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もう一度、ABCから学びたい

中学一年生の春からずっと、私は英語が嫌いだった。

それはもう、ほとんどアレルギーに近かった。
普段の会話で「私はクロキです、あなたは元気?」なんて言わないし、「私の出身は日本です」ともなかなか言わない。
自由に扱えるのが言語のいいところのはずなのに、英語では言いたいことのひとつも言えない。
帰国子女のクラスメイトがペラペラ喋るのに強い憧れを抱きつつ、
結局留学でもしないと話せるようにはならないんだろうなと無力感を抱きながら学んでいた。

何より私は、「受験科目としての英語」と、「人々が使う言語としての英語」を、長年どうしても結びつけられずにいた。

受験勉強でそれなりに英単語を覚えた時も、
英語の教員資格が取れる学部で学ぶあいだも(英語が嫌いだと言いながら「多言語多文化」という専攻に進んだのだ。海外の言語で海外の人と話してみたいという気持ちはどうやら人一倍あったらしい)、
目をつむって苦い薬でも飲み込むように、いつまで経っても使えるようにならない英語を学んでいた。

そんな英語との関わり方にちょっとした変化が訪れたのは、仕事で外資系企業の顧客を担当するようになってから。

容赦なく英語で送られてくる書類たちをGoogle翻訳を駆使して解読し、なんとかやり取りを進めるうちに、英語が、情報を伝えてくれる「言語」として私の中に芽生えはじめたのだ。それはやっぱり嬉しい感覚だった。

さらに私をやる気にさせたのは「外資系企業の人たち」とひと口に言っても、決して皆がみんな元から英語ができる訳ではなかったこと。

その企業はもともと純粋な日本企業で、海外企業に買収されたのを期に四苦八苦しながら英語を学び、英語で仕事をしている社員さんが少なくなかった。

「大人になってからでも、なんとかなるのかもしれない」
そんな希望を抱きつつ、私は第一子の産休に入った。

子供ができた多くの人が経験すると思うのだが、私も御多分に洩れず、Eテレと日々を共にするようになった。
孤独な育休期間において、毎日決まった時間に休息を与えてくれるそれらは本当に日々の癒しである。

ーーそして私は出会ってしまった。「えいごであそぼ」という番組に。

子供ができるまで、そんな番組があることも全く知らずに生きてきたのだけれど、それは上質な英語の番組だった。

キャラクターたちが日本語や英語を交えて話すことでどのように英語の会話が成り立っているかがよくわかるし、時にゲームや音楽を交えて、フォニックスと呼ばれる英語特有の発音や、口をどう使って発声するかが解説される。

毎回最後には、似た発音の単語を聞き分けるゲームもあるのだけれど、最初の頃はよく間違えていたのが、育休中楽しく視聴していたせいか、一年の育休が終わる頃にはよく正解できるようになってきたのが嬉しかった。

それからはシナプしゅなど他の幼児番組の英語のコーナーを、息子より真剣に視聴するようになった。

さらに子供が2歳になった頃、例の外資系企業の仲が良かった社員さんに英語教材のお下がりをもらい、毎朝30分英語のDVDを観るようになった。

私は特にリスニングが大の苦手で、テストでは鉛筆を回すような勢いで向き合っていたのが、そんな経験を重ねることで少しずつ「できるかもしれない」と思えるようになっていった。

それから子供の英語教育についても真剣に考えるようになっていった。
調べていくと、英語で本を読めるようになると自然と英語学習時間が伸びて良いという。

洋書??
ーーえ、むしろ私が、読めるようになりたい!

素敵な海外文学を、原書で読めたらという憧れはあった。あったけれど、絶対自分には無理だと思って手に取ったことすらなかった。
それがこんなにサラッと、子供の英語教育の過程として提示されるなんて。

日本語の繊細な言い回しが素敵だと思うとともに、英語特有の言い回しや、その奥に醸成されたメンタリティなどを感じてみたいとずっと思っていた。

子どもの英語教育では、ハリーポッターを原書で読めるようになるとどんどん世界が広がっていくのだという。
読んでみたい!ハリーポッターの原書!

子供の英語教育について調べていたはずが、私はそれを子供に実践することよりも、自分が実践することにどんどん興味が向かっていった。

子供が英語に興味を持つかはわからないし、やっぱり無理強いはしたくない。
むしろ興味がある私が実践して、子供の身近でやることで少しでも興味やモチベーションにつながればそっちの方がいいのではないかなどと妄想する。

朝、車で子供を保育園に送りながら、子供用の洋楽CDをかける。
本当はディクテーション的に歌いたいのだが、2歳の息子に「歌わないで!」といつも怒られるので、単語を聞き分けることに集中する。

外資系企業の人にもらった英語絵本も読み聞かせてみる。
なるべく上手く読み聞かせたいから、単語の発音を真剣に調べて練習する。一文のイントネーションも自然になるように。
文章の短い幼児用の絵本でも、英文を読み物語を理解できることそれ自体が少し楽しい。

英語の発音を練習するための参考書も買った。毎日練習して、曰く「スポーツのように」正しい発声を身につけることができるらしい。

いつかオンライン英会話も始めてみたい。
私の大学生時代にはなかったような、低価格で気軽にオンラインで始められる英会話教室がいくつもあることも初めて知った。ぜひ話してみたい。

気づけば子どもができてから、私は人生で一番英語に触れるようになってきている。

これを機に、ちょっと本気で「英語が話せるようになる」という、とてつもなく遠く、不可能に思えていたものにチャレンジしてみたい今日この頃です。



私の、長文になりがちな記事を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。よければ、またお待ちしています。