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雑文(11)「又助という男」

 又助という男がおりました、又助は二股三股と女を囲っては子を拵えさせ、やることだけやってなんのためらいもなく女たちの前から去りました、女らから逃げ、抱く子らから逃げ、又助は追われる身――捕まりそうになっても寸で逃げおおせ、その脚で女を作っては子を作らせるのを繰り返しておりました、ある日又助は女と閨を共にしているとき、いつもと違う違和感に身震いをしました、なんとあそこが腫れあがっているではありませんか、だからですが、あそこに入れることがかなわず、女は怒って追い出されてしまいました、途方に暮れ河川敷の坂の上に座っていた又助は、腫れあがったあそこを摩っていました、それは熱を帯び、痛くて痛くてどうしようもありません、しばらくそれを外に出して風に遊ばせていました、真っ赤に腫れあがったあそこはふんどしの中で擦れて痛かったからです、又助は暮れる陽を眺めながらなにか決心したのか、ふんどしを解いたままいきなり立ちあがりました、あそこを握りしめると、そして力をこめると念仏を唱えてあそこを引きちぎって、川に向かって放り投げました、弧を描き川面に落下したあそこは川の中に沈んで見えなくなりました、又助はあまりの苦痛に泣き叫び、顔を歪めて耐えるのですが、よたよた体勢を崩して足を踏み外すと勢いあまって坂の上から転がり落ち、又助は川の畔でひとり孤独に息絶えてしまいました。

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