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【 原稿料がもらえる文学サークル“お茶代”🍡🌸4月ジッケン課題】『Pure Japanese』

何だこれは……?これはネタなのかガチなのか?観た直後困惑しました。
タイトルからして「純粋なる日本人」。色々物議を醸しそうな感じですが、何と日本人度を計る検査キットなるものが出てくる。
これだけ見ると一見ネタっぽい設定です。

これが噂の「ピュア・ジャパニーズ検査キット」だ!


検査で純度100%を叩き出した立石(ディーン・フジオカ)は強烈な愛国心を持ちながらも、過去のトラウマでアクションが出来なくなり、日光大江戸村の忍者ショーで慣れない効果音担当に回されていた。
そこに、ヤクザと結託した政治家の温泉開発計画から、自分たちの土地を守ろうとする家族が絡んでくるわけですが……

話が進んでいくごとに、じわじわと違和感が広がっていく。
一見不器用な好青年っぽく見えたディーンは、町の役員会で酔いつぶれたアユミの祖父をバイクに乗せようとして落としたが、「政治家に毒を盛られたせいで倒れた」と思い込んでいた。
アメリカで撮影中に死亡事故を目の当たりにしたことでアクションが出来なくなっていたと言っていたが、実は殺していた。
さらに子供時代には、帰国子女であることでいじめられた腹いせに殺していたらしい。
どうやらディーンには嘘や罪悪感という概念が欠落してるようで、それまでは何とか狂気を抑え込んでいた状態だった模様。おまけに趣味は爆弾製造にエア切腹。
何だこれは、サイコホラーか?これが「純度100%の日本人」って?
EDも黒地に白と赤文字のスタッフロール、不気味でまがまがしい音楽で、ホラー映画にしか見えないものだし。

しかしクライマックスはかなり予想を裏切る展開が続くので驚きました。
「こいつら全員殺しちゃって!」→ここから一大殺戮劇が始まるかと思ったらあっさり射殺されるディーン!→しかし胸ポケットに手裏剣を入れてたので無事でした。
日光大江戸村での決戦でアユミもヤクザの一人を射殺する→組長から預かった銃を持っていた政治家に射殺される!
組長との決闘でついに刀で切り裂かれるディーン!やったか?→まだ生きていて相打ちに持ち込む!

内容が内容だけにかなり思想が強め(吉田松陰に三島由紀夫……)で説教臭い所もありましたが、この怪作を一から企画・プロデュースしたディーン。
一体何が彼をここまで駆り立てたのか。そう思って調べたら、インタビュー動画がありました。

仰っていた話をざっくりまとめると、
「日本語を話したり住んだりしている人と、そうでない人の視点それぞれで成立しているかどうか考えながら制作した」
「原作がない分ライブ感で作っており、編集でフッテージを繋いでそこから脚本を変えた」

なるほど、だからあの独特な空気感だったのか。
そしてこの記事では、「Pure Japanese」という概念についてもかなり真剣に問題提起してらっしゃってました
本作は日本人という概念を、まさかの「暴力」という視点から掘り下げていた。
ネタでなくガチだったんだやっぱり……日本でずっと暮らしてたらまず、そんな視点は思いつかないでしょう。
でも、一つ目については「もし私たちが異なる言語を話すなら、世界は異なって見えるだろう」と、わざわざウィトゲンシュタインを引用したにも関わらず、活かせてる感じはなかったかな……
海外でのエピソードを掘り下げてたらこの部分も光ったはず。

というわけで、多少の粗こそあるものの、独特なアイデアと真摯さが貫かれた怪作でした。

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