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雑文 Vol. 5

99
文字数〜5,000字程度の雑文集。
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記事一覧

雑文(99)「晴れ風、新発売」

 コマーシャルで、僕の好きな女優さんが、美味しいですよって、そう宣伝していたから、「晴れ…

雑文(98)「文豪AI」

 国家予算の半分を注ぎ込んで開発した文豪AI、しかし想定外の不具合があった。  プログラム…

雑文(97)「スプリングコートの女」

 孝之の馬鹿。  わたしは声に出さず、自分の内側に、そう叫んでいた。  内側にある殻はもろ…

雑文(96)「或る神童」

「そう言えば」  僕は、妻に言った。妻は、右向かい、モスグリーンのカウチソファに腰掛けて…

雑文(95)「ゾン後ひとつ ~ゾンビになった後にしたいたったひとつのこと~」

「つーか、北よ。お前えのしてえことって、それだけかよっ。もっと、なんだ。世界征服とか、国…

雑文(94)「子もど食堂」

 誤字じゃなく店の看板に、「子もど食堂」と、たしかにそう書いてあった。  私は引き戸を引…

雑文(93)「嘘を吐いても許されない」

 伸一郎の首を絞めて、殺していません。  伸一郎は不倫をせず、私に謝りました。  私は彼が憎くなく、彼は私を愛しました。  殺意が芽生えません。彼を殺したくなかったのです。  私は彼を殺していません。  殺す動機がないのです。  彼が憎くくなかった。生きたくなるほどに。  だから私は彼を殺さなかった。  彼が憎くくなかった。当然ではありません。  薬局で睡眠薬を買っていません。買わなかった睡眠薬を彼のコーヒーに混ぜていません。  コーヒーを飲んだ彼はすぐに眠っていません。  

雑文(92)「ボディソープ」

 いい匂いだねって、翔吾ってば、翔吾の方がいい匂いだねって、私に言わせたいの、翔吾たぶん…

雑文(91)「聲のない形」

     序  未来々々或処で、僕が、或女人とフオオリン・ラヴ、かう云ふ僕は、シルクハツ…

雑文(90)「サバイバル高校生」

「違えよ」  アサクラユイは、窓を背にして立つイノウエサトシに、半ばあきれて、そう言った…

雑文(89)「君の肝臓をたべたい」

 君が隠れて、キッチンドリンカーと云うんだろうか、淋しさか、あるいは憤りを紛らす為にか、…

雑文(88)「ライティング・ガール」

 貴方が私を馬鹿にするから、だから私は悪くない。悪いのは貴方だけ、私は貴方に騙された、危…

雑文(87)「家族居酒屋」

 ガラガラと戸を引いた。  カウンターの奥の席は、おれより常連の男が壁に右肩をもたせ掛け…

雑文(86)「小説家が足らない」

 医者や弁護士は足りているが、教師と同様、小説家が足らない。  作業環境は昔と比べてよくなったが、仕事中は座りっぱなし、というのがネックだろうか。いや違うな。最近では寝転がったまま執筆できる、仰向けの恰好でタイピングできるから、重度なストレートネック持ちの僕にはありがたい。それかあれだな。仕事中は基本、会話厳禁だから、お喋りな方には向かない仕事なんだろう。  ともかくだ。小説家が足らない。需要供給のバランスが崩れしまって、需要過多だ。  サービス業だから、顧客要望を満たさなけ