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SS【芽吹きの物語】431字

春田はいつもと同じように、机の前に座っていた。運筆する筆が、紙に対して劣勢な戦いを繰り広げていた。毎日、毎日、物語を紡ぐために一生懸命働いていた春田だが、彼の物語はまだ人々の心に届いていなかった。

そんなある日、春田は一粒の種を見つけた。彼はその種を大切に育てることに決めた。時間をかけて水をやり、日光を当て、愛情を注いだ。しかし、その種は一向に芽を出す気配を見せない。

自分の作る物語と同じだと思い、春田は笑った。しかし春田は諦めなかった。物語を紡ぐことと同じように、その種に時間と労力を注ぎ続けた。

そしてある日、それは起こった。種が芽を出したのだ。春田はこの小さな芽を見つめ、自分の物語が世界に広がることを想像した。それはまだ小さな芽だけど、いつか大きな木になり、多くの人々に憩いの場を提供し、実を結ぶだろう。

「なるほど、ぼくが物語の種だったのか!!」と春田は心の奥底から叫んだ。その日以降、春田の物語は、世界に向けてその芽を広げ、新たな物語を紡ぎ始めたのだ。

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