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映画、どこ見る?どこ萌える?

俳優さん、ストーリー、「泣くこと」そのもの……。あなたは、映画のどんなところを見ていますか?

ずっと映画やドラマと疎遠だった私は、30代半ばにして突然映画館に通い詰め始めました。京都市左京区の『出町座』の会員になり、朝から晩まで一日いることもあります。

私の「萌えポイント」はちょっと変化球かも。最近のお気に入り作品とともに、視点をまとめます。


美しい映像

まずは風景です。特に、なじみのない外国の風景。都市の雑踏、雄大な自然、どちらも圧倒されます。

最近最も圧倒されたのは、北マケドニアの山岳地帯で撮られたドキュメンタリー作品『ハニーランド 永遠の谷』。予告編でも出てくる冒頭の切り立った崖。主人公の女性ハティツェが一人歩く大地を、ぐっと引きで撮ったショット。

ハニーランドは「ドキュメンタリー」なんですけど、《撮影者》の姿が一切登場せず(会話もない)、それなのに視点の異なる2つの家庭(ハティツェと母が暮らす家と、その隣人のサム家)がめちゃくちゃ寄りで撮られています。想像を絶する制作方法です。

インド・バングラデシュの「ベンガル人」に寄りに寄った『タゴール・ソングス』、京都の郊外に暮らす狩猟家を追う『ぼくは猟師になった』も、それぞれ「みたことのない風景」を見せてくれました。映画は旅。

アニメーション作品でも、もっぱら美術に目を奪われることが多いです。記憶を遡れば、男鹿和雄さんが手がけた『もののけ姫』の森。『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995、押井守監督)で描かれる雨のチャイナタウン。

美しいものを見たい、というのが軸にあります。


美しい演技

次の萌えポイントは演技です。演技の「うまい/うまくない」ってなんなんでしょうね……。

最近役者さんの演技に圧倒されたのが『ルース・エドガー』という作品。J・C・リーの戯曲 "Luce" が原作ということで、会話重視の謎解き的な作品です。1回目で気づけなかった伏線が多すぎて、はじめて「映画館で同じ作品を2週連続で観る」という体験をしました。

ルース・エドガーの役者陣は、表情がめちゃくちゃ安定しています。無表情がうまい、と書くと不思議ですが、特に先生役のオクタヴィア・スペンサーは本当に見た目の表情の変化が少ない。なのに、心配/警戒/安堵/憤怒などの微妙な心情をはっきりと表現していると思います。ルース役のケルヴィン・ハリソン・ジュニアも「嘘か本当か全く分からない」ポーカーフェイスが一貫して見事。

あと、うまい役者は「怒鳴らない」ですね。静かに怖いことを言う。そして「ここぞ」というごくわずかなシーンでシャウトが入る。だから緩急が効いて印象が増すんです。

ルース・エドガーは色々こわい作品なのですが、いわゆる「痛い描写」「死ぬ描写」が一切出てこないので、その点は安心できます。逆に「全く痛くないし誰も死なないのにめちゃくちゃ怖い」ってどういうことでしょうね。こわい場面で流れるサントラもとても好き。

洋画と邦画で、間の取り方とか、抑揚の聞こえ方とか違うんでしょうか。沈黙の長さとか、「目の泳ぎ方」とかを見ています。でもドラマは圧倒的に見ている量が少ないので、演技のうまさを分解して研究したい。


美しいアレンジ

3つ目はアレンジです。これは戯曲やマンガ、小説を原作とした映画を見たあとで、原作との比較をして楽しむということです。それぞれのメディアに最適な表現とはなんなのか。「映画」であるために、どこをどう変更していて、それはなぜなのか。

『アルプススタンドのはしの方』という作品は、高校演劇からのアレンジということで、パンフレットを買うと原作のシナリオが読めます。これがめちゃくちゃ面白い。セリフはおおむね忠実なものの、いくつか追加されたシーンがあります(吹奏楽部員や熱血教師・厚木は映画版オリジナル)。差分を見ると、「わかりやすい感動」に寄せる=エンターテインメントとして素直に泣かせることを意図しているのか?と考えました。一方の原作戯曲シナリオは、言葉が濃い。舞台版と両方、じっくり見てみたい作品です。

この作品、若い役者陣の演技やセリフには「嘘っぽい」部分も多いと感じました。ただ、それを敢えての《泣かす機構》ととらえて、「感動」をめいっぱい楽しんでしまいたい。ということで推しの一本です。

また、『のぼる小寺さん』はコミックスからの映画化作品で、観劇後すぐにKindleで原作4巻を買って一晩で一気に読みました。こちらは構成もキャラ設定もかなり違いがあります。


元々、脚本術の本をたくさん読んだので、脚本にも注目しつつ観ていきたいのですが、『ハリエット』を観た後「ザ・ハリウッド的な映画のハラハラ感はご遠慮……」と感じたので(小心者)、ドキュメンタリー系とか戯曲系とかちょっと違うやつばっかり観ている状況です。


アレンジという点を含め、作品の作られ方や解釈を知るために、パンフレットを買って読んだり、YouTubeで関連動画を漁ったり、レビューやブログ記事を読み込むことも、映画体験に欠かせないプロセスです。1作品で2度美味しい。その点でFilmarksというサービスは、筆力が高くて圧倒的な量見ているレビュアーが多く、使えば使うほど楽しみが増します。


ほかの人はどういう視点で映画を観ているんでしょうか?そもそもいつ観てる?

……そんな話をつらつらしていくオンライン座談会、《サタデーナイト・コンテンツ会議 vol.1 映画委員会》が、再来週9/26に開催されます(オーディエンス募集中!)


長い歴史を持つ「映画」という表現形態、本当に、奥が深そうです。

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