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『13・67』で香港を旅する

「お前と俺は、姓は違えど兄弟分だ。いいことも悪いことも分け合い、いっしょに頑張れば、いつかきっと、いつかきっと……」

香港の作家・陳浩基(サイモン・チェン)の華文ミステリー小説『13・67』、2周目を読了した。この最後の1行にある「お前」と「俺」が誰なのかというのが1周目の最大の感動ポイントだった。

陳浩基は「つい見過ごしちゃう思い込み」を華麗に突く作家だ。喩えると、「1,2,3,4,5, 」と並んでいるとき、読み手はつい自動的に次は6だと思っちゃうんだけど、そこに「誰が6って言いました?」てな具合で、そこにタネを仕掛けてくる感じ。種明かしの段になると、ちょっと悔しい感じがする。

香港を訪ねたことはないけれど、旺角(もんこっく)・尖沙咀(ちむさーちょい)・油麻地(やうまてい)といった地名は、星野博美『転がる香港に苔は生えない』でおなじみだった。北京語とは響きの違う広東語独特の読み方がひらがなルビで表記されているのが面白くて、印象に残っている。13・67では、警官のローやクワンの視点で、香港中を走り回る。香港経験がない人は、instagramや旅行案内サイト、地図、ストリートビューとかで後追いができると思う。


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