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ごく私的な俳句史

そもそも俳句を始めたのが仕事のスキルアップのため、だったので、一般的な俳人のケースとはかなり異なるかもしれない。けれども、書いておけば誰かのお役に立つかもしれない。

2010年6月に俳句がらみの仕事をはじめ、職場での研修が始まったのは8月。その一環として南海放送ラジオの『一句一遊』に投句するようになったのは、たぶん2011年4月、だったはず・・・。当初は記録がほとんどできていなかった。 一句一遊に投句した句として記録している、一番古い句がこちら。

田打撮れば昔乙女らVサイン ねこ♪(当時の俳号)

なんだこれ? ヒドイ。
そして、懲りずに投句を続けて、初めて読んでもらったのがコレ

一句一遊【月曜日】
繍線菊(しもつけ)や女子高生のつけまつげ ねこ♪(当時の俳号)

も~~~~~ 真面目にやってたのか?>私
2012年4月に初めて金曜日に読まれて嬉しかったけど、

【元の句】 ショートホープ根元まで吸って田螺和 ねこ♪  
  ↓
【添削後】 ショートホープ根元まで吸い田螺和

中八だったのね。 やらかしてんなぁ。
2012年6月、二度目に金曜日に読まれた句は、ちょっとマシだったような。

一句一遊【金曜日】
地震(ない)過ぎていさきの縞の歪(ひず)みけり ねこ♪

いや、もう、なんというか、遅々として進まず、の感ある。 みんな元気出して。 どんな人でも続けていれば、佳い俳句を詠めるようになるからね。

2012年12月、愛媛新聞社カルチャースクールの受講を決め、いつきさんに直接教わることができるようになった!これで俳句もバッチリ上手くなるに違いないと信じ、月1回の講座へ通う。

最初は初級コース的な講座で
【夏井いつき特選】
後脚の毛裏分厚きうさぎかな ねこ♪

2013年11月から上級者向け講座受講開始
【夏井いつき並選】
爛熟の都市の腐臭のヤッケ買う ねこ♪

入ってから気づいたんだけど、上級者向け講座はものすごい手練れの大先輩ばっかりで、なかなか特選はいただけず・・・。道は険しく、あいかわらず俳句は上手くならず、楽しめていなかったなぁ。

【夏井いつき特選】

*2014年1月*
花無き家飾るルオーのリトグラフ

*2014年9月*
酒飲みを好かぬ考妣栗供ふ

*2015年6月*
街灯のヂヂヂと点いて水中花

*2015年7月*
空杓にでで虫住まふ天満宮

*2015年9月*
霧雨の高原星待ちの旅団

*2015年10月*
百の秋永らへ動くレジスター

*2016年5月*
客演のアロハシャツ裾ほつれたる

*2016年6月*
小刻みに囮の鮎の光る腹

*2016年9月*
チェアリフトの声吸いこみて葛の谿(たに)

*2017年3月*
夜の鳥は鳴かず朧月に濡れて
春驟雨開店前のBARに居る

*2017年4月*
飛花ひとひら堀在る街に着任す

*2017年5月*
風強し象の膚(はだ)めく大干潟

*2017年8月*
海水浴あとのフェリーの午睡の児
真ん中は蕩けて緩し浜西瓜

*2017年9月*
石鎚をまづは訪ねん竜田姫
観覧車野分の跡を見下ろしぬ

とまぁ、こんな感じで、講座で五句投句して、そのうちの一句ないし二句を特選にとっていただけるくらいにはなってきた。俳筋トレは継続が大事、と私が折に触れ言うのは、自身の体験から。途中でしんどくなってちょっと休んだりもしたけど、続けることで確実に俳筋はつく。

句会はいろんなところに参加したし、さまざまな選評・ご意見・添削例の提示などを句友からもいただいた。上手い人といっしょに句座を囲める機会は、なるべく参加しようとした。上手い人の中に入っていかないと、今以上の句を詠めるようにはならないと思っている。

俳句に限らないけど、鍛錬の最中の汗と恥はかけるだけかいておけ、ってやつ。「こんなことも知らずに俳句やってんのか?」と思われたであろうこと、数え切れない。背中を冷や汗がたらりたらりと流れたこと幾たびか。でも、そこから学べたことは一生の宝物。

2020年10月13日に詠んだこの句で初めての
一句一遊【天】
青北風の舟に痩躯のイエスめく 津島野イリス

10年続ければ、こんなご褒美ももらえることがある。私が詠む俳句は、賞をもらうとか、そういう系ではない。地道にコツコツ続けていて、たまに『俳句の神様』の気まぐれでご褒美もらえることもある、という程度。それでも、俳句を続けているおかげでたくさんの句友に恵まれ、ゆるやかなつながりができた。私の人生をしっかりと支える杖として俳句が機能してくれていると思う。まだまだ続けたいね、俳句。


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