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他人との適正な距離感って、案外遠い

きのうのnoteでは「クライアントとの位置関係を近づけましょう!」的なことを書いたが、根本的には他人との距離感って「遠め」がちょうどいいと思っている。

ベルリンを拠点に活動する友人の井口奈保が、アフリカでライオンと一緒の時間を過ごした経験から、『人間が失った致命的な感覚は、スペースを取ること』と書いている。

この記事では、ライオンに近づきすぎる人間の無警戒さ(ここでは3メートルが適正距離として提示される)を描きながら、『人間は「こうしたい」という執着や願望が強すぎて、Human animalとして自然な間合いを取れない。』と指摘する。

ライオンのように攻撃力のある存在に近づきすぎると、防衛的な反撃にあって傷つくことになる。これはまあ、自業自得とも言えるし、それによって純粋な恐怖(Human animal fear)を学ぶのはよいことだ。

しかし、近づきすぎる側が強い攻撃力を持つとき、相手を問答無用で傷つけてしまう。今日も身近なコミュニティで、「攻撃力の高い人」の傍若無人な踏み込みのせいで、かなり痛めつけられたという人の話を耳にした。

サバンナの動物たちは、互いへのリスペクト・無駄なことに頭を突っ込まない姿勢をもって、適切な間合いを保っているという。私たちは他人との距離を測るのに、どれだけ相手をリスペクトし、「課題の分離」をして、適切な間合いを取れているだろうか。相手から見た自分の立ち位置の近さ・遠さを想像できているだろうか。

この「距離感」は、ビジネスシーンにおいても考慮すべきテーマだ。エドガー・シャインの『謙虚なコンサルティング』は、いわゆる「仕事だから、ドライに、お役所的な」遠すぎる距離《レベル1》から踏み込んで、相互信頼に基づく個人的な関係《レベル2の関係》を築くことを推奨する。と同時に、親密さや愛情を伴う《レベル3の関係》は組織の仕事では避けるべき、深入りしすぎということも説いている。シャインの理論については、また別のnoteで整理したい。

今年はnoteをはじめ各SNSで積極的にコメントを返す、コメントを書き込むようにしているけれど、実はコメントを応酬する相手との「間合い」はけっこう意識しているつもりだ。書き言葉はときに強い力を持つから、不用意に近づきすぎないように。(ちなみに自分のほうは踏み込んできてもらうの歓迎です!スルーするかもしれませんが。)

本当はもっと近い間合いが合っている相手とは、どのみち徐々に距離を詰めていけばいい。繰り返すけれど、人間関係における間合いの取り方の本質は「リスペクト」にあると思う。

欲望をコントロールし、注意深く観察をして、適切な間合いを取る。それは人間に対しても、自然に対してもそう。そんな成熟を目指したいと思った。

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