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61 洗い物は温かい水で

冬は寒いので、普段やっている生活の様々なことが一段難しいものになる。朝布団から出ること、冷え込んだ空気の中で着替えること、洗濯物を干すこと。家で仕事をしたくても、足元がスースーするので、電気ヒーターの前でずっと縮こまって、仕事になかなか取り掛かれない、なんてこともある。

失敗したなと思うことに、洗濯機置き場のことがある。東京に出て、はじめて一人暮らしをしようと物件を探していた頃は、「室内洗濯機置き場」のありがたさを僕は全然わかっていなかった、というか「干すのなんて数分なんだから寒さなんて感じないだろう」と正直なめていた。が、しかし、そのあとそれがない物件(多分その方が安かったんだと思う)に住んでみてわかったけれど、冬の寒空の下で洗濯物を干すのは、たとえ数分でも寒くて大変なのだ。その数分の寒い経験が重なって、洗濯は寒くてしんどいものという印象が植えついてしまった。

反対に、良かったなと思うことは、シャワーのこと。おばあちゃんちに住んでいた頃(もう十年以上も前)、朝シャワーを浴びる習慣があった僕に、おばあちゃんはこう助言をしてくれた。「いきなり浴室に入るんじゃなくて、服を脱ぐ前にまずシャワーを出して浴室とシャワーの水を温めておくの。そうしてから入れば冷たい思いをしなくて済むでしょう」と。まさにおばあちゃんの知恵袋。以来僕は(今でも)、言われた通りにしてから浴室に入るようにしている。

人間は体温が下がると、精神的にも身体的にも不安定になるらしい。病気になりやすくなったり、心の病になりやすかったり。医学的な根拠云々はさておき、実体験として、これは確かに頷ける話だなと思う。

昨年まで、もったいないからという理由で、エアコンを使うのを控えたり、洗い物は(冷たい方の)水で洗ったりしていたのだけど、最近は、「そういうことってもしかしたら悪循環なのかも」と思うようになって来た。

例えばエアコンの使用を控えた時の場合。寒くてやる気がなくなって、働く気力がなくなる。働きが悪くなると稼ぎが少なくなる。稼ぎが少なくなると節約しなきゃという気持ちになる。節約のためにエアコンを控える。エアコンを控えると寒さに耐えることになる。この悪循環。

これは物件選びの場合も同じだし、洗い物の場合も同じだ。耐えよう、節約しようと思っている間に、その作業が嫌なものに変わってしまったら、その作業をはじめにすべてが消極的な方へ向いてしまう。

そんなことをよく思うこの頃。家に帰ると、玄関のすぐそばにある台所で手洗いをする。その時に温かいお湯の方の蛇口をひねる。温かいお湯で手を洗っている間に、視界の中にある洗い物に意識が行く。「このまま洗い物もしちゃおうか」と自然と洗い物の茶碗やマグカップに手が伸びる。気持ちの良い連鎖。

消極的は損、積極的はなんだかんだやっぱり得なんだと、台所の僕は、洗い物をしながら思うのであった。

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