語形容詞の連体形って?

          前回の記事「連体形って何?」 は現代語、口語について書いたので、今回は文語の連体形について。むしろそれが知りたいわ、っていう方が多いと思われ。口語はふだんしゃべってるから、なんとなく活用の規則とか意識しなくてもわかるけど、文語となるとそうもいかない。面倒でも迷ったら辞書引くことをお勧めする。 【例】 NHKギュッと!四国「夏井いつきの俳句道場」秀作   杉箸の先に鰆の密度濃し 津島野イリス この句に使った「濃し」は口語の「濃い」と意味は同じ形容詞。句末におかれている終止形だ

          文語形容詞の連体形って?

          連体形って何?

          俳句をやってると、文法の話がちょいちょい話題に上る。よく聞く「連体形」とか「体言止め」とか、なんとなくわかってるような、わかってないような・・・。そこ、ハッキリさせとこう。 連体形とは、簡単に言うと「体言(たいげん)に続く形」のこと。では、「体言」とは?ものすごくざっくり言うと「自立語で、活用がない語。」 「体言」「用言」という言葉を理解する前に、「自立語」「付属語」の違いと「活用」を理解しておこう。 【例】  きれいな菜の花の中を電車が走ります。 この文を「文節」で切ってみ

          連体形って何?

          ごく私的な俳句史

          そもそも俳句を始めたのが仕事のスキルアップのため、だったので、一般的な俳人のケースとはかなり異なるかもしれない。けれども、書いておけば誰かのお役に立つかもしれない。 2010年6月に俳句がらみの仕事をはじめ、職場での研修が始まったのは8月。その一環として南海放送ラジオの『一句一遊』に投句するようになったのは、たぶん2011年4月、だったはず・・・。当初は記録がほとんどできていなかった。 一句一遊に投句した句として記録している、一番古い句がこちら。 田打撮れば昔乙女らVサ

          ごく私的な俳句史

          句友さんへ紹介する松山まとめ

          毎日のおいしいもの まとか → ランチと巨大パフェ https://twitter.com/yukari_watanabe/status/1668874014285238272 ラ・トマト → 日替わりランチhttps://twitter.com/yukari_watanabe/status/1668905602335256576 うどん空太郎(くうたろう) → 手打うどん! https://twitter.com/yukari_watanabe/status/16717

          句友さんへ紹介する松山まとめ

          いわし雲どれがわたしの母だろう

          伊月庵通信2023冬号 百囀集 秀作 とある句会の「雲」というお題で詠んだ一句。参加者のお一人から「いわし雲と母親の死を取り合わせたのはなぜか?これではお母さんを大変つまらないものとみなしているように感じられるが?」という趣旨のご質問があった。私の答えは以下の通り。 「私の母は、心も体も大変弱い人間でした。鰯は魚へんに弱いと書きます。それこそ鰯くらい弱かったのです。ですから、母といわし雲との取り合わせは、私にとってごく自然なことでした。」 小さく弱い魚、鰯が、群れ成して大空を

          いわし雲どれがわたしの母だろう

          碧き眼の曇れる朝や九月尽

          2007年7月だった。石手寺で土産物屋の前に仔猫が居た。私がしゃがんで呼ぶと、その仔猫はやってきた。そして、膝の上へ這い上がり、動かなくなってしまった。お大師様が連れて帰れとおっしゃっている気がした。動物病院で診てもらったら、生後2~3ヶ月くらいと言われたけれど、生まれたのが何月何日かはわからない。猫風邪で具合が悪く、膝から降りなくなったのは助けてくれの合図だったか。それ以来、このコは我が家の家族となった。碧い眼が美しいので、「るり」と名付けた。 16年になるのか。ヒトなら8

          碧き眼の曇れる朝や九月尽

          秋の風この梵鐘に火の記憶

          2023年9月17日 「道後俳句塾2023」「吟行会」にて 西村和子特選 松本勇二入選 この日は最高気温が36℃に達していたらしい。午前中でもかなりの蒸し暑さ、道後俳句塾参加者は宝厳寺を目指して上人坂を歩き上った。 吟行を前に、参加者に語られたこと。 ●2013年8月10日、宝厳寺の本堂と庫裡が全焼した。 ●先代の長岡住職と親交深かった黒田杏子先生はたいそう嘆かれていた。 ●道後俳句塾参加者皆で焼け跡を訪れた。 ●境内にある大きな二本の銀杏が山門を守った。 一遍上人立像

          秋の風この梵鐘に火の記憶

          かはほりは予兆一粒万倍日

          2023年9月16日 「道後俳句塾2023」にて 夏井いつき特選 6月のある日、句友数人とランチ&お茶を楽しんだ。よもやま話も尽きた頃、天玲さんから「尻二字俳句やりましょう!」と突然の提案。それに乗って詠み合い、この句は生まれた。 「尻二字俳句」とは前の人が詠んだ即吟句の最後二文字を自句の頭につけなくてはならない遊び。「かわ・かわ・かわ・・・」と頭に思いながらWEB検索していると、ふっと「かはほり」という夏の季語が浮かんだ。「かはほり」(蝙蝠=こうもり)は、その外見から気味悪

          かはほりは予兆一粒万倍日

          だうだうと滝がうがうと腑に響む

          「伊月庵通信」2023秋号掲載 季語の座「滝」秀作 季語「滝」の本意は何だろう?と考えながら、白猪の滝のすぐそばまで行ってみた。飛沫が飛んでくる、全身に感じる涼しさ。この涼感だろうか?遥か上方から落下してくる大量の水が生じさせる音、その轟音だろうか?尽きることなく流れ落ちる水を眺めていると、下界の暑さをしばし忘れることができる。この感覚ゆえに、昔から人は滝を目指して山道を登ってきたのだろう。 今、私の体内の水分はおそらく50%くらいだ。それだけの重量の水と、この滝とが、共鳴し

          だうだうと滝がうがうと腑に響む

          とある春 十句

          数年前のこと。心身ともに絶不調、公私多忙を極め、にっちもさっちもいかない毎日を騙し騙しやり過ごす、そんな時期があった。張り詰めた弦のように、なんて、長続きするはずもない。いつか破綻する、ぼんやりとそんなことを思っていた私に、遂にその日が来た。ある出来事をきっかけにして薄氷は割れ、私はどん底で両手を地面につき、呆然としていた。 一縷の望みをかけて縋りついた人は、私を憐れみ、哀しい目をして、切り捨てた。最も近くに居たはずの人でさえも、助けてはくれなかった。裏切りにあった、その酷い

          とある春 十句

          ピッチ放水中キックオフ待つ日焼

          一句一遊『サッカー吟行で一句』第1週金曜日に読まれました。季語は「日焼」夏です。 毎年、FC今治応援企画としてこれが兼題になるのですが、想像だけでは上手く詠めず、いつも諦めていました。テレビ中継でならば数え切れないくらいサッカーの試合を観ているけど、この機会に地元のスタジアムまで出かけてみようと思い立ち、試合日程を検索しました。なんと、投句締切よりも前に天皇杯一回戦でFC今治が試合する、しかもニンジニアスタジアムで!よぉしっ、吟行するぞ~!と大喜びで出かけました。 開場からキ

          ピッチ放水中キックオフ待つ日焼