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日本映画「映画(窒息)」

主演:和田光沙、飛葉大樹、仁科貴、寺田農
2023年 108分
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★☆
(写真=映画ナタリーより)

ちょっとご縁があり、存在すらも知らなかった(失礼!)この映画を視聴させていただく機会をいただいた。
あまりメジャーな作品ではないのだが、こちらが公式サイト。


近未来、言葉が失われた世界で生き抜く女

廃墟のような建物に住む一人の(和田光沙)。言葉のない世界で原始的な自給自足の生活。狩猟で蓄えた食料を行商人(寺田農)と物々交換したり、女の体と食料を目当てに来た山賊(仁科貴)に襲われたりするが、そんな不測の事態にもめげることなくたくましく生きている。
ある日女の仕掛けた罠に一人の若い男(飛葉大樹)が掛かっていた。女は彼を家に連れて行くと、何故か女になつく若い男。女も情が移ったのか、二人は共同で生活し始める。そんな日常が続く中だんだんと人間の欲望の姿が明らかになっていく。暴力・セックス・食欲等々……そして世界は崩壊に向かって動き始める…。

公式サイトより

人類の歴史の凝縮?

白黒、サイレントムービー、ぐらいの知識しかなく観始めた本作、もちろんあらすじも読んでなくて、女がずっと一人で原始的な生活を送るシーンを、ふーんと思いながら見ていた。

水を汲みに行く途中、見つけた鳥の羽を集めたり、雨が降ると雨音に合わせて、リズムをとったりして、原始的だけど、楽しそう。

しかし、女の一人の平和な生活も、行商人、山賊、そして若い男と、男の登場人物が出てくることによって、変化してくる。

便利なものがあるとわかると、それがなんとしても欲しい。火を点けたり、水を汲んだりするのが簡単になるなら、努力を惜しまない。おそらく人類はこうして発展してきたのだろうというのが、近未来を舞台にしていても、人間の本能というのが垣間見える気がした。

しかし、他人の持っているものを力づくで手に入れようとなると、ここからは戦いが生まれる。つまり戦争だ。
そして、相手を倒すために、さまざまな策略を立てていく。

人間の欲望を通して、なかなかうまく人類の歴史が再現されていたと言える。

東京島かと思ったけど

女一人に対して、数人の男が出てくるので、なんか『東京島』(桐野夏生作の小説、および2010年の木村多江主演の映画)みたいな展開になってくるのかと思ったら、そこはもっと原始的だった。
しかし、セリフが一切ない中、効果音と音楽、役者の表情だけでストーリーが進んでいき、展開が気になって画面に見入ってしまう。

女が住む場所も、下から見ると、清水寺のようにみえる枠組みの廃墟。実際に存在する遊園地の廃墟らしいが、白黒になっていることにより、より不穏な雰囲気が醸し出されていたと言える。

長尾元監督によれば、この映画の解釈は人それぞれとのこと。
『ウォーターワールド』のような設定でありながら、より人間の欲望が発展していったらどうなるか?みたいな点に焦点を当てており、色々と考えさせられる点があって面白い作品であった。

なお、行商人役の寺田農は、本作が最後の映画出演作品となってしまった。長いキャリアの人だったなぁ。

こちらが予告編。


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