ちょっと不思議で、ちょっと歪な物語詩

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月光ソーダ

夢友達とお茶会をした 夜ごと同じ夢をみる 夢の中だけの友達 星空のもと白い灯台の天辺にいた 小さなテーブルに向かい合って座わった テーブルには細長いグラスが二つ 中には透明のソーダ水 月に照らされてふつふつ揺らめく 星を入れてみよう 夢友達は両手で星々をすくった それから仄白く光る星々をグラスに注いだ 互いの顔が白く揺れる 物足りないね 夢友達はそう言うと両手を高く伸ばした そうして私のグラスに月をいれた 月の光と星々の光が相まって閃光 ソーダ水の泡は忙しそうに上へ

    • 影泥棒

      月明かりに猫 どうやら影を盗まれたらしい 私の影が猫になっていた 私は影泥棒の猫を探した だが猫の模様なんてわからない 東の空が仄かに白んで来た 陽が上ったら私は猫になるのだ それも悪くない どこかで猫の鳴き声がした

      • 死とShe

        真夜中の鏡は何処へ誘うのか 月のない夜はこと心が弾む 彼女はそっと鏡に触れた 瞬間、彼女はまばゆい光に包まれた ドレスの黒が白に変わる 戻りたい 思ったのもつかの間 漆黒から切り放たれた彼女は 大きな声で泣き出した

        • 夢見る琥珀糖

          春萌は色とりどりの琥珀糖を白湯に入れた 緑は緑に赤は赤く色を残して溶けていく そうして黄色や青、橙と次々に溶けていった 少しして春萌はストローでそれらを混ぜてみた グラスのなかの白湯は黒く濁った 不穏な黒が揺れるのを春萌は見つめた それからグラスを手にすると一気に飲み干した その途端、春萌は絨毯の上に倒れた 体はどんどん重くなり意識がだんだん消えていく なにしてるの 母親の声がして春萌は目を開けた 春萌は怠そうに起き上がると部屋から母親を追い出した 十六歳、春萌は今を止め

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        記事

          初めましてこんにちは

          自己紹介  ご訪問ありがとうございます。泉と申します。  普段は週五日仕事をこなすいち社会人です。  日常生活から逃避したいのと創作が好きで物語詩を書き始めました。  もともと小説が大好きで読んでいましたが、自由な形式での自己表現を目指し詩を選びました。ここでは物語詩をメインに書いています。またXでは短詩も書いています。 作品傾向  少し不思議で少し変わった詩が多いです。例えば『夜』『銀河』『鉱石』『星』『死』などのモチーフが多めです。 最後に  ダークでファン

          初めましてこんにちは

          酔猫の棲む街

          猫は越して来たばかりの街を散歩していた 喉が乾いた猫はなにも知らずに水瓶座から滴る極上の美酒を飲んだ あまりの美味しさに猫は喉を鳴らして飲み続けた そこに一人の乙女が通りかかった 猫さん、一緒に遊びましょ 乙女は猫の手をとると踊り始めた くるくると猫の眼もまわり始める そして勢い余った猫は高く放り投げられた 気がつくと猫は天秤の上にいた 同じく天秤には一匹の蟹が乗っている 猫さん、助けてください 猫はふらふらと蟹を押し出した 蟹は礼を言うと去って行った 猫が眠ろうとした

          酔猫の棲む街

          千年目の誕生日

          激しい雷雨のなか呂花は先を急いだ 姉君の千年目の誕生日を祝うため東の塔を目指して 陽が昇る前に姉君に会わなければならない 雨が小さくなったころ呂花の前に高くそびえる山が立ちはだかった 山は怒りの如く頂きから火を噴いている 呂花が小さく唱えると火のなかから竜が現れた 竜は呂花の頼みを聞くと山の火を鎮めた 呂花は竜に礼を言うとふわりと箒に跨がった 険しい山を越えると今度は広く続く海が現れた 怒涛の波が押し寄せる海に東の塔はあった 呂花は波にのまれぬよう空を飛ん

          千年目の誕生日

          蝶と番人

          小さな庭園に蝶は独りでいた 大人になったら此処から出ていかなければならない それにはまず、此処の番人から名前を貰わないとならなかった しかし番人はいつまで経っても名前をつけてくれない 蝶は思った もしかしたら私はこの小さな庭園でしか生きられないのかも知れない 蝶は硝子の天井から空を見上げた いつかこの硝子の向こうへ行ってみたい 皆のように羽ばたいてみたい 蝶が憂いでいると番人がやって来た 番人はまだ少年だった おいで 少年は蝶を手のひらに呼ぶとぽろぽろ

          蝶と番人

          昨夜の秘密

          鉱石を口にしたら 瞳から青や翠 橙や黄色の石が溢れ出てきた 僕は手ですくってそれらを食べた 瞬間、体から閃光 僕は光となって夜を走った

          昨夜の秘密