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シモンズに足の甲

朝。

子どもらが先に起きたけれどすぐに起きる気にならずベッドで目を閉じてうとうとしていた。

ベッドといえば、このベッドは消防士の友人が「睡眠って大事」と言った影響をモロに受けて妊娠中に買ったシモンズなのだけど、選んだ種類がふかふかすぎたのか夫には不評である。

出産前、わたしは夫と常に一緒に寝ていたい人間だった。夫が夜中PCを扱いながらリビングで寝てしまい、目が覚めてベッドにひとりだった朝は切なく、寂しかった。そうして出産。そこから子どもを両腕に抱いてリクライニングチェアで寝ること1年半。どうにか布団で眠るようになった子らに両脇を固められて寝るようになってから2年。

わたしは変わった。
一人で眠ることが今のわたしの就寝スタイルで最上最高なのだ。眠ってしまう少し前に、うつ伏せになって足の甲でさらさらのベッドシーツを撫ぜる気持ち良さよ。シーツの冷たさよ。この感触は一人で眠るからこそなのだ。

この出産から育児の3年でわたしは、睡眠を邪魔されるのが一番許せない人間になったのだった。

本当はダブルが欲しかったのだけど「うちにはでかすぎる」という理由で却下となりセミダブルを購入したが。当然大人二人ではぎゅうぎゅうで、不満がのこっていたベッド。しかし一人なら十分だ。ちょうどよいのだ。

ときたま夫が先にベッドで眠ってしまった夜は、深く眠り起きない夫をぐいぐい押しのけてスペースを空け、少し丸くなって眠る。ぬるい布団に沈む。寝ているのに腕を差し出す夫。一応ね、と頭を乗せる。ぬるいのもたまには悪くない。毎日でなければ悪くないね。

昼間、あのベッドでカーテンを開けたまま、ひとりゴロゴロしてマンガを読むことが、ささやかな夢である。

結構ささやかだな。


ところで今年最後のセミが我が家の玄関そばにいたから見て。

まだ生きとるだろうか。

#エッセイ

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