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ドローン(無人航空機)に焦点を当てた奇盤/Gonçalo F. Cardoso & Ruben Pater - A Study into 21st Century Drone Acoustic [Discrepant]

Artist: Gonçalo F. Cardoso & Ruben Pater
Title: A Study into 21st Century Drone Acoustic
Label: Discrepant
Format: LP + Booklet
Release: 18th Dec 2015
Genre: Field Recording, Drone


民族音楽をベースに奇妙かつ奇抜な音楽のリリースに定評のあるイギリスのレーベルDiscrepantより、無人航空機ドローンをテーマにした一枚。音楽のドローンと言えば持続音の方に思いがちであるが、本作は無人航空機ドローンの方である。

古くよりSF映画、とりわけサイバーパンクなどを始めとする近未来映画ではお馴染みのドローン(無人航空機)の駆動音のフィールドレコーディング。余談ではあるが、ウィリアム・ギブスンのニューロマンサーではマイクロフライト(軽飛)とも呼ばれてる。

近年において、ドローンは科学技術の発展に伴い、一般家庭に普及し始め、既に馴染み深いものとなっている。本作は、A面には一般家庭・消費者向けの小型ドローンから軍用の大型ドローンまで17種の駆動音と、B面にはドローン(無人航空機)の駆動音を用いたDiscrepantお得意のコラージュ的なドローン(持続音)が収録されている。

機械の動作音・駆動音については、電車・SLなどの鉄道系、スーパーカー・F1などの自動車系、航空機、バイクなどの走行音を中心に生活に関係するものがかつてはリリースされていたが、本作はその系譜に当たる最新鋭のものに該当すると思われる。マニアックなもので言えば、過去には銃火器の発砲音などもリリースされていた。

これらの類のリリースは、記録としての側面やマニア向けの案件が多く、1980年代頃までマーケティングとして成立したが、時代も移り変わり、需要とマーケティングのバランスの関係性、あらかたネタが出尽くした、YouTubeなどで気軽に楽しめるなどの環境の変化により、この手のリリースは今後無いだろうと思われていた。しかし、その中で、こうして新たに記録としての側面とコラージュ的に音楽として楽しめる側面のあるリリースがあることは非常に画期的であり、貴重であるように思われる。

当たり前ではあるが、ドローンのモーター駆動音は小型のものほど軽くチープであり、大型のものほど重厚で威圧的であり、全体を通して航空機のそれに比較的近いように思われる。車ほど日常生活には馴染んでいないため、生活の中にこれらの音が紛れ込むとき、やはり違和感を覚えるだろうし、昨今の社会情勢不安の象徴である戦争での活用に意識が向かう。生活の中に突如現れる違和感、もとい航空機の駆動音は、日常を脅かすサインにも、SF映画の中に入り込んだような異質なものにも感じる。付属のブックレットには、収録されているドローンのシルエットが掲載されており、大きさの比較を楽しめる。

無人航空機ドローンの持つ意味合いを彼岸の彼方に置いて純粋な音楽としてみたとき、無機質な持続音、この時代に現れた新種の音として楽しめるだろう。この盤自体の捉え方は個人の見解により大きく異なるが、この時代の一つの記録としては非常に興味深いものであることは間違い無いだろう。

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