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寅さんはどこに帰ってきたのか

〜さっきの雑記(オモイツキ備忘録)特別編〜

【今日のテーマ】
映画「男はつらいよ おかえり寅さん」

2019年の暮れ、僕は久々に実家にかえることにした。

理由はいろいろあるけれど、その一つが約25年ぶりとなる映画「男はつらいよ」の公開であったといってもいいかもしれない。

僕がまだ幼い頃から、母親が大好きだったこともあって、正月には必ず家族揃って「男はつらいよ」を観に行っていた。僕と同世代(アラフォー)の人にとっては、もしかしたらそれは割とよくある家族の風景だったのではないだろうか。
何と言っても、映画「男はつらいよ」は一時期は国民的映画と言われ、正月映画のドル箱作品だったのだから。

しかし、家族の繋がりが希薄になってきていると言われる現代では、正月に家族揃って映画に行くなんて風景もめっきり減ったように思うし、何より自分が率先してそういうつながりのない生活をしているのだから、とても偉そうなことは言えた義理じゃない。

今、僕は単身、親と遠く離れて暮らしている。
そして相変わらず、たくさんの心配もかけている。

そうしてまともな親孝行もできないまま、気がつけば映画の中に出てくる寅さんの年齢に近くなった。

そんな僕が、ふらっと「帰ったよ」と言って、家族で映画館に行く。

いつの間にか「おじさん」になった自分を、そんな風にどこか寅さんと重ねていたような気もする。

とにかくこの年齢になり、こんな時代だからこそ、家族揃って「男はつらいよ」を観に行かなければいけないと思った。


そして何より僕はもう一度、車寅次郎という僕の「おじさん」に、会いたかったのだ。


今回、公開された映画の内容にも踏み込みながら、僕のこれまでの「男はつらいよ」という映画、中でも「車寅次郎」という一人の男について、思いの丈を出来る限り書き記してみようと思う。

ネタバレも含むことになるので、後半は有料になりますが、無料部分を読んでもらった上で、続きが気になったらぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

ということでまず無料部分では、今回の映画の主題歌について少し触れておきたいと思う。


今回、まず大きく変わったのはオープニングテーマを桑田佳祐が歌ったことだ。

このことについては、賛否が大きく割れているようだけれど、僕はかなり肯定的に捉えている。

桑田佳祐は過去に「桑田佳祐の音楽寅さん」というタイトルのテレビ番組をやっていたこともあるほど、男はつらいよのファンであることは一部ではよく知られた話で、今回の映画主題歌への監督からのオファーも快く受けたという。

映画が始まると程なくして、おなじみのイントロに続き、桑田佳祐の伸びやかな歌声が映画館に響く。

その歌声から、桑田佳祐がどれほどにこの映画を愛しているかが滲み出ていたし、その姿もまた、車寅次郎という男を彼自身の解釈でしっかりと敬意を持って「演じていた」ように僕には感じられた。

そういった彼の真摯な姿勢と音楽によって、そこには誰もがその胸にしまっていた「寅さん」が帰ってくるのだと感じさせるだけの魅力が溢れていたと思う。

「これから寅さんにもう一度会えるんだ」

そう期待させるに十分な歌声だったし、改めて桑田佳祐という歌手の素晴らしさを実感もした。

そしてだからこそ図らずも、このオープニングは映画の最後の最後で僕の中に、改めて車寅次郎という男の存在を際立たせることになる。

それについては、以下の有料部分を読んで確かめてほしい。

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