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SS【終末の目覚め】881字

最近ぼくは寝ても寝ても眠い。まるで電池が切れそうなロボットのように、活動時間は減る一方だ。

このままだとぼくの人生のほとんどは、睡眠で埋め尽くされそうな勢いだ。

妻には「役立たず!! そんなに眠たいならずっと寝てろ!!」とまで罵られたが、それでも眠いものは眠い。

ある日、ぼくが目覚めると世界は一変していた。それになぜかぼくが寝ていたのはコールドスリープ装置。ぼくは低温の仮死状態になっていた。何らかの事情で電気が途切れ、冬眠から目覚めたらしい。

見覚えのない施設を抜け出すと見渡す限り瓦礫の山。人の姿もない。

ぼくが寝ていた施設の地下はほとんど無傷。ぼくはそこで水や食糧を探していた。ひどく腹が減っていたからだ。

すると物音がして誰かが近づいてきた。

妻だ。

「よかった、目覚めたのね、もう死んだのかと思った」

「な、何が起きたんだ?」とぼくは声を震わせながら言った。

妻は涙を浮かべながらぼくをゆっくりと抱きしめた。「大事なことを伝えなくてはいけないわ。あなたが眠りについたのは遙か昔のことよ。私たちが住んでいた世界は、避けられない災害によって壊滅したの。そしてあなたは、未来を担うために選ばれ、コールドスリープ装置に入れられたの。あなたが安らかに眠る間、私は施設を守り続けた。私にとって時間はあまり問題ではないからね」

ぼくはただ困惑と驚きで言葉を失っていた。

「でも今、あなたが目覚めた。これからは二人で、新たな世界を築いていくのよ」彼女の目は強い意志に燃えていた。「私たちはあなたが眠っている間、新たな生活の場所を求めて遠くまで探索した。でも一番待ち望んでいたのはあなたが目覚める瞬間だったわ」

彼女の言葉にぼくは運命を感じ、彼女の手を固く握った。新たな未来への第一歩を踏み出す決意が湧いてきた。そしてその時、眠りから覚めた後の清々しさ、その深い充足感を噛み締めることができた。

この長い眠りが、これから始まる過酷な生活の準備期間だったのだと、今では自身を納得させている。

ただ一つ心配なのは、アンドロイドである妻の電池が切れそうなこと。最近、妻は電池節約のためか寝てばかりいる。


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